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2022.3.4公開

「自分が医学部にこだわる理由」が見えないと、最後まで「がんばる」ことができない

長年指導していると、「志望理由」がしっかりしているかどうかが受験生のモチベーションや学習生活に致命的に重要になってくることをたくさん経験するのです。

早い学年の段階でやっておきたいこと

いつもは受験学年を意識したお話をしていますので、今回はそれよりも前の学年で医学部を目指す方が何を準備しておくとよいか考えてみます。受験学年までに時間があるうちに、準備しておいた方がよいこととはなんでしょうか。その理由とともに少し深掘りしてみましょう。

「医学部の志望理由」をじっくりと考えてみよう

医学部受験では面接試験が必須であることはご承知のことと思います。その時の想定質問の最も初歩は「志望理由」なのですが、これがなかなか難しいのです。そこで、受験まで時間がある高2学年から、まずはこれを時間をかけながら考えておくことをおすすめします。
そもそも、医学部以外のほとんどの受験に面接試験はありませんから、志望理由がないまま入学まで行く受験生の方がむしろ多いといえます。医学部以外の学生は卒業間近で就職が迫れば、必然的に「自分がやりたいこと」を中心に近い将来のことは考えるでしょうが、まさか大学入試の際に先々を見通している人は少ないでしょう。しかし、医学部受験生だけは受験時に面接試験があるため、その時にそれなりの回答を期待されてしまう特殊性があります。医学部は卒業後の進路が明確ですから、受験時にそれが求められるのでしょう。

ある時、大学の医学部で研究されている方と「医学部の志望理由」について一緒に考える機会がありました。その時のやり取りの中で、「医学部受験生の志望理由はもともとあるわけではない人が多い…」という話が出ました。志望理由や動機は「社会が自分に期待すること」を反映することで、はじめて「らしくなる」わけですが、受験生は社会との対話でようやく志望理由を「成り立たせつつある状態」にいる程度…決して「完成しているわけではない」という話になりました。しかし、そんな中から一部の受験生は、「自分がやりたいこと」より「社会が自分に期待すること」を回答にすべきだ、と敏感に感じとりながら、自分の「志望理由」を紡ぎ出しているようです。
そのためには、社会の中で自分の占める位置を感じ取る感性が必要です。しかし、若い方は社会の中で自分の立ち位置を考える経験はあまりないため、視点にリアリティがありません。とはいえ、それは仕方のないことです。そこで、自分に何ができるかを少しずつ考え、将来の自分にリアルに結びつける想像力を持つことで、少しずつ「志望理由」が形作られていくことになるでしょう。つまり「志望理由」を考えるためには、「社会の中の自分」を考える時間が必要だということです。

そこで、医学部を受験する方には、志望理由を「社会の中の自分」の視点から、高2学年から探しはじめることをおすすめします。ここで、私が多くの受験生にお伝えしている「探し方のヒント」をいくつかご紹介しておきましょう。

①自分の「モデル」になる人を探す
これは、すでに「社会で活躍している人」を探し、参考にする方法です。自分が真似したくなるような人をWEBなどで探してみて、「こういう経歴でここまで来られたのか」ということを知れば、将来の自分のビジョンが描き出されるでしょう。それをもとにして、将来の自分のキャリアプランにリアリティを持つことができるでしょう。

②関心のある研究や技術を探す
「人」ではなく、例えば「関心のある研究」や「関心のある医療技術」などを調べ、それが社会でどのように期待されているかを調べてみてもよいでしょう。日本の医療に、今何が不足しているのか、それに自分がどう関わることができるかなどを考えることが、将来の方向性へのモチベーションになるでしょう。

③時系列順に整理しながら自分の将来を考えてみる
以下、三つの時制で志望理由を整理してみます。
(過去)医学部を志望するきっかけになったことは何だったのか
(現在)そのきっかけから現在までモチベーションをなぜ持ち続けていられるのか
(未来)地域医療や特定の専攻医など、自分の将来のキャリアをどのように考えているか
自分の未来の姿を具体的に考えてみると、おぼろげながら自分の未来へのリアリティが持てるでしょうし、学習のモチベーションが上がるというものです。

こだわる理由がなければがんばれない

医学部は受験生に求める学力が高いため、一定のレベルを下回ると受験できる大学がありません。もしも医学部志望の人が「合格はギリギリだ」と学校の先生にいわれたら、きっと出願を迷うでしょう。そんなとき、受験生の心がポキリと折れて「学習」をがんばれなくなることがあります。いろいろ悩み、ふと気づくと、そんな自分でも薬学部や工学部なら、かなり上位の大学に「余裕で合格できる」ことに気付くからです。そんな時、医学部の「志望理由」が曖昧な人なら、一瞬で緊張感が切れ、医学部受験に向けた学習どころではなくなってしまうでしょう。
そのタイミングで志望学部を切りかえる人たちは少なくありません。日夜全力で学習している医学部受験生だったはずなのに、「志望理由」がしっかりしていないために「自分がこだわる理由」が見えず、最後まで「がんばる」ことさえできなくなってしまう人は多いのです。私のように医学部受験生の日常生活を長年指導していますと、「志望理由」がしっかりしているかどうかは、受験生のモチベーションや学習生活に致命的に重要になってくることをたくさん経験します。「学力が第一だから志望理由など後づけでもいい」という方もおられるようです。しかし、その学力をつけるための学習にギリギリの精神力で勝負を挑む多くの医学部受験生にとっては、その苦しさを乗り越えるための動機づけの方が、もっと大切なことのように思います。

過去問への取り組み姿勢

さて、高2学年まで進級しますと、受験のことを本格的に考える人が出はじめます。本人よりも、むしろ保護者の方の方がちょっと焦っておられることがありますね。そこで「過去問演習を早く始めた方がいいのか」とよく質問を受けます。一般論としては、何でも早くから取り組めばいいだろうと思いがちですが、こと受験に関しては時期が大切なことが多いので注意が必要です。

例えば「大学入学共通テスト」はどうでしょうか。まだはじまってわずか2年しか経っていないため、本物の過去問は2年分しかありません。私たち予備校が予想問題として作成したものがいくつかありますが、それでも無尽蔵にあるわけでありません。つまり、素材資源には限りがあるということです。
だったら、それをいつやれば有効かをよく考える必要があります。全く過去問を見たことがない状況は、受験生にとって不安なことはわかります。そんな不安さから、仮に学力がまだ不安定だったり、履修しきれていない範囲を含んでいたりするタイミングで過去問演習に取り組んだらどうなるでしょうか。
問題に取り組む「経験の満足度」は得られるでしょうが、恐らく自分の課題を見つけ出すための効果は出せないはずです。得点できなかったことを単に「学習が進んでいないから」と割り切ることは簡単ですが、結果的には近い将来に本当の学力調査のために使えたはずの道具を、自分の勇み足のためにパーにしてしてしまう行動だとも言えます。何せ「おかわり」の問題は資源に限界があるのです。
だとしたら、ある程度まではもっと基本的な学習を着実にこなし、過去問演習は先々までとっておくようにした方がよいのではないでしょうか。センター試験の時代にも、これと同じような話はありました。

「山口さん、僕ね、センター試験の過去問を10年分やってみたんです。」
「そうですか。できない自分を10回確認しただけということになりませんでしたか?」
「よくご存知で…。」
「ところで、直前期にはどうしますか?」
「そうなんです。手持ちの問題は全部やり尽くしてしまいまして…」

そもそも過去問は何のためにやるのでしょうか。これを10回やったところで学力はつきません。学力をつけるなら、もっといい方法があったはずです。「できない自分を10回確認する」ような過去問の使い方は避けたいものです。過去問演習は基本学習にプラスしてこそ、その価値を発揮するものです。

さて、基本を重視するというと、「やさしい問題に取り組め」ということだと勘違いする人が多いのですが、それは随分ニュアンスが違います。学習では、曖昧なことや不確実なことを明確な筋道で自分の中に定着させる訓練が必要ですし、問題よりも定理を把握し、多くの場面で使えるようになる力が必要です。また、速読や計算速度のアップなど、過去問演習以前に多岐にわたる訓練が必要です。
スポーツでいえば、筋トレや走り込みなどの基本ができていなくては試合に出ても好成績が出せるはずがないのに、やたら練習試合をさせろというようなものでしょう。自分は人とは違うというプライドが、受験を破滅させてしまう人をたくさんみてきましたから、もっと謙虚に学習に臨みたいものです。

学習時間について思うこと

夏休みに「丸一日」学習できる日を、何日ももらえると仮定しましょう。クラブ活動にも行かなくてもよい、すべてを自由に学習に使える正味の「丸一日」ですよ。さて、私が皆さんに次のように尋ねたらどのように思われますか…。

「夏休みは、一日10時間学習しなさい」

…さて、皆さんは瞬時、率直にどう思いましたか?

「そりゃ、そうですよね」と即座に思った方は、それでOKです。特に問題ありません。

「10時間もやるの?」と思った方は、自分の能力を発揮するための「訓練」が足りません。

皆さんはもっとできる人のはずですが、自分を過小評価しすぎています。本当はできるはずですが、単に経験がないか訓練が足りないために、自分にできる気がしないだけです。

では、「10時間では足りないだろう」と思った方は、やる気のある方といえるでしょうか。

いえ、私は要注意だと思います。なぜなら、恐らく実際には「一日10時間学習」を一度もやったことがないのに、そう思ったに違いないからです。もし一度でも「一日10時間学習」を経験したことがあれば、一日にこれ以上学習時間を増やせないことは、体感しているはず…だからです。
学習に対する「謙虚さ」を持ちたいところです。「人を上回りたい」という気持ちが向上心のうちはよいのですが、変にプライドだけが高くなってしまうと、やたら身の丈に合わない学習を重ね、自分を潰してしまいかねない危険さえあります。

…今、高1学年の方は、次年度は以上の心構えを徐々に進めていきましょう。一方、高2学年の方はあと二カ月もしたら高3学年に進級しますね。そこで、次回、「高3生になったら意識すべきこと」にこのコンテンツを続けて連載します。