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2019.9.2公開

「今の話題」についての質問は、根本的な資質を問うている

面接に模範回答を求めることは、その段階でスタンスが「不正解」です。「考えて何かの結論を出す」行動そのものに意味があるのです。

医療の有名テーマは理解していることが前提

高校などでは医学科入試の面接質問への対策として、医療系ニュースで話題になっていることを、知っておくように指導されることは多いのではないでしょうか。質問が「最近の医療ニュースで関心のあるものは何ですか」という訊かれ方なら、受験生側が話題の選択をすることで回答をコントロールできますが、最近はそういう質問の仕方は少なくなりました。いきなり「○○についてどう思いますか」のような尋ねられ方のケースが多いため、訊かれていることを知識として知っていることが前提で、その上で一段深い回答が要求される質問が増えています。少し、具体例を挙げてみましょう。

・医師不足の解決には何が必要ですか(2018 浜松医科大)

現代の医療をとりまく問題点の一つは「医師不足」だということを理解していることを前提として、その解決策として、あなたはどうしたらいいと考えていますか・・・という訊かれ方をしています。

・高齢化社会における医療について(2018 神戸大)

上記と同じく、現代の社会問題の一つが「高齢化」だと知っていることを前提として、新しい医療がどうあるべきか、その課題をあなたはどう捉えているか・・・と尋ねられています。

・小児科と産婦人科の医師不足の原因と改善策(2018 福岡大)

診療科による医師の偏在があることを知っていることを前提として、その理由がなぜで、あなたはどうしたらいいと考えますか・・・という質問です。

「医師不足」について尋ねられるのであれば、地域(二次保健医療圏)ごとの偏在があることを知っている方が、より趣旨に見合った回答を返せるでしょう。「高齢化社会の医療」について尋ねられれば、高齢者が増加している社会問題の側面を知っている方が、よりよい回答を出せるに違いありません。また、「診療科ごとの医師の偏在」を尋ねられれば、なぜそれがおこるのかを知った上で、問題意識を表明する方がよいでしょう。
とはいえ、受験生はまだ医療従事者ではないのですから、無尽蔵に専門的なことを質問しても答えにくいことぐらい、面接官は分かっています。ですから、そこまで質問するものは、ニュースや新聞などで話題になることが多いものだけに限定されています。そういう話題は「問題点」や「課題」などもニュースで整理されていますから、面接官には、これらの「有名問題」については、あたかも「知ってるよね」という風情で質問されることは覚悟しておいた方がいいでしょう。
質問する側は、人が何かを学べば必ず「個人的な意見」を持つ・・・という前提で考えており、当然「この人はどう思っているんだろう」という自然な流れの中で質問しているのです。ですから、医療系のニュースにまつわることでは、そのことを説明できることや知っていることを確かめるにとどまらず、必ずといっていいほど「あなたはそれについてどう考えるか」という質問がくっついてくるものなのです。
必要なことは、学ぶという行動の前提として、「学ぶべき内容はいつもテキストに載っている」という古い発想から頭を切り替えることです。世間の「今の話題」は、テキスト外の貴重な教材です。ニュースの話題にはトレンドがありますから、それを捉えていることが大切なのです。基本的には世間でよくニュースになっていることは訊かれるものとして準備するべきだといえるでしょう。新聞やニュースで社会のトレンドに関心を持ち、自分としての考え方を持つこと、これは受験のための対策というより、医療に携わる人の持っているべき根本的な資質なのではないでしょうか。

「あなたはどう考えるか」

この「どう考えるか」の判断は、単純にトレンドである医療系の知識にまつわる質問にとどまりません。それよりむしろ、それ以外の質問で尋ねられることの方が最近は増えています。つまり、本人に関することでもないし、医療関係でもないシチュエーションを想定して、その種の「どう考えるか」を尋ねるケースが最近は増えてきているのです。これぞ、面接試験の本領発揮というところです。何かを「知っているかどうか」よりも、もっと大切な「論理的な判断ができるかどうか」の人間的な力を見ようとしている、ということでしょう。少し具体例を挙げてみましょう。

・なぜドーピングしてはいけないのか(2018 国際医療福祉大)
・SNSを使う時に気をつけていることは(2018 東京医科大)
・一つのことを極めるのと、すべてをバランスよくこなすのではどちらが良いと思うか(2018 浜松医科大)

教えられたことをそのまま無反省に飲み込んで吐き出すタイプの、「知識偏重の受験生」は、こういった「正解がないものを自分で考えて回答を編み出す」ことが非常に苦手です。ですから、面接のガイダンスを実施すると、そういう人の中から必ず「模範回答がほしい」という声が出てきます。しかし一体、こういう人は面接試験を何だと思っているのでしょうか。私からの回答は、「模範などありません。あなたの価値観と人生を私が背負うわけではないから、自分の回答は自分で考えなさい・・・」というものです。
「嘘はいいいものですか、悪いものですか?」(2017 熊本大)や「自分を色に例えるとあなたは何色ですか?」(2017 聖マリアンナ医科大)などの質問が出たら、そういう方たちは他人が考えた回答を模範回答として面接官に投げるとでもいうのでしょうか。この種の質問には正解があるわけではなく、受験生本人が「考えて何かの結論を出す」行動そのものに意味があります。
近頃はなくなりましたが、かつては相当回答する側が困るようなシチュエーションの質問もあったものです。「末期がん患者と重体の妊婦を前にして酸素マスクが1つだけある状況で、どうするか」(2008 鳥取大)と訊かれたら、皆さんならどう回答しますか。これに模範回答があると思う方が間違いのような気がします。
ですから、回答の模範を求めることは、その人がすでに回答を放棄したも同然です。論理的に考え、自分の回答に責任を持って相手に分かるように説明する・・・。そもそも「模範」を探すとしたら、それは「回答」ではなく、考える「スタンス」なのではないでしょうか。
上記のいくつかの過去の面接質問に対しての模範回答はここには示していません。回答は自分自身で考える・・・自分ならどう考え、自分なりの判断ならどうするか、がポイントです。そういったスタンスと考え方を持って他者と話せることが、「正解」に近づく唯一の方法のように思います。

私から見て、他人に回答内容を依存して尋ねる人は、その段階でスタンスが「不正解」です。回答もおそらく、面接官を満足させられないに違いありません。一方、「じゃあ、一体私はどう回答すればいいんだ・・・」。今そう思って悩んでおられる皆さんは、すでに「模範」に習った、考えようとするスタンスの持ち主です。そして、それは回答の内容を聞くまでもなく、おそらくすでに「正解」なのではないかと思います。