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2020.1.6公開

多浪生は、自分の足元を見つめ直すことが受験のスタートでなければなりません。

一度陥った自己中心的な学習はなかなか直らないのが現実。あなたには「自分で自分を信じる気合がある」「自分以外で自分を信じて鼓舞してくれる人がいる」状況ですか?

多浪の人は珍しくない

一通りの入試結果がすべて判明する3月下旬ごろは、次年度に向けての再受験希望の方がご相談に見える時期です。今年の受験に合格できなかったので、次年度に向けてのスタートを切りたいということですね。中には、私立大の「補欠待ち」を持ったままの方もおられます。
多くは今年はじめて浪人する方ですが、すでに何年か浪人を重ねている方のご相談も多く受けます。医学部受験では入試難度が高いため、受験大学の選択の仕方によっては浪人を重ねてしまうことは珍しくないからです。
浪人を重ねておられる方がはじめて窓口に来られた時、「実は次が2年目なのですが…」とか「3年目なのですが…」などと申し訳なさそうにいわれることがあります。しかし、こちらとしてはそんなことはまったく気にしていないのです。相談者の中には、高校丸々1回分以上の浪人生活の受験生もおられますが、まったく気兼ねすることも遠慮することもありません。要は、本人にやる気があるかどうかです。

何浪まで成績は伸びるのか

よくある質問に「一般論として、何浪までがんばれますか」というものがあります。何年も浪人することが正解なのかどうかを知りたいお気持ちはわかりますから、真剣なご質問なのだと思います。おそらくこの質問に真っ向から答えた人はいないでしょうが、私は敢えてお答えしてみます。「何浪までがんばれるか」と訊かれれば、あくまで個人的な経験ということでお断りした上ですが、私は「無条件に頑張れるのは3浪まで」と申し上げておきます。
一般論として医学科受験生を見てみましょう。現役生の時には学習そのものの方法もまだおぼつかなくて1年間の浪人生活に入る人はかなりおられます。もちろん、本来は1年の浪人生活で合格したいところです。
しかし、1年目の浪人生活でも、教材を徹底的に学習することが追い付かなくて2年目の浪人を余儀なくされる人もおられるのです。そういう人でも2年も浪人すればかなりの学力がつき、合格の可能性は非常に高くなるはずです。受験生としての生活も、このあたりまでには終わらせたいところです。
ところが、それでも緊張のために入試本番のアウトプットが上手くできずに、期せずしてさらに3年目の浪人になってしまう人もおられるのです。とはいえ、そうなってしまったからには嘆いてばかりはおれず、3年浪人したからには、今度こそ合格だ…という気合の方は多く、3浪めくらいまでは単純に学習に専念できるものなのです。
ところが、それでもダメだった場合にもしも4浪目になってしまうと、自分を納得させる理由が無くなってしまい、モチベーションを保つことが苦しくなってきます。要は、自分で自分を信じることが難しくなってしまうのです。
ましてやお家で保護者から遠回しに嫌味を言われたり、ため息を漏らされたりすると、決定的に精神的ダメージを受けてしまい、学習に専念できない状態になることは珍しくありません。
一般論として3浪までが頑張れる限界といいましたが、私の元に4浪目の方が来られても、私はそのことをそのままで単純に割り切って当てはめてお断りする訳ではありません。できるだけ直近1年の成績や生活、学習の状況をお尋ねして、状況によっては積極的に4年目の浪人をおすすめすることはあります。ただし、予備校の世界で多浪生にこの種の進言をすることは、私たちにとっても大変なプレッシャーです。彼らのモチベーションは恐らく大きく浮き沈みするでしょう。その彼らと一年間付き合う覚悟を持たなければ、進言できないことです。4年以上の多浪の人が受験を成功させるには、「自分で自分を信じる気合がある」か、「自分以外で自分を信じて鼓舞してくれる人がいる」かのいずれかが必要です。

成績が伸びる人と伸びない人の違い

しかし、中には学習へのスタンスが課題で浪人を重ねる人もいます。素直さが足りないから言われたとおりの真摯な学習ができない人、例えば「この問題は前回やったら出来たから復習は飛ばす」とか「前に見たことがある問題だから」と癖のように言う人、「この授業は大半がわかることだから」と勝手に欠席する人など、自己本位で学習を徹底的にやろうとしない人は、単に耳年増的にただの物知りになり学力が伸びません。こういう人は、「受験生としてすでに限界」に達しています。とにかく単純に「しなさい」といわれたことをすることができる素直さは、一般的には3浪くらいまでしか持たないことが多く、そういった意味でも単純に浪人を重ねて伸びるのは3浪まで、と申し上げているのです。
因みに、私は常に受験生には真剣に向き合おうとしています。私がその方の自信を鼓舞して受験させようとしている時には、本気だから真剣です。ですから、どんなにご注意しても自己本位の学習が直らず、これ以上の受験継続をしても誰も幸せになれないと思ったら、その人には正直にそう申し上げます。「今年はちゃんとします」というセリフは何度となく聞きましたが、残念ながら「ちゃんとされる」人はかなり少数派で、一度陥った自己中心的な学習はなかなか直らないのが現実です。

ある女子受験生は1浪の時に私立の薬学部も併願で合格しており、医学部の合格が出なかったのでそちらに即入学してしまいました。ところが、半年ほど通学したものの、やはり自分が本当にしたいことではないと自覚し、再度医学部を受験するために退学して、また私のところにやってきました。この種のお話は非常によくあります。
しかし、半年も経ってから受験準備をスタートしたものですから、時間的に自身の学力の基本を見直す時間が足らず、2年目も医学科合格はできませんでした。実は、浪人の学習には、年度の前半部分での学習が非常に重要なのですが、多くの人がそのことの自覚がないのです。
さて、その女子はついに3浪目になりましたが、今度は年度の頭から予備校の学習がスタートしているから真剣です。かなりの集中度で学習に取り組み、別名「自習室のヌシ」と呼ばれていました。自習室で小声でも話をしようものなら、彼女に叱られるというのです。自習室監督以上の監督をする女子という存在です。そんな彼女は3浪目にしてようやく医学科に合格し、河合塾を旅立っていきました。
3浪で済んだ彼女でしたが、もし彼女がこの年の受験でもダメだったら、私はもう1年受験を継続するように声をかけたに違いありません。

人生のチャンスは後知恵でしかわからない

予備校の現場が長いと、多くの「再受験生」に出会います。「再受験生」とは、大学に進学して受験履歴をいったん閉じた後、受験を再開する人たちです。個人的な事情はいろいろあるでしょうが、いろんなパターンの再受験があります。
一番多いのは、大学に1年以上在籍していたが、もう一度受験をし直そうとしている人です。これと似たパターンで「仮面浪人」というのがありますが、これは大学に手続きして履修単位登録も形式上済ませた上で、実質的に大学に行かずに受験勉強している人なので、これとは少し違います。
次に多いのはいったん大学を卒業までしてしまった上で、就職せずに医学科に入学するために受験する「学士再受験生」です。また、最近はいったん企業に就職し、何年も経ってから再び医学科への道を目指して受験しようとしている「社会人再受験生」もおられます。
これらの人はもう一つの医学科への道として、「学士編入」を考える人もいます。「学士編入」では2年次に編入される制度ですが、比較的難度が高い特徴があり、結局1年生からスタートする学部入試の方が合格しやすい傾向がありますので、我々の元にこられるケースが多いようです。
個人的には、本当は現役で入試が上手くいかなかった時、あと少し頑張ってその時に受験を継続されたらよかったのになぁと思います。受験勉強の学力は、正直学習をもっとも継続している時がピークのはずですから、その時が最も学力が高かったはずだからです。いったん大学に入って学習の方向性が変わったり、企業に就職して学習から遠ざかったりすると、どうしてもロスが大きくなり、すぐにシャープなアウトプットが戻ってくるとは思えないからです。
そういう方は、ほとんどが「あの時、こうしておけばよかった…」そう思うことが多いようです。ですから、現在すでに多浪になろうとしている人は、よく考えてほしいのです。学力のピークは少なくとも「今」です。これを継続して伸ばすことであと少しのところにある合格をめざすか、他の方向に自分を転進して別の道を探すかは自分の選択です。受験ですから、合格に補償はありません。自分のいつが学力ピークだったのかは、人生の後知恵でしかわからないものなのです。

1浪の人のようにまじめに取り組むことができるのなら、私はそういう多浪の方とも一緒にやりたいと思います。しかし、「あれはやるがこれは不要だ」など、したり顔で自分本位の学習しかしない「多浪癖」が出て直らない人なら、声をかけるつもりはありません。多浪の方がギラギラの「多浪癖」を出しているようなら、周りの方が協力してはくれないのです。多浪生の方はそのことに気づき、再度自分の足元を見つめ直すことが受験のスタートでなければなりません。