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2019.6.3公開

「日常の心構え」の表明の心構え

ささやかに見える質問は、あなたの社会性とコミュニケーション能力を試している!

「何に関心が向いていますか」とは訊かれない

医学科入試の面接質問の際、「本人の志向」を尋ねる質問が結構な頻度で出されています。ところが、何に関心があるかは人によって違うのが当然ですから、志望動機以上に「個人の志向」は千差万別なものです。
もちろん、これに正解はありません。ただし、社会的に通用するかどうかは大切です。これが適切な範囲に収まっていれば基本的に問題はないでしょう。本人が社会と健全な絆があるかどうかや、自分を他者に説明する力を面接官はみたいのでしょうね。
質問方法として、ズバリ「何に関心が向いていますか」とはまさか尋ねられませんから、実際の質問の方法を例に出してみてみます。

「本」の質問・・・回答はあなたの「名札」

例えば「最近、どんな本を読みましたか」という質問は、かなりの頻度でされています。件数としては、恐らく私立大の方が国公立大よりも多いように思いますが、最近では国公立大でもかなり尋ねられるようになりました。
本一冊とお思いでしょうが、一冊の本はそれに付随する内容、それを選んだ人の嗜好など、様々な要素を含んだ「本人の意識の代表」です。また、単に本の名前を挙げさせるだけではなく、その内容の紹介やどんな内容だったかの説明、それを読んだ感想を尋ねることもよくあります。本の話を相手に伝えることは、いわば自分に「名札」をぶら下げるようなものです。この質問への回答によって、「私はこういう人物です」という状態になる訳です。要は、どのようなことに価値をおいているかを尋ねているといえるでしょう。
実は、たったそれだけのことにも関わらず、上手く伝えられないことがあるようなのです。ある受験生は本の紹介をしながら、読んだ当時の感動を思い出しすぎて面接練習の最中に泣いてしまいました。感受性の強さは人一倍というところです。駄目とはいいきれませんが、しっかりと自分の言葉を選んで説明できてこその感動でしょう。別の受験生は、読んだ本の作者どころか書名も曖昧で、本当に読んだのかと逆に疑問を与える始末です。これでは、読んでいないも同然です。
特に高卒生にありがちな回答として、「この一年は読んでいません」と平気で言い放つケースには困りものです。必死で勉強してきたことをアピールすれば、本の一冊くらい読んでいなくても許される・・・とでも言いたげです。これではわざわざ質問する価値がなくなってしまいます。面接官がこの質問をすることの裏には、「誰でも本の一冊くらい読んでいるだろう」という思惑がある訳です。もしそれに「ゼロ」で回答するなら、「誰でもできていること」をしていない人もいるんだ、という名札を下げてもらうことになるのではないでしょうか。
「愛読書」を示させる質問は、企業の採用面接の質問では「思想・信条に触れる可能性がある」ということで訊かれることはありませんが、大学の面接質問ではギリギリの許容範囲で工夫して質問されているといえるでしょう。

「最近感動したこと」に見える社会性

「最近感動したことは何ですか」・・・面接試験で何気なく問われる質問ですが、結構その頻度は高いようです。もちろん、何に感動しようが正解はありませんね。とはいえ、数多くの受験生たちが多くの実例を残してくれています。
高校生活のエピソードはもっとも多く、クラブ活動の関係のことでお話になる人は比較的多い方です。例えば、優勝したことや受賞した経験、チームで一丸となって目標を達成したり、一体感を得たりしたことなども多いようです。文化祭や体育祭での話も比較的多い部類です。
留学経験のある人はその経験で得たものを挙げることもあります。また、そこまで特殊なものでなくとも、家族での身近な出来事や、これまでの講演などを聞いた時の内容など、どの話も社会に何らかの形でつながるものを挙げる人は多いようです。普通の人が「なるほど」と思えるものならば、もちろん問題はないでしょう。

ある大学で、合格最低点を上回りながら不合格になった受験生がいます。その時に恐らく彼が判断された決定打となったと思われる質問が、この「最近感動したことは何ですか」でした。
彼は即座に「ありません」と回答しました。これが受験生の回答でしょうか。20年近く人生を歩んできた人の答えなのでしょうか。この受験生は何かにつけて回答のやりとりに怪訝なことが多く、本当に人の話を聞いているのか、真剣に考える気があるのかと相手を不安にさせる人でした。
面接試験の練習をすると、面接官役の方の質問の言葉が閉じるかどうかというタイミングで、やや言葉がかぶり気味に回答しはじめる有様で、「高速回答マシーン」じゃあるまいし、本当に考えて話しているのか疑問を持ったものです。何度も注意しましたが、直らないのです。おそらく本番でも、「最近感動したことは何ですか」の「か」の字が終わるか終わらないかのタイミングで「ありません」と答えたに違いありません。いったん間をおいて考え、その後で「すみません、急なご質問で今思い至りません」と回答していれば、同じ「ありません」でも違った印象だったでしょう。
質問には答え方があります。「感動したものがない」ことが問題なのではなく、「考えようとする態度がないこと」が問題です。この種の質問はある意味、「回答スタンス」に社会性があるかどうかも見ているのでしょう。あらゆる質問にこの種の「高速回答マシーン」での答え方を続けたことが積もり積もって、彼がコミュニケーション能力や社会性に疑問ありと判断されたことは、しかたないといえるかもしれません。

「大学に入学後、どんなことがしたいか」

この質問もかなり頻繁にされています。「どんな学習がしたいか」という類似質問は「大学教育の教学内容」に限定されていますから、入学後のカリキュラムなどをよく知らないと回答できません。しかし、むしろ広く一般に入学後を指して、「大学に入学後・・・」と質問するケースが面接試験では大半です。
このパターンでは通常は学業以外のことを述べる人が多く、部活への関心、アルバイトなどの社会経験、ボランティアなどの社会貢献、語学習得などの広い意味での教養修得を挙げる人が多いようです。
留学を挙げる人がいますが、伝え方には注意が必要です。「国際的な活躍」がしたいという話を展開する人に多いのは、その「国際的な活躍」がなぜ必要か、本来的に自分の志望が何か、を具体的に考えていない人が多いからです。自分がしたい方向が定まっているなら、「国際的な活躍」や留学で得たいことを述べるのもいいでしょう。

「何に関心があるか」に「正解」はありません。ただし、この種の質問は、受験生に「日常の心構え」を表明させるものだと意識しておきたいところです。自分をどう捉えているか、自分の人間力をどのように向上させていこうとしているかの説明のために、上手く言葉を選びましょう。言葉を上手く選択して相手に自分を伝えることも、「人の能力」のうちの一つです。質問への回答内容だけではなく、説明力を試す方便として、この種の質問が使われているということもできるのです。
ほとんど熟考せず瞬時に「ありません」と回答した結果、社会性とコミュニケーション能力も「ありません」と判断をされているようでは、笑い話にもなりませんね。