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<新課程>共通テスト 試作問題分析 <新課程>共通テスト 教科別研究

大学入試センターから2022年11月に公表された問題作成の方向性や共通テスト試作問題などを分析(速報)

概要

2022年11月に大学入試センターは、「令和7(2025)年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト(以下、2025年度共通テスト)の問題作成方針に関する検討の方向性について(以下、問題作成の方向性)」および「試作問題」などを公表した。
2025年度共通テストの問題作成方針は、従来の問題作成方針の考え方を引き続き重視し、その趣旨がより明確になるようにした上で、新学習指導要領とこれまでの共通テストの実施状況を踏まえること。そして、知識・技能や思考力・判断力・表現力等を問う問題作成、学習の過程を重視した問題作成、多様な受験者の学力を適切に評価できる問題作成をすることを基本的な考え方としている。

《2025年度共通テストの主な変更点など》

• 英語は、「リーディング」「リスニング」形式の問題を通して、「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]・[発表]」「書くこと」を統合した言語活動を通して培う総合的な英語力を評価。
• 数学は、『数学Ⅱ・数学B』が『数学Ⅱ,数学B,数学C』に。試験時間は70分(10分増)。
• 国語は、言語活動を重視し、多様な資質・能力を問うため大問を1つ追加。試験時間は90分(10分増)。分野別の配点は、近代以降の文章110点、古典90点(古文45点、漢文45点)。
• 理科は、1つの時間帯の中で、1~2科目を受験。
• 地理歴史、公民は、必履修科目を組み合わせた出題科目と、必履修科目と選択科目を組み合わせた出題科目の計6つを出題。
• 情報が出題教科に追加(試験時間は60分、配点は100点)。『情報I』と『旧情報(仮)』の間では、いずれかの受験者数が1万人に満たない場合も、得点調整の対象となる。
• 2025年度共通テストでは、旧教育課程履修者等(既卒者など)が選択できる、「経過措置問題」を出題。(新教育課程履修者が経過措置問題を選択することは不可)。地理歴史、公民のみ、経過措置問題を解答するか、通常の科目を解答するか、出願時に申請が必要。

《2025年度共通テスト試作問題》

今回公表された試作問題は「具体的なイメージの共有のために作成・公表」とあり、2025年度共通テストの出題内容については、引き続き検討することとしている。今回公表された試作問題は以下の通り。
・科目構成が大きく変わる数学、地理歴史、公民と新たに出題教科となる情報については、各出題科目の全体の構成がわかる問題。
・英語については、総合的な英語力を評価するための問題作成の工夫の具体例を示す大問3問。
・国語については、新たに追加予定の大問の例として2問。
※理科の試作問題は公表されなかった。

教科・科目別分析

2025年度共通テストについて問題作成の方向性や試作問題などの分析結果を、教科・科目別に掲載する。
※各教科・科目の分析における「分量・難易度」は、特に記載がない限りはこれまでの共通テストとの比較。

英語

問題作成の方向性、試作問題分析

問題作成の方向性に変更はなく、「英語コミュニケーションI」、「英語コミュニケーションII」及び「論理・表現I」を範囲とし、問題冊⼦、マークシート式解答⽤紙及びICプレーヤーを使⽤する⽅式で実施され、リーディングとリスニングの2技能を測定する試験で継続することが示されている。多様な話者による現代の標準的な英語で、「当面は1回読みと2回読みの両方の問題を含む構成で行う」というリスニングの方針にも変化はない。なお、ライティング、スピーキングに関し、英語を記述したり、英語の⾳声を吹き込んだりする直接的な⽅式での試験は実施しない方向性が試作問題によっても裏付けられたと言える。そこで、今後の出題においては、リーディングでは「読むこと」「書くこと」、スピーキングでは「聞くこと」「話すこと」の統合をより意識した場面設定や設問形式が想定される。

リーディング

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第A問(リーディング) 読解問題 18 5 授業中における生徒のスマートフォン使用の是非
第B問(リーディング) 読解問題 12 4 環境に配慮したファッション(サステナブルファッション)

[分量・難易度]

●やや難化/増加(今回提示の第A問・第B問について、最新の共通テスト問題で具体的に対応する大問番号を設定できないため、以下記載の内容から判断し、「やや難化/増加」とした。)

・第A問:ある主題(今回は「授業中における生徒のスマートフォン使用」)に関して賛否の意見を述べる際、複数の文章を読み、その主張をまとめ、論拠を整理する場面を想定している。2022年1月実施の共通テストで、第2問、第4問、第6問で問うているような、読解の技能が問われている。
・第B問:英語の授業で書いた文章(今回は「環境に配慮したファッション(サステナブルファッション)」がテーマ)を教師からのアドバイスに従って推敲する場面を想定し、段落のトピックセンテンスや全体の要約になる文、文脈上補う必要がある文、文と文の意味関係を表す語句などを選択する問題。
・なお、第A問は総語数が1,328語(河合塾調べ)。2022年1月実施の本試験のなかで最長の第6問B(1,042語)と比較して290語ほど多い。

[特徴]

リーディングでは「読むこと」「書くこと」の統合をより意識した場面設定や設問形式となっている。
自分の考えを表明する文章を書く場面を想定したり、学習過程を設問にしたりするなどで、「書く」技能の定着度合いを「書かないで」測定しようとする工夫がみられる。例えば第A問では「スマートフォン使用」に関する複数の人物の意見の概要を読み取り、書こうとする内容のアウトラインを組み立てる設問を通じて、「書く」技能に結び付けようとする工夫がとられている。STEP1~STEP3という流れは、例えば、自由英作文を「書く」技能を「読む」問題の中で間接的に測ろうとしている工夫がなされている。第B問では書いた文章を推敲する場面が設定されている。

[学習対策]

・文と文との意味関係、複数の文のまとまりからその概要やそこに述べられている意見を読みとる力を養成することが必要である。とくに文と文との意味の論理関係を正しく理解し、表現できる力を身につけることがさらに重要となってくる。
・第B問対策としては、センター試験でも同じ力を問う問題が出題されていたので活用するとよいだろう。
・ふだんの英語学習においても、読み取った文章を英語で要約したり、関連するテーマで英文を書いたりといった、「読むこと」と「書くこと」が融合した形で学習を行うとよい。

リスニング

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第C問(リスニング) モノローグ型長文ワークシート完成・選択問題 15 7 「幸福感」(2012年国連「世界幸福度調査報告」より)
*なお、本問は、2021年度大学入学共通テスト本試験(1月16日実施 第1日程)『英語リスニング』第5問の問題をベースに、設問2つを修正した形で提示されている。

[分量・難易度]

●変化なし(本問のベースとなった2021年度共通テスト問題との比較)

・問32と問33について、もとの共通テスト問題から、今回設問を修正(「再構築」)した形で提示された。問32について、もとの問題では、4つの英文選択肢から本文内容に一致するものを1つ選ぶ形式だったが、試作問題では2人の短い発話を聴き、その発言内容が講義の内容と一致しているかどうかを、日本語で書かれた4つの選択肢から1つ選ぶ形式に変わっている。このことにより英文を読み取る労力が軽減され、取り組みやすくなっているとも言えるが、この試作問題では、英文による読み上げ(音声)が追加されているため、難易度の変化はないと言ってよいだろう。
・なお、これまで選択肢が日本語で出題されたことはなかったため、実際に今回の形式での出題が行われる際には、選択肢は英語に変更される可能性がある。
・また、問33についても、もとの問題では講義調のモノローグの読み上げ文だったが、試作問題では対話形式に変更されている。ただし、これによる難易度の変化は特に生じないと思われる。

[特徴]

試作問題の第C問は、2021年度大学入学共通テスト本試験(第1日程)『英語リスニング』第5問をベースに、問32「内容一致問題」と、問33の「聴き取った内容とグラフから読み取れる内容を重ね合わせて要点を把握する問題」の2つの設問に変更が加えられた形で提示された。「話すこと[やり取り]・[発表]」の複数の領域を統合した言語活動をより意識した問題となることを狙い、再構築されている。

「問われる力」の変更点は次のとおり。
・問32について:もとの共通テストでは、聴き取った内容に関して英文4つの選択肢を用いた内容一致問題であったが、試作問題では音声を用いた内容確認問題に変更されている。問32の設問文に「要約を書くための講義内容を口頭で確認する」とあることから、聴き取った内容を「文字ではなく音声で把握できる力」が求められている。
・問33について:もとの共通テストでは、講義の続きを聴き、「聴き取った内容とグラフから読み取れる内容を重ね合わせて要点を把握する問題」であったが、試作問題では「図表を見ながらディスカッションの内容を聴き取る問題」に変更された。
・学習の過程で求められる力、例えば、「聴き取った情報を他者と共有したり、話し合ったりする力」や「聴き取った情報と問題文中に示されたグラフ資料を統合的に処理する力」などをこれらの設問を通じて問うことで、「聞くこと」と「話すこと[やり取り]・[発表]」の統合的な力を間接的に測ろうとする意図・工夫がみられる。

[学習対策]

・音声を聴く前に、状況と選択肢を素早く読み取り、情報を整理する力に加え、図表やワークシートなどを正しく読み取り、聴き取った情報と重ね合わせて判断する力が求められている。
・高得点を取るためには、普段から英語の音声に親しむだけではなく、選択肢の英文を素早く読み理解する読解力も要求されるので、必ず設問がついているものを使うこと。センター試験・共通テストいずれの過去問も対策には有効だが、取り組む際は聴き取れるまで何度も音声を聴き、容易にスクリプト(文字情報)を見ないようにすることが上達のコツである。

数学I,数学A

問題作成の方向性、試作問題分析

試作問題は、「問題作成方針に関する検討の方向性」の通り、全問を解答させるテストである。試験時間は現行と変わらない。一部に2021年度共通テスト第1日程の問題が用いられているが、新規に2問作られた。

さらに、発表資料には「従来の『問題作成方針』を重視するとともに新学習指導要領で育成される資質・能力を一層重視する」という趣旨の内容が書かれており、新規の2問に関しても、この「問題作成方針」に則っている。今後も現行の共通テストの特徴を踏襲した内容になるだろう。

今回公表された『数学I,数学A』の他に、『数学I』のテストも行われる。従前通り、『数学I』の問題の一部が『数学I,数学A』の第1問、第2問で出題されることになるだろう。

過去(2006~2015年)、『数学I・数学A』が全問必答だったときには、「図形と計量」と「図形の性質」が融合されて出題されていた。今回はそのような出題はなかったが、今後は、「思考力を問う問題」と「融合問題型の問題」のような出題となる可能性はあるだろう。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問〔1〕 数学I:数と式、2次関数★ 10 5 因数分解、2次方程式の解、整数部分、有理数・無理数
第1問〔2〕 数学I:図形と計量★ 20 11 三角比の相互関係、三角形の面積、余弦定理、正弦定理
第2問〔1〕 数学I:2次関数★ 15 6 1次関数、2次関数
第2問〔2〕 数学I:データの分析 15 6 外れ値、散布図、箱ひげ図、仮説検定の考え
第3問 数学A:図形の性質★ 20 10 角の二等分線、内接円、方べきの定理とその逆
第4問 数学A:場合の数と確率☆ 20 8 反復試行、期待値、条件付き確率

[分量・難易度]

第4問の文章量が多く(行数で例年の2倍程度)、全体としての分量は多い。

新学習指導要領で新しく示された、「外れ値」、「仮説検定の考え」、「期待値」の問題が出題されたが、これらの問題は、数学の思考過程を重視する、難易度が高めの問題が多かった。(過去問から流用された問題もレベルが高めの問題が多かった。)

ただし、共通一次試験、センター試験、共通テストに対する、これまでの試行テスト、試作問題、試行調査においては、その分量と難易度がそのまま本番に引き継がれないことが多かったので、今回の分量と難易度は必ずしも参考にならないことには注意が必要である。

[特徴]

形式は現行の共通テストとほとんど変わらない。

「データの分析」の「仮説検定の考え」は、方針がわかりやすく記述されている。この手の問題はバリエーションがほとんどないので、数年に一度くらいの出題となる可能性もある。

新規で作られた問題は、共通テストの特徴である「典型的な問題の解法を覚えているだけでは対応できない、初めて見る問題に対して設定を理解する読解力とあらゆる状況を想像して考え、方針を立てる力が必要な問題」に沿ったものが多く、苦労する受験生が多いだろう。ただ、前述の通り、本番においてこの傾向がそのまま引き継がれるわけではないことには注意が必要である。

[学習対策]

現行の共通テストと同様、センター試験や共通テストの過去問に取り組むとよい。過去問がない分野については、教科書の章末問題、教科書傍用問題集を理解し、模擬試験等で標準的な問題の手法を理解しておくことが必要である。

数学的に難しい問題も含まれるので、共通テスト対策にとどまらず、二次試験用の問題集等にも取り組むとよい。

数学II,数学B,数学C

問題作成の方向性、試作問題分析

試作問題は、「問題作成方針に関する検討の方向性」の通り、「数学II」は選択問題を含まず、「数学B」、「数学C」は4問から3問を選択する。出題範囲が増えたことにより、試験時間は現行より10分増えて70分となった。一部に2021年度共通テスト第1日程の問題が用いられているが、新規に2問作られた。

「数学II」部分の配点比は現行の共通テスト『数学II・数学B』より少ない。今回は出題されていないが、年度によっては「図形と方程式」や「いろいろな式」が出題される可能性がある。

さらに、発表資料には「従来の『問題作成方針』を重視するとともに新学習指導要領で育成される資質・能力を一層重視する」という趣旨の内容が書かれており、新規の2問に関しても、この「問題作成方針」に則っている。今後も現行の共通テストの特徴を踏襲した内容になるだろう。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問 数学II:三角関数★ 15 9 三角関数の値、三角関数の合成(正弦、余弦)、三角関数の最大値、加法定理
第2問 数学II:指数関数・対数関数★ 15 10 相加平均と相乗平均の関係、指数関数の性質、指数方程式
第3問 数学II:微分・積分の考え★ 22 10 接線、面積、グラフの選択、関数の最大
第4問 数学B:数列★ 16 10 等差数列、等比数列、漸化式
第5問 数学B:統計的な推測 16 9 区間推定、仮説検定
第6問 数学C:ベクトル★ 16 6 正五角形、正十二面体、内積計算
第7問 数学C:平面上の曲線と複素数平面 16 6 二次曲線の分類
複素数平面、点の回転、偏角、絶対値

[分量・難易度]

第5問、第7問の行数が多いので(他の問題の1.5~2倍程度)、読むべき文章量は増加した。

解答時間は10分増えているが、新規の問題は思考力を要し、難易度が高めに設定されているものがあり、多くの受験生にとって70分で解答することは厳しいだろう。

ただし、これまでの試行テスト、試作問題、試行調査においては、その分量と難易度がそのまま本番に引き継がれないことが多かったので、今回の分量と難易度は必ずしも参考にならないことには注意が必要である。

[特徴]

形式は現行の共通テストと変わっていない。

新規の「複素数平面」は過去、センター試験(1997〜2006年)で出題されていたが、「仮説検定」と「平面上の曲線」は初めて出題される内容であり、過去の出題例がない。

「平面上の曲線」は、コンピュータソフトで描いた図形の変化を考察する問題である。前述の通り、この分野の問題は過去の出題例がないので、今後どのような問題が出題されるか注目される。

「複素数平面」も、コンピュータソフトを用いて描かれた点について考察する問題である。共通テストの特徴である「典型的な問題の解法を覚えているだけでは対応できない、初めて見る問題に対して設定を理解する読解力とあらゆる状況を想像して考え、方針を立てる力が必要な問題」に沿って作られており、苦労する受験生が多いだろう。

前述の通り、本番においてこの傾向がそのまま引き継がれるわけではないことには注意が必要である。

[学習対策]

現行の共通テストと同じく、センター試験や共通テストの過去問に取り組むとよい。今回のものとやや傾向は異なるが、「複素数平面」については過去問(1997〜2006年)も参考になる。過去問がない分野については、教科書の章末問題、教科書傍用問題集を理解し、模擬試験等で標準的な問題の手法を理解しておくことが必要である。

数学的に難しい問題も含まれるので、共通テスト対策にとどまらず、二次試験用の問題集等にも取り組むとよい。
なお、時間に余裕がないので、「数学B」と「数学C」の選択問題については、4分野すべてを学習しているならば、各自が二次試験等で必要とする科目も考慮し、あらかじめ、どの問題を解くかの候補を絞っておくとよい。

国語

問題作成の方向性、試作問題分析

従来の問題作成方針を引き継ぎつつ、新学習指導要領における「現代の国語」に対応した大問が一つ追加される。
【現代文】
第1問は論理的な文章から、第2問は文学的な文章から出題されるという従来の傾向を引き継ぎつつ、新しく追加される第3問では、現代の社会生活と関わる題材について、複数の文章を読み取るだけでなく、それらを図やグラフなどと関連づけながら解釈し、言語活動をする場面を設定した問題となることが予想される。
【古典】
出題形式・分量ともに大きな変化はなく、従来どおり、複数の本文を提示して、「多角的・多面的な視点」からの考察を要求する問題が作成されるだろう。ただし、第3問が増えたことで、今までよりも現代文にかける時間が増える可能性があり、古典に関してはより速読と解答手順の洗練が求められることになりそうである。語彙力と文法力の充実をはかり、読解に生かせるようにする当たり前の学習を大切にし、国語全体の時間配分を意識して、模擬演習を重ねることが、いっそう重要になるだろう。(配点の変更に伴い、設問のマーク数が一つ減る可能性や各設問の配点が見直される可能性もあるだろう。)

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問 近代以降の文章 45
第2問 近代以降の文章 45
第3問 近代以降の文章
試作問題 第A問
20 5 <テーマ>
「気候変動と人間の健康についてのレポートを作成する言語活動」
<出典>
資料I 文章と図「環境省『気候変動影響評価報告書 詳細(令和2年12月)』」
グラフ1~3 「気象庁『気候変動監視レポート2019(令和2年7⽉)』」
資料II 橋⽖真弘「公衆衛⽣分野における気候変動の影響と適応策」
第3問 近代以降の文章
試作問題 第B問
20 5 <テーマ>
「日本語独特の言葉遣いに関するレポートを作成する言語活動」
<出典>
資料I 旺⽂社「第6回ことばに関するアンケート」
資料II・資料III ⾦⽔敏「役割語と⽇本語教育」『⽇本語教育』第⼀五〇号
第4問 古典(古文) 45
第5問 古典(漢文) 45

[分量・難易度]

現行の共通テストが大問四つであるのに対し、大問が五つとなり、第1問から第3問が近代以降の文章、第4問が古文、第5問が漢文となる。新しく追加される第3問は、複数の1ページ弱の文章と図・グラフなどが出題されている。現行の共通テストの第1問や第2問と比べ、一つ一つの文章は短いが、図やグラフの数が多い。解答数は5で現行の大問の約半数である。第3問は、解き慣れていないと手間取ることが予想される。

[特徴]

従来のセンター試験や共通テストでは出題されたことのない形式の大問が一つ追加される。新しく追加される第3問では、現代の社会生活に必要とされる論理的な文章及び実用的な文章からの出題となり、文章の読み取りだけでなく、図やグラフなどを的確に読み取ったり、複数の文章や資料を関連づけて解釈したり、それについて分析し検討したりするといった言語活動の過程を重視した問題になる。

[学習対策]

現行の共通テストやセンター試験の過去問を使って演習することは有効であると考えられる。ただし、新しく追加される第3問については、新学習指導要領における「現代の国語」で学習する、資料の読み取りや、それを基に言語活動をする力が求められる。文章の読解だけでなく、図やグラフを正確に読み取る力やそれらを関連づけて解釈する力を養っておくことが必要となる。また、現代社会の問題についてレポートを書くなどといった言語活動に触れておくことも必要になる。

理科

問題作成の方向性の分析

理科の出題科目は『物理基礎,化学基礎,生物基礎,地学基礎』、『物理』『化学』『生物』『地学』の5科目で、現行の共通テストでは二つの異なる試験時間帯で実施していたものが一つの試験時間帯の中で「理科」として実施する。
なお、『物理基礎,化学基礎,生物基礎,地学基礎』を受験する場合には必ず2科目を選択する必要があり、4単位科目とあわせた科目選択パターンは現行と変わらない。試験時間や配点の変更もない。
旧教育課程履修者への経過措置について、理科は経過措置科目の設定はないが、「新教育課程による出題科目において、必要に応じて旧教育課程履修者等が選択可能な選択問題を出題する場合がある」とあり、旧教育課程履修者へ配慮が行われる。
今回発表された内容から、高校の指導や大学入試に対し配慮すべき影響は特にないと思われる。

地理総合,地理探究

問題作成の方向性、試作問題分析

「地理探究」は旧課程の「地理B」に代わって新学習指導要領で新たに設置された科目であり、今回の試作問題では「地理総合,地理探究」全6問中第3問以降の4問が「地理探究」からの出題であった。大学入試センターの「問題作成方針に関する検討の方向性」に新学習指導要領の主旨に一層沿ったものとなるよう検討するとある通り、今回の試作問題はこの問題作成方針を一層重視したものとなっており、特に第1問問1において明確なメッセージとして示されていた。この設問は、国の位置を地図上で明らかにせず、資料から位置情報も読み取らせた上で出題のテーマについて考察させるものであり、国の位置という基礎的な知識ですら思考力・判断力をはかる素材とする意味で、非常に意欲的であった。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問※1 【地理総合】「B 国際理解と国際協力」の「(2)地球的課題と国際協力」 12 4 難民問題とその解決策
第2問※2 【地理総合】「C 持続可能な地域づくりと私たち」の「(1)自然環境と防災」 13 4 自然環境と防災
第3問 【地理探究】「A 現代世界の系統地理的考察」の「(1)自然環境」 17 5 気候システム、生態系(エコシステム)と人間社会
第4問 【地理探究】「A 現代世界の系統地理的考察」の「(2)資源、産業」及び「(3)交通・通信、観光」 17 5 国や地域の結びつき
第5問 【地理探究】「B 現代世界の地誌的考察」の「(1)現代世界の地域区分」及び「(2)現代世界の諸地域」 17 5 アフリカに関する地誌的考察
第6問 【地理探究】「A 現代世界の系統地理的考察」の「(4)人口、都市・村落」
「C 現代世界におけるこれからの日本の国土像」の「(1)持続可能な国土像の探究」
24 7 現代世界の諸課題と、身近な地域における課題との相関・因果関係についての考察

[分量・難易度]

2022年度大学入学共通テストの設問数は31問、試作問題は30問と1問減少しているが、質的な分量は増加している。それは、図(資料を含む)、表、写真において量の面での変化はわずかだが、質的な分量は明らかに増加しており、資料あたりの内容が充実した上で、総ページ数も増加していることからも明白である。
難易度については、限られた時間内で解答していく上で確実に難しくなっているといえる。解答する上で、細かい知識の総量を単純に求めているわけではなく、複数の初見の資料を組み合わせて正答に至る力を求め、さらに正答にたどりつくまでに時間がかかる問題であった。学術研究において絶対的に必要とされる本質的な力をも測ろうとする意欲的な設問といえる。

[特徴]

第6問問3は、フードデザート(食の砂漠)をテーマに、同世代・同時入居が一般的であったニュータウン(新興住宅地)における、人口の高齢化による逃れられない問題(オールドタウン化)に気づかせたいという出題意図の奥に、地形改変などの高度成長期における、無機質な開発に対するアンチテーゼをあぶり出そうとする意思すら伺える意欲的な設問であった。これらは、新学習指導要領の目標のひとつである「…地理的な課題の解決に向けて構想したりする力や、考察、構想したことを効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を養う」ことに沿った出題といえる。

[学習対策]

新学習指導要領の目標に沿った問題に対応するためには、「なぜそうなるのか」という因果関係や相関関係の違いにも関心を持ち、理解を深める姿勢が大切である。新学習指導要領には小・中・高等学校の一貫性の観点が述べられており、本試作問題には小学校における生活科・社会科や、中学校社会科地理的分野で学習した内容を活用できるものもみられた。構想、考察をするためには、小・中学校の学習で得た知識を含め、基礎的な知識を身につけておくことが欠かせない。また従来通り、図表の読み取りは解答の前提となることから、過去問演習により、短時間で的確に読み取る技能を養うことも引き続き重要である。

歴史総合,日本史探究

問題作成の方向性、試作問題分析

・「『地理歴史』の問題作成方針に関する検討の方向性」では、「新学習指導要領に示されている、それぞれの科目で育成することとされている資質・能力を一層重視したものとなるよう検討する」とされており、実際の試作問題は新学習指導要領に基づいた出題であり、歴史総合部分は2021年3月に発表されたサンプル問題の延長線上にあるといえる問題であった。
・『歴史総合,日本史探究』の作成方針の方向性は旧課程の「日本史B」の共通テスト作成方針を継承しており、試作問題も思考力・判断力を問う姿勢を重視している。
・資料(史料・図版・グラフ等)が多用され、知識だけでは解けない一方、資料の読み取りだけでも解けないので知識・技能のバランスが取れた問題となっている。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問※1 歴史総合 25 9 人やモノの移動とその影響
第2問 日本史探究・総合 15 5 学びの歴史
第3問 日本史探究・古代 15 5 藤原京の時代の特徴
第4問 日本史探究・中世 15 5 中世社会における対立・紛争の解決方法
第5問 日本史探究・近世 15 5 江戸時代の政治・社会(大坂)
第6問 日本史探究・近現代 15 5 関東地方のある市の近現代史

[分量・難易度]

・全体の大問数は6問で現行の共通テストと同じだが、設問数は現行の共通テストが32問、試作問題は34問と微増した。一方、全体のページ数は、現行の共通テストが2021・2022年度とも31ページだったのに対し、試作問題は39ページあり、かなり増加している。設問文が長いものも多いのに加え、資料の掲載量が増加しているためである。結果として、設問数はそれほど変わっていないが、受験生が解答に要する時間は増加すると考えられる。
・問題の難易度は現行の共通テストとそれほど変わらない。
・歴史総合部分については、サンプル問題と難易度はそれほど変わらない。

[特徴]

・第1問が「歴史総合」からの出題で、配点は25点(全体の1/4)であった。
・全大問が大学生や高校生が登場する設定になっており、新学習指導要領にある「主体的・対話的で深い学びを実現する」ことを意識した出題になっている。
・資料を用いた設問が多く、全体に思考力・判断力を問う姿勢が見られるとともに、知識・技能とのバランスも考慮されている。
・時間軸・空間軸を意識した問題が多く、時代概観をつかんでいるかどうかが問われている。

[学習対策]

・思考力・判断力を問う設問が多く、歴史用語の丸暗記では対応できない。歴史事象の因果関係や時代概観・時代の特徴をつかむことが重要になる。
・資料の読み取りが必要となる問題が多いので、日常的に史料・図版・グラフなどの読解訓練をしておくことが必要である。
・過去の共通テストやセンター試験の問題を解くことも有用である。
・歴史総合部分の対策については日本史Aや世界史A(近現代部分)の過去問が利用できる。

歴史総合,世界史探究

問題作成の方向性、試作問題分析

新学習指導要領に沿って、生徒の主体的活動をテーマとした問題が多い。資料(史料・図版・グラフ・表など)が多用され、それらを読み解く技能と習得した知識を結びつけることが求められている。
「歴史総合」は、旧課程の「日本史A」「世界史A」に代わる新科目で、18世紀以降の日本史・世界史を扱う。『歴史総合、世界史探究』全5題中1題が「歴史総合」からで、100点満点中の25点(1/4)。
「世界史探究」は、旧課程の「世界史B」に代わる新科目。全5題中4題が「世界史探究」からで、100点満点中の75点(3/4)。新学習指導要領に基づき、現行の共通テスト「世界史B」より、いっそう思考力・判断力を問う出題。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問※1 歴史総合 25 9 世界の諸地域における人々の接触と他者意識についての授業
第2問 世界史探究 13 4 世界史上の都市についての授業
第3問 世界史探究 15 5 外交や貿易などによって発生する人の移動と移動ルートの選択についての授業
第4問 世界史探究 25 8 世界の諸地域における国家と宗教の関係に関する資料
第5問 世界史探究 22 7 ある主題について生徒が考察を行う授業(※主題そのものが問題で問われている)

[分量・難易度]

2022年度の共通テスト本試験(世界史B)と比較すると、難易度は大きく変わらない。ただ、固有名詞ではなく内容や歴史的概念を問う傾向がさらに顕著となった。分量としては、本試験の小問数34問に対し、試作問題は33問。ただし、共通テストの28ページに対して、試作問題は40ページにわたる。資料(史料・図版・グラフ・表など)の読み取りがいっそう必要とされるため、問題数はほぼ同数でも時間的負担は大きくなるだろう。
「歴史総合」と「世界史探究」の比率は、得点で1:3(25点:75点)。問題数もほぼ同様で、「歴史総合」の小問数が9問、「世界史探究」が24問。「歴史総合」の出題については、2021年3月のサンプル問題が11問であり分量は微減。

[特徴]

新学習指導要領が掲げた「知識及び技能」「思考力、判断力」「学びに向かう力」などの習得度を確認する試験となっている。
固有名詞を問うのではなく内容や歴史的概念を問おうとする傾向が顕著であり、例えば第1問・問1(1)では、語句や年号を知らなくても解答できる一方、内容や因果関係を踏まえた時間軸の理解が必須である。空間軸の理解も求められ、第3問・問5(18)では、ある時代の国際情勢の理解を前提に、生徒の会話や複数の図法の地図を読み解き、航路を地図上で答えさせる。複数資料の相違点や類似点を比較・検討して判断する力も必要であり、第2問・問4(13)では複数の都市の地図などから考察を深め、生徒たちの分類基準を推測させる。

[学習対策]

従来の共通テスト対策を深めていけばよい。歴史用語の暗記はもちろん必要だが、語句偏重に走らず、時間軸・空間軸を意識して日頃から資料(史料・図版・グラフ・表など)に慣れ親しんでいる受験生が有利であろう。
「歴史総合」については、「世界史探究」で近現代史を学ぶ際に、同時代の日本について比較検討するなど、意識的に日本史分野の振り返りを行うと、効率的に学習できるだろう。センター試験の過去問も有益だが、共通テストの過去問やそれに準じた問題を用いた方がよりよいと思われる。資料の読み取りに時間がかかるため、一定時間で解く訓練も必要であろう。

公共,倫理

問題作成の方向性、試作問題分析

生徒や先生が対話し思索を深めていくという場面設定は、旧課程の共通テストの「倫理」や「現代社会」と同様である。また、各種資料(原典、図版など)や会話文などから読み取った内容を手がかりとして判断させる設問を設けている点や、倫理に関する概念や理論などを手がかりとして多面的・多角的に考察、構想できるかを試す設問を出題している点なども、旧課程の共通テストと同様である。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問※1 公共 13 4 多様性と共通性
第2問※2 公共 12 4 人口減少社会
第3問 倫理 28 9 源流思想・西洋近現代思想
第4問 倫理 15 5 日本の思想
第5問 倫理 16 5 現代の諸課題と倫理
第6問 倫理 16 5 現代の諸課題と倫理・西洋近現代思想

[分量・難易度]

「公共」部分については旧課程の共通テスト「現代社会」と、「倫理」部分については旧課程の共通テスト「倫理」と、それぞれ同程度の難易度であると考える。難易度の高い設問と低い設問の両方が扱われており、全体として見ると、大きく難易度は変わらないと言えよう。
全体のマーク数は旧課程の共通テスト「倫理」と同数であったが、試作問題「公共,倫理」の全体ページ数は2021・22年度の共通テスト「倫理」よりも7ページ増加しており、全体の分量および1設問あたりの分量は増加していると言えよう。試験問題すべてを解答するには、旧課程の共通テスト「倫理」よりも多くの時間を要するようになったと言えるだろう。

[特徴]

「公共,倫理」で扱われている知識事項は、その多くが旧課程の「倫理」「現代社会」の教科書でもカバーできる範囲のものであった。「公共」部分からの出題においては、知識事項よりも論理的判断力や読解力などの情報処理の力を試すことを重視していると考えられる。「倫理」部分からの出題については、旧課程の共通テスト「倫理」と同様、教科書的な知識事項の定着度合いを測ることに重きが置かれている。なお、解答番号26は、現在の教科書ではあまり扱われていない心理学者についての知識問題であった。また、今回の試作問題においては、2018年実施の共通テスト試行調査において見られた連動型の設問が、やや形式を変更する形で出題されていた。

[学習対策]

知識事項に関しては、「公共」および「倫理」の教科書の内容理解に努めることが肝要である。今回、旧課程の共通テストや過去のセンター試験ではあまり出題されたことのない形式の知識問題も見られたが、いずれも教科書の範囲内の知識によって対応は可能であった。
新課程の共通テストの対策として、旧課程の共通テストの「倫理」や「現代社会」の過去問を研究しておくことは有効である。出題形式も、今回の試作問題のものだけが、そのまま共通テストで扱われるとは限らないだろう。ただし、過去問と比べ、試験問題を解答するのに要する時間が多くなる可能性が高いことから、迅速に情報処理を行う力を磨く必要があるだろう。

公共,政治・経済

問題作成の方向性、試作問題分析

あるテーマについて、クラス内で探究学習を進めるという場面設定や、生徒や先生が対話し思索を深めていくという場面設定は、旧課程の共通テストの「政治・経済」や「現代社会」と同様である。また、教科書に掲載されている知識の定着度合いを確認する設問のみならず、資料から適切に情報を読み取る技能を試す設問や、現代の日本や国際社会において生じている諸問題の原因を追究し、その解決策の構想に向けて考察できるかを確認する設問なども出題されている。

[問題構成]

大問番号 分野 配点 設問数 テーマ・出典
第1問※1 公共 13 4 多様性と共通性
第2問※2 公共 12 4 人口減少社会
第3問 政治・経済 18 6 平等な社会
第4問 政治・経済 18 6 日本の雇用慣行
第5問 政治・経済 19 6 現代社会の変化
第6問 政治・経済 20 6 国際的な人の移動

[分量・難易度]

「公共」部分については旧課程の共通テスト「現代社会」と、「政治・経済」部分については旧課程の共通テスト「政治・経済」と、それぞれ同程度の難易度であると考える。
全設問(32問)のうち、「公共」部分が8問(25%)を、「政治・経済」部分が24問(75%)を占めている。配点についても「公共:政治・経済」の比は「1:3」となり、「政治・経済」部分に重きが置かれる形となった。全体のマーク数は、共通テスト「政治・経済」よりも3~4程度増加しており、全体のページ数でも旧課程の共通テスト「政治・経済」と比べ増加している。試験問題すべてを解答するには、旧課程の共通テスト「政治・経済」よりも多くの時間を要するようになったと言えるだろう。

[特徴]

「公共」部分からの出題では、知識事項よりも論理的判断力や読解力などの情報処理の力を試すことに比重が置かれ、「政治・経済」部分からの出題では、教科書的な知識事項の定着度合いを測ることが重視されている。旧課程の共通テストと同様、現代の諸問題の原因を探り、その解決策の構想に向けて多角的・多面的に考察する力を測る設問が出題されているが、その難度が上がっているものがある。また、資料を的確に読み取る能力を確認する設問が多数出題されていた点も旧課程の共通テストと同傾向であるが、単なる数値読み取りにとどまらず、考察についての記述の正誤を判断させるなど、求められる能力がより高度になっている設問も見られた。

[学習対策]

新課程の共通テスト「公共,政治・経済」の対策をするにあたっては、「公共」と「政治・経済」の教科書の内容理解に努めること、また、課題探究に積極的に取り組むことで資料を読み取る力や分析・考察を行う力を身につけることが重要である。旧課程の共通テストの「政治・経済」や「現代社会」の過去問を研究しておくことも有効であると言えよう。出題形式も、今回の試作問題のものだけが、そのまま共通テストで扱われるとは限らないだろう。ただし、今回、図表資料問題などで複雑なタイプも見られ、時間のかかることが予想されるため、文章の趣旨や図表資料の意味・内容を素早く見抜く、迅速に情報処理を行う力を磨く必要があるだろう。

情報Ⅰ

問題作成の方向性、試作問題分析

・「問題作成の方向性」では「日常的な事象や社会的な事象と情報との結び付き」「探究的な活動の過程」「情報社会と人の関わり」を重視しており、試作問題においても、それに対応するように、トイレの混雑ランプ、路線図、二次元コード、待ち状況のシミュレーション、釣り銭の問題などが題材に選ばれている。また、論理回路やプログラミングなどは単なる知識と捉えず、実社会と結びつけて出題されており、これは今後も続くだろう。
・「問題作成の方向性」では「社会や身近な生活の中の題材や受験者にとって既知ではないものも含めた資料等に示された事例や事象」について考察する力を問う、と言及されており、受験生によっては授業などで扱われていないような題材を取り上げた問題が出題される可能性もある。

[問題構成]

大問番号
(設問)
分野 配点 設問数 テーマ
第1問
(問1)
(1)情報社会の問題解決 4 3 ・情報社会の中で日常的に利用されるSNSやメール、Webサイトなどの利用時の注意点や情報の信ぴょう性の判断ついての理解。
第1問
(問2)
(4)情報通信ネットワークとデータの活用 6 2 ・情報通信ネットワークで利用されている通信データの誤り訂正の仕組みについての考察。
・基数変換の理解を基に、具体的な誤り訂正を考察。
第1問
(問3)
(3)コンピュータとプログラミング 6 3 ・コンピュータの基本的な仕組みである論理回路の理解と、示された演算処理を実現するための真理値表及び論理回路の考察。
第1問
(問4)
(2)コミュニケーションと情報デザイン 4 2 ・情報デザインの考え方について、示された情報がどの基準に基づいて整理されているかを考察。
第2問
(A)
(1)情報社会の問題解決、(2)コミュニケーションと情報デザイン 15 5 ・広く私たちの生活の中で利用されている情報技術の一つである二次元コードについて、その仕組みの理解と探究的な活動の中で得られる規則性や特徴について、また、知的財産権との関りについて考察。
第2問
(B)
(3)コンピュータとプログラミング 15 5 ・文化祭の模擬店の待ち状況について考えるという日常的な問題解決の場面で、示された乱数を発生させる確率モデルのシミュレーションの考え方を理解し、シミュレーションの結果から読み取れる内容や、変数を変化させた場合の結果を考察。
第3問 (3)コンピュータとプログラミング 25 14 ・日常的な買い物において、代金を支払う際の「上手な払い方」を考えるという問題解決を題材に、基本的なアルゴリズムとプログラミングの基本に関する理解を基に、示された要件を踏まえたプログラムについて論理的に考察。
第4問 (4)情報通信ネットワークとデータの活用 25 6 ・国が実施した生活時間の実態に関する統計調査を基に、スマートフォン・パソコンなどの使用時間と睡眠の時間や学業の時間との関係を題材に、データの活用と分析に関する基本的な知識及び技能を活用して、データが表すグラフから読み取ることができるかを考察。
参考問題第4問 (4)情報通信ネットワークとデータの活用 25 5 ・季節に関係のあるエアコンとアイスクリームの売り上げに関する時系列のデータを題材に、移動平均や元のデータをずらして相関を取ることにより、その関係を見出し、また、複数項目の組合せの関係を表すグラフから項目間の相関と影響を考察。

[分量・難易度]

・大問4題(全問必答)、34ページ。
・問題文や図・表から情報を読み取り、思考力・判断力を働かせることが求められる設問が多い。教科書の内容をまんべんなく学習したうえで、学習した内容と社会や日常の中で目にする事象や仕組みを結びつけて考える力が必要とされる。
・多くの「情報I」で扱う内容の問題解決の事例をもとに情報技術や情報社会の仕組みなどに関する知識を活用する経験を積むと取り組みやすい問題もある。
・プログラミング要素を含む問題(第3問)とデータの活用要素を含む問題(第4問)は、実際に授業などで問題解決方法を経験していないと時間がかかるだろう。
・共通テストはどの教科・科目も「時間との勝負」。他教科・科目と比べてそれほど文章量(問題文の長さ)は多くないと思われるが、問題文や図・表に含まれる情報量が多い。
・問題を解く順番や時間配分に注意しないと、解答時間が不足する生徒もいるだろう。問題を読み、情報を整理し、判断するスピードが必要であろう。

[特徴]

・新学習指導要領の4つの領域からまんべんなく出題された。
・社会で活用されている情報の知識・技術を身の回りの事例と絡ませ、問題の発見・解決に向けた探究的な活動の過程に沿って考察する問題が出題されている。
・用語・知識のみを問う問題は少なく、深い理解を伴った知識の質を問う問題や、問題文や図・表で与えられた情報やデータと「情報I」で学ぶ知識・技術を組み合わせながら考察させる問題が多い。基本的な知識・理解があれば、問題文や図・表から必要な情報を読み取って考察・解答できるであろう。
・プログラミング要素を含む問題(第3問)は、どのプログラミング言語で学習していても対応できる出題であった。
・教科書によって掲載の有無が異なる用語を扱う場合は、用語の説明を問題文に含めて知識の差が影響しないよう配慮されている。

[学習対策]

・教科書の内容をまんべんなく学習して基本的な知識と技能を身につけたうえで問題解決に取り組むことや、一つ一つの用語や技術・機能の本質的な意味を理解して、それを使いこなすことを意識することが大切である。
・「情報I」の教科のねらいを確認したり、情報科教員に相談したりして、学習に計画的に取り組むと良い。
・大学入学共通テストでも、社会との結びつきを重視した問題が多数出題されるであろう。既知ではないものも含めた資料等に示された事例や事象を題材に用いた問題であっても、基本的な知識と技能を活用すれば対応できると考えられるので恐れることはない。授業で習って終わりではなく、社会や日常の中で目にする事象や仕組みを、授業で習ったことと結びつけて考えることで対応力を伸ばすことができる。そのためにも、日頃から身の回りの事象や仕組みに対してなぜだろう、どうなっているのだろうと、自分自身で考えるトレーニングを積んでいこう。

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