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2023.10.6更新

不安に思う人の多い「大学入学共通テスト」。その漠然とした「不安」の本質とは?

10月は「不安」が蔓延する時期

10月を迎え、いよいよ入試に向けてラストスパートをかけようとする頃になりました。秋の風に肌寒さが増すと入試が少しずつ近づいてきたことをひしひしと感じます。また、これからのシーズンは模試が頻繁に行われる季節でもありますから、受験生の緊張もますます高まってくることでしょう。
秋以降の河合塾の模試は10月実施のものは少なく、多くは11月に行われます。ですから、10月はそのための学力準備期間として、最大限の学習をしてほしいところです。ところが、テストや試験がなくなれば受験生の負担が軽くなると思いきや、手応えを確かめるものがなくなると反対に「不安」になるようで、「スランプになって何をどうしたらよいかわからなくなった」という相談や、精神的な不調を訴える人がこの時期には増えてきます。ほんの些細なことが気になったり、少しのミスでも大きく捉えたりする敏感な人なら、なおさら気持ちが苦しくなるに違いありません。
私が受験生の皆さんとお話するときにいつも心がけていることは、「不安を不安のままでおきざりにしない」ということです。「不安」は「対象がはっきりしないことへの恐れ」のことで、「対象がはっきりしていることへの恐れ」とは違いがあると思います。対象がはっきりしている恐れは「どうすれば取り除けるか」を考えることができますが、「不安」は対象がわからないためにそれができません。つまり、いつも何かに自分の心が捉えられているけれども、どうすればよいかわからない状態です。ですから「不安」を取り除くためには、「何が自分にとって恐れの対象なのか明確にする」ことが必要で、その上なら対処することができるはずです。

大学入学共通テストの「医学科合格の最下限得点率」

この時期によく「不安」だといわれるのが「大学入学共通テスト」です。対象がはっきりしているのに「不安」だといわれるのは、何が重要で何が重要でないのか受験生には自信がないためでしょう。恐れる対象ははっきりしているけれども、どういう恐れが正統なものかわからないために「不安」だといわれているように思います。そこで、今回は大学入学共通テストについて考えてみましょう。共通テストが「不安」だという人たちも、明確な対象が見えれば落ち着いて対処できるはずですね。

2023年度の共通テスト総合点の平均は6割程度(河合塾推定548点/900点満点)に落ち着きましたから、見た目には安定して見えます。しかし、その中身はセンター試験時代とはずいぶん違うように思います。というのも、センター試験時代にはあれほど「高得点者」がいたにも関わらず、共通テスト時代になって「高得点者」は非常に減少したからです。
当然ながら、それに応じて各大学のボーダーラインは下降していきます。<表1>を参照してください。これは2024年度の国公立大医学科前期試験の全49大学を、予想ボーダー得点率ごとに幾つあるか一覧にしたものです。最上位の「得点率91%」は東京大のみ、ついで「得点率89%」は京都大のみです。以下各大学が続くのですが、ご覧の通り最下段の「得点率81%〜78%」のところに多くの大学がひしめいていることが見て取れるでしょう。

<表1>

2024年度の国公立大医学科前期試験の全49大学の予想ボーダー得点率 2024年度の国公立大医学科前期試験の全49大学の予想ボーダー得点率

かつてセンター試験時代には「医学科なら9割以上、最低ボーダー得点率は85%止まり」だった時代は終わりを告げ、今では「医学科なら8割以上、最低ボーダー得点率は78%止まり」という時代になったのです。これは受験者のレベルが下がったというより、共通テストの得点がセンター試験に比べて取れなくなっているからです。
因みにボーダーラインというのは「合格可能性が50%の得点率」ということです。もちろん、これは出願先大学の試験がある程度できるだろう…ということを前提にしています。

共通テスト得点率76%の壁

共通テストの得点が低くても、出願先大学の二次試験さえできれば「挽回合格」することが可能です。ただし、そのためには大学が課す二次試験で他の受験生より高い得点を出さなければなりません。では、どれくらいの挽回が現実的なのでしょうか。河合塾は共通テストの「逆転可能得点率」を別途「注意ライン(挽回ライン)」として同時に示していますので、それを参考に考えてみましょう。

河合塾が公表している「注意ライン(挽回ライン)」は「ボーダーライン」から大体マイナス3%下に離れています。とはいえ、私の個人的な感触からいえば、ボーダーラインを下回って国公立大医学科に「逆転合格」できるのは、せいぜい「ボーダーマイナス2%程度」が現実だろうと思います。つまり、先ほどの<表1>の大学群のうち、ボーダー得点率の最下限大学は78%設定ですから、「共通テストで得点率76%を確保することが国公立大医学科合格の最低ライン」ということになるでしょう。

見方を変えれば、共通テストの得点率が「最低76%」に達していないと、国公立大医学科に合格することは極めて難しくなるといえます。しかし、医学科志望者の中には今年の共通テストでそこまで得点が取れなかった人たちは相当数おられたに違いありません。
どんなに時間をかけて受験準備をしても、現実はそう甘くありません。残念ながら共通テストの得点が目標に到達せず、合格することが現実的でなくなった受験生もおられたでしょう。それでも「とにかく医学科を受験だけでもしたい」という要望はよくあります。次年度の合格をめざして今年は経験を積む…そんな受験もあったでしょう。

しかし、共通テストの得点率が70%を大きく下回ってくると話が違ってきます。なぜなら、国公立大医学科には「第一段階選抜」という関門があるからです。
大学は実施要綱の中で、「出願者多数の場合、定員の○○倍の人数までで第一段階選抜を実施する」というように、受験票の発行人数を「定員の何倍か」で定めている」場合が非常に多く見られます。
「定員の何倍か」で第一段階選抜を実施する大学の場合、得点の上位から順に人数をカウントしていけば、大体600点未満(900点満点)になると、この「第一段階選抜で不合格になる」可能性が出てきます。
中には「得点をはじめから定めている」場合や「定員の倍率と得点を併用」して、第一段階選抜を実施する大学もあります。鳥取大は得点のみで600点以上、大阪公立大も得点のみで650点以上、京都大や大阪大は「定員倍率と併用」して得点630点以上というように、はじめから何らかの得点以上で第一段階選抜ラインを決めている大学もあるわけです。

つまり、医学科だけは「とりあえず受験だけはしたい」からと言って、闇雲に出願することができないのです。

「1点」の重みを考える

76%の壁を突破するためには、日頃の行いでうっかりやってしまうミスが出ないように「集中力を高める訓練」をした方がよいでしょう。問題そのものはできるとしても、時間の枠に収めようとする訓練は日頃の学習習慣の中で培われるものです。「あと5分あったらできた…」などと平気でいうのは、日常の学習訓練が疎かになっていた…と自分で告白しているようなものでしょう。そういう人の多くは大雑把で、1点程度何かで失ってもさほど日常で気にかける風情がありません。しかし、その1点がどのような意味を持つのかをみてほしいのです。

<グラフ1>

2023年度 共通テストリサーチでの国公立大医学科(前期)志望者の得点別人数分布(900点満点) 2023年度 共通テストリサーチでの国公立大医学科(前期)志望者の得点別人数分布(900点満点)

この<グラフ1>は今年の共通テスト本番の翌日の調査(河合塾の共通テストリサーチ)で、医学科志望の受験生が「どの得点帯に何人いたか」を示す分布です。先ほどの<表1>で見た通り、地方医大を中心とした大学群のボーダーは81%〜78%のあたりに圧倒的に偏っていましたので、ちょうどその4%分にあたる棒グラフ(人数)のみ赤で示しました。このグラフから、1点の重みを計算してみましょう。

まず、この「得点帯4%」に何人いるか足し算してみましょう。
(567人 + 638人 + 560人 + 574人 =2,339人)ですね。

次にこの4%を得点になおします。「900点満点の1%は9点」ですから、「得点帯4%」分ということは、(9点 × 4 =36点)ということです。つまり、この「36点の幅に2,339人の医学科志望者がいる」…ということです。割り算して単純化すると…。

「大学入学共通テスト1点あたり、65人の医学科志望者が横並びになっている」

ということになります。

大雑把に考えて、「65人」は地方大医学部の全定員にあたる人数です。この人数が同点で並んだ状態ですから、たった1点違うだけで「大学1つ分の順位が吹っ飛ぶ」計算です。

1点の重み、感じていただけましたでしょうか。では、再度おさらいして明確にしておきましょう。

共通テストでは、国公立大で逆転合格を狙うにしても「最低得点率76%が必要」で、それ未満での合格は現実的ではありません。また、「得点率66%(600点/900点満点)を割ると第一段階選抜不合格を覚悟」しなくてはなりません。
共通テストで得点できなかった場合を考えると、受験生は相当のプレッシャーを感じる日々を送ることになるでしょう。これを解決するには、結局のところ「一周回って…学習に集中する」という最も基本的なところに帰着するということですね。

たった1点…されど1点です。

私は今回の原稿で、あえて何点以上が国公立大医学科合格に必要かはっきり言い切りました。これは予備校業界の中では珍しいことだと思います。そのことで、受験生の皆さんの心の中で幽霊のように輪郭のなかった「不安」に輪郭を与え、明確に目に見えて手で触れられるような「正当な共通テストの恐れ」を書き出したつもりですが、どうですか。
目にも見えて手でも触れられるなら解決することができます。日常で集中力を発揮した油断のない学習を「武器」として、心を強く持って共に進みましょう。10月はそんな決意を固める月でもあるのです。