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推薦入試を“1チャンス増える”入試と容易に捉えるのはNG

志望理由において、「自分だけの特別な経験」だと思っている「過去」のきっかけのエピソードは、誰にでもある「ありきたりな内容」であることが大半です。

「修学資金(奨学金)」から推薦入試を考察する

 推薦入試の中には在籍中の「修学資金(奨学金)」を提供するかわりに、大学卒業後に「指定の地域拠点病院勤務」や「特定診療科勤務」に「進路固定」している、「目的が明確な定員」が多数あります。そういった募集区分では、受験する本人がしっかりした目的意識を持っていないと、面接での受け答えや「志望理由書」の内容に大きなギャップが出てしまうでしょう。受験生は「合否」のみに執着しすぎると、「募集定員の意味」に関心が薄くなってしまいがちです。しかしこの種の推薦入試では、そこが進路選択上、大きな意味を持っています。

 2023年度入試の「福島県立医科大学/学校推薦型選抜B枠」をサンプルに、学校推薦型選抜の修学資金を見てみましょう。この募集枠は「県外の高校出身者」専用で、15名の定員です。卒業後は就学年数の1.5倍の年数(9年)、「指定医療機関勤務を義務付け」していますが、入学者はそれと引き換えに在学中に「福島県緊急医師確保修学資金」を受給します。修学資金は月15万円ですから、6年間の総額は単純計算で「1,080万円を受け取る」形になるわけです。大学卒業後の勤務を約束して、修学資金を借りるような形ですが…、9年の義務年限が終了すれば修学資金の返還は「全額免除」されるという仕組みです。
 このように、推薦入試の定員には、大学卒業後に県の指定医療機関に勤務する義務と、それと引き換えに提供した修学資金の返還を無償化するものが多数あります。実質的には形を変えた「奨学金提供」とも言えます。修学資金の提供によって「県の医療をまかなう人材を大学に確実に育ててもらう定員」の入試ということになりますから、これは「県主催の大学入試」ということもできるでしょう。

 福島県立医科大学のように、大学の所在県と修学資金提供の県が一致していればわかりやすいのですが、中には「他県の大学」に医師を育ててもらうケースもあります。例えば、「東京医科歯科大学/医学部/地域特別枠」などがその例です。この枠は「茨城県枠」「長野県枠」「埼玉県枠」の3つがあり、全て修学資金の提供があります。「茨城県枠」は同県出身の現役生、「長野県枠」と「埼玉県枠」は全国のいずれの高校出身者でも1浪まで出願可です。
 大学卒業後に就学年数の1.5倍の期間、該当県の指定医療機関勤務の後、提供された修学資金の返還が免除になるのは福島県立医科大と同様ですし、修学資金は県によって若干の差があるものの、総額が一千万円を越えるのことも同様です。
 以前、同大学の「長野県枠」で進学した生徒がクラスにいました。なんと本人の出身が石川県、受験時の予備校は大阪府、進学する大学が東京都、卒後の勤務は長野県…ということになりました。本人が優秀な人物なら「出身地区」や「現・浪」にこだわらず、全国から優秀な人材を募集する好例だといえます。少なくとも「長野県枠」で合格したその生徒のことを思い出すと、長野県は優秀な人材獲得に成功しておられるように思います。

 この種の推薦入試は、むしろ「県の側」から見た方が構図と事情がわかりやすいかもしれませんね。先月保健医療計画で取り上げた「兵庫県」でも、神戸大学に10名、兵庫医科大学に5名の他、岡山大学に2名、鳥取大学にも2名の「兵庫県枠」を設けて卒業後に兵庫県の地域医療に従事する医師を育ててもらい、同時に該当の在学生に修学資金の提供をしています。静岡県や新潟県も同様に、修学資金を提供して他県の大学に「卒後の地域医療従事者」を育ててもらう枠を設けています。

 相当額の奨学資金を提供し、将来の県の医療を任せる人材を募集する推薦入試において、どのような目線で志望者を大人たちが見ているでしょうか。それに応えるはじめの一歩が「志望理由書」です。

志望理由では「現在」と「未来」を述べたい

 私の手元に「志望理由書」の添削依頼がきた場合、私がいきなりそれを読みはじめることは稀で、大抵は大学の要項や募集定員の意味するもの、大学のアドミッションポリシーなどの下調べをし、国公立大の場合には特にその設置県の「保健医療計画書」に目を通してから、さらに生徒の面談記録などを再度チェックし、その後にようやく持参された「志望理由書」に目を通しはじめます。まずは読む側が何を求めているかをしっかりと自分の中に入れてから読みはじめますので、実際に目を通しはじめる前に、最低でも2時間程度は準備にかけるようにしています。
 「学校推薦型選抜」の大半は「目的のある入試」なので、当然ながら出願に際して「志望理由書」やそれに類する書類の提出には、それに見合う内容が求められることになるでしょう。当然ながら、文章の良し悪しを整えるだけでは「正解」とは言えないのです。もっとも、提出する書類の体裁は大学によってまちまちですから、「記入の仕方」は現物を見て考えるしか方法はありません。一つひとつがオーダーメード的な勝負だと言えます。

 例えば福井大学の「推薦入試」の志望理由書を見ますと、以下の3点に分けて提出書類を記載するように「記載箇所」が分割されています。具体的には…、

 1:あなたが志願学科で学びたいと思う理由を説明してください。
 2:将来,医学・医療に携わるにあたり,あなたの適性について説明してください。
 3:医学科の「地域枠」及び「福井健康推進枠」(併願含む)に志願する者は,将来どのような形で福井県内の地域医療に貢献したいかについて説明してください

 となっています。そこで、上記をもう少し具体化して方向づけをご提案すると…、

 1:「現在の医療状況への理解や見えた課題から、志望動機を理由づけして記述する」
 2:「現在の自己分析による職業的な適正を記述する」
 3:「未来に自分が活躍するフィールドやビジョンをこの募集区分の意味を考えて記述する」

 …というように方向付けするとよいでしょう。見ての通り書かせたい内容は、本人の「現在」〜「未来」への志向や行動に偏っています。上記の「1」の「学びたい理由」も、「過去」を書けなくはありませんが、むしろ「未来」から取ってこいといっているように思えます。

 ところが、これまで何年も多数の志望理由書を添削してきた私の経験からいうと、医学部志望者は「過去」の原初的な体験を「志望理由」として字数を連ねて延々と述べる傾向があるのです。「きっかけ」に思い入れが大きかったり、「過去」の自分の経験は書くことがたやすかったりすることが理由にあるのでしょうね。
 しかし、残念ながら、私は「過去」の出来事はさほど多くの字数を必要としていないように思います。理由は、大抵の人の「過去」の内容はたかだかストーリーが知れていて、以下の10個の類例のうちのいずれかにすぎないからです。

•祖父母の死に際して、自分の無力さをさとったから
•部活で怪我をした時の治療がきっかけだった
•幼いころ、お世話になったドクターがいたから
•自分の通院経験で親切な医師に会ったから
•自分もしくは家族の入院の時の経験から
•自分や家族が病気で、それにかかわる研究がしたい
•親が医師でそれを見て育ったから
•親が医療関係者ですすめられたから
•ひとを救いたいと思ったから
•人体に興味があったから

 残念なことですが、「自分だけの特別な経験」だと思っている「過去」のきっかけのエピソードは、誰にでもある「ありきたりな内容」であることが大半です。少し意地の悪い言い方で申し訳ないのですが、読む側にしてみれば、その程度の「医師を志望したきっかけ」は「はじめからわかっているに等しい」のです。つまり、その程度なら、読み手はさほど関心を持って読む気持ちにならないでしょう。
 多少特殊な「きっかけ」があったとしても、それは個人に関わるものですから、それよりも未来に向けての問題意識がどうなっているか、読み手と共有できる「現在」と「未来」のことの方が大切に思います。ですから、「志望理由書」はそちらに字数を使うことで、内容を濃くすることがおすすめです。

「現在」の自分と「未来」の自分

 では自分が取り組みたい「現在」の医療課題をどのように見つければよいでしょうか…。実は、先日ある高校で「志望理由書の書き方」ガイダンスを実施したのですが、そこに参加した生徒から、この質問を受けました。私が当日配布した資料には、ある「URL」にリンクした二次元コードを掲載しておいたのですが、それは、厚生労働省の「令和4年版厚生労働白書」です。一つひとつ医療の課題を地道に探す方法もありますが、まずは全国の医療課題をインスタントに把握するにはこれが最も早いでしょう。以下のリンクを参照してください。

「令和4年版厚生労働白書」はこちら

 その上で先月お伝えした「都道府県の保健医療計画」を読んでいただければ、現在の大学所在県の医療状況がかなり明確に把握できるでしょう。そうすれば、その中から「現在」の自分が課題だと思えるテーマ、「未来」の自分が取り組みたいテーマを見つけることができるのではないでしょうか。

 さて、皆さんは「自分なり」に、医療の課題に見当をつけましたか。見当をつけた課題があるなら、自分が将来、どう取り組みたいかをぜひ述べてみましょう。その際に、出願する大学の「アドミッションポリシー」はよく見ておいてほしいところです。大学の求める人材として自分が相応しいことは、アドミッションポリシーに合致した「志望理由書」を書くことで示せます。この人物を応援することで、大学の成し遂げたいことを実現してくれるかどうか…大学の関心事はそこにあるでしょう。
 一般入試では、浜松医科大、広島大、東京女子医科大などは例年、大学の「アドミッションポリシー」について面接の質問で尋ねています。尋ねられるのがわかっているならよく読んでおこうというのが一般の受験生の考え方でしょうね。しかし、学校推薦型選抜ならば、面接試験で尋ねられるかどうかに関わらず、大学の求める人物像については「志望理由書」の方向を決定する上では、知っておく必要があるといえます。

 このように考えると「志望理由書」の作成は、「現在」〜「未来」に向けて書くこと、また、書く前の「準備」「設計」「推敲」が非常に重要だということがわかります。生徒の多くは「書いてきたので見てください」と私の手元に持参してきますが、残念ながら設計そのものがよくないために、はじめからやり直しになってしまうことがよくあります。落ち着いて、多くのことにじっくりと想いを巡らし、書き始めましょう。どんなに学科試験の学習時間を確保したくても、ここだけは手抜きができないのです。

 一番はじめにお伝えした「修学資金」のことを思い出してください。皆さんの「志望理由書」は、一千万円の価値があるものでなければならないのです。その点、これを読まれた皆さんは、どのレベルで「志望理由書」を書く必要があるかを、すでに十分理解されたに違いありません。
 と言うことは、おそらく…もう大丈夫ですね。学校推薦型選抜の大方の出願は11月が多いはずです。では皆さん、さっそく準備にかかりましょう。