河合塾グループ河合塾
学年と地域を選択
設定

学年と地域を選択すると、必要な情報がすぐに見つかる

塾生ですか?

はい
いいえ
  1. 河合塾
  2. 受験情報
  3. 医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>
  4. 知っ得!医学部合格の処方箋
  5. 知っ得!医学部合格の処方箋 意識していますか?~心がけ編~
  6. 現役生には現役生の戦い方がある

現役生には現役生の戦い方がある 知っ得!医学部合格の処方箋 意識していますか?~心がけ編~ | 知っ得!医学部合格の処方箋 | 医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>

2021.5.6公開

断片的な時間を、いかにつなげて有効に活用できるかを考えました。

このお話はみなさんにとって、「転ばぬ先の杖」となりますでしょうか、それとも「後悔先に立たず」の実例となるでしょうか。

●現役生と浪人生の違いとは

高3生はいよいよ入試に臨む学年です。当然、「高卒生(浪人生)」という新しいライバルが同時に受験することを意識するようになるでしょう。高1生や高2生の時には同学年の人しかいなかったことに比べると、受験に臨む高3生になると同学年の人だけではなく、自分たちより学年が上の高卒(浪人)学年の人とも学力勝負しなければならなくなるわけですから、その学力差が急に気になりはじめるのではないでしょうか。
特に医学部受験では、他の学部志望者に比較して現役合格の難度が高まり、高卒生が翌年残っている割合は比較的多いといえます。前年からの継続受験組をたくさん抱えていることを考えれば、現役高3生はこれまでより学習に緊張度が増すことでしょう。高卒生が自分たちを比べて「一周多く」受験経験と演習を積んでいるなら、学力勝負で「果たして勝ち目があるのか」と現役生が不安になることも理解できます。
ただし、高卒生といっても、いろんな人がいます。「一周多く」学習しているといっても、彼ら高卒生の学習内容をみますと、昨年の段階では「合格まで学力が全く足りなかった」から今年積み上げている…という場合もありますし、昨年の段階では本当に惜しかったので、「あと少しの学力を確実にするため」という場合もあるでしょう。われわれは予備校でどちらのタイプの生徒にも出会います。前者のタイプなら、現役生の学習スケジュールとあまり変わらないでしょうから、さほど恐くありません。現役生が恐れているのは、後者のタイプの高学力型の高卒生のはずです。
同じ「1年間」で、スタートラインが「あと少しで合格」だった高卒生と「まだ学力構築中」の現役生が勝負すれば、「普通」に考えて現役生が不利なのは自明のことです。現役生が焦るのは無理からぬところですね。だったら、それを解消するために現役生は発想を転換して、「普通」を脱却した方法で、できるだけ高卒生との条件の差が縮小される方法をとらなくてはなりません。
問題はそれを「どうすればよいか」です。そこで、あくまで一つのご提案として比較的単純な方法をエピソードとともにご紹介してみましょう。

●時間の資源を有効活用する

ある年のこと、大阪大学の医学部に現役合格した先輩から、今年の受験生に向けて体験談を語ってもらうイベントを実施しました。その学生さんは高1生の頃から河合塾に来ておられた方で、3年間の成長を私も拝見してきました。彼女は大きく二つのことを印象深く後輩に伝えてくれたのですが、まずはそのうちの一つをご紹介しましょう。彼女は後輩たちに語りかけます。

「皆さんは、朝、学校についた時の始業前や授業の空いた時間、家に帰ってからの時間をどう過ごしておられるでしょうか」

学校への到着時間…多くの人はせいぜい15分前くらいの到着でしょうから、授業前の準備を整えている程度に違いありませんね。授業と授業の合間や電車移動の時、予備校に通っている人でも、到着してから授業前の時間は15分から20分程度はあるでしょうが、次に何かをするための緩急も必要ですから、ゆったりと過ごしている人は多いはずです。ところが、彼女は後輩たちにこういったのです。

「多くの方は時間がない…といつもいっているけれども、実は時間なんて探せばいくらでもあるんです。ただ、長い時間でつながっていないだけ。だったら、そういう隙間時間をどれだけつなげて自分の使える時間に変換するかです。時間がないと言い続けている人は、結局、自分の周りにある数多くの時間の資源を、自分の都合で切り捨てているだけなんです。私はそういう断片的な時間を、いかにつなげて有効に活用できるかを考えました。学習方法の何が他の人と違うかといわれれば、それだけのことなんです。」

学校に15分前に到着することが「生活習慣」になってしまっている人は、その習慣を変えることからスタートです。例えば、あと15分早起きして、30分前に学校に到着できるようになれば、授業開始前に一教科の予習程度はできることになります。15分だから切り捨てていたことが、30分になることで「活用しよう」という気持ちになることができる一例ですね。
通学や通塾の時間だって同じです。最近の電車内の風景を思い出してみると、大半の人がスマホの画面を見ており、本を読んでいる人を見かけなくなりました。みなさん、スマホでSNSをチェックしたり、ゲームをしたり、何かのニュースを読んだりしているようです。それも大切な息抜きなのでしょうが、受験生にとってこういう時間の過ごし方でいいのかが問題です。私は実にもったいないことだと思います。どうせなら、リスニング教材を活用したり、学習アプリを触ったりすれば、授業の理解度はかなり変わるのではないかと思うのです。ましてや、多少はテキストを広げて予習することも出来るでしょうし、そこまでしなくとも、昔から通学時間が暗記ものなどに最適なことは、過去の受験生の経験からも証明済です。
スマホの普及による生活習慣の変化で、知らず知らずのうちに失われてきた時間の資源が、こういうところにも転がっています。このOBのアドバイスは、そんな気づきを与えてくれるように思うのです。現役生は限られた時間の資源を有効に活用することで、高卒生の学習に匹敵する効果を生み出さなくてはなりません。そのために「わずか15分を使おう」という心構えと、「短時間で最大集中力に持っていく」ための訓練を、生活習慣の中に培わなければならないでしょう。

●他人のアドバイスは「転ばぬ先の杖」

先のOBはもう一つのアドバイスをくれました。

「みなさんは他人からもらうアドバイスを、どんな気持ちで聞いていますか。」

多くの人は「自分がこだわっている学習方法」を無意識に持っており、他人のアドバイスのうち、それに合うものだけを取捨選択して聞くクセのようなものがあります。つまり、ほとんどの人は、他人の話を「自分の聞きたいように聞く」フィルタのようなものを持っています。自分の判断や行動を絶対視することが無意識に行われ、「これは自分のやり方に合うから聞こう」「これは何か違うから聞き流そう」という取捨選択、いわゆる選択的透過が無意識に行われているのです。
すると、「いいアドバイスをもらっているな」と客観的に見えることでも、なぜか実行されることがありません。受験に限ったことではないのでしょうが、私の指導経験からいって、多くの人は「困らなければ耳を傾けない」もののようです。

彼女はそういうことが人の常だと知っているのでしょう、こう続けて話します。

「私は、どんな人のいうことにも何か学ぶことがあるかもしれない、と思って話を聞くことにしていました」

ある生徒と面談した時のこと、「数学の試験の時、後で考えたらわかることが時間がかかってしまう」という生徒に、「その日の授業内容はその日のうちに復習するように」と私はアドバイスしたことがあります。しかし、「数学の復習は週末にまとめてやることにしている」というその生徒は習慣を改めません。もちろん、数学の成績は学習している割にいつまでも上がらないままです。その時、人の習慣を改めさせることほど難しいことはない、と思ったものです。
ところが、彼はある日「思いつく」わけです。なぜ試験の時にできないのか、そうか復習方法がよくないからか、やはり授業の後にすぐに復習する方がいいか。なるほど…、じゃあ、やってみよう。

「山口さん、僕ね、新しい発見をしたんです。数学の授業があったら、その日のうちにすぐに復習すると、試験の時に解けるようになるんですよ。」
「そうですか、新しい発見…ですね。ただね、忘れているかもしれませんが、そのことは半年前に私が伝えましたよ。」

失敗を繰り返してようやく他人のアドバイスの真意にたどり着く…こういう人はつくづく損で、いかに素直な人が得かがわかります。先のOBのアドバイスは、言い換えれば「素直は得」だといっているのですね。わざわざこけてから立ち上がらなくても、自分で防御できることを示しているのです。
人が行動するとき、「転ばぬ先の杖」にするか、「後悔先に立たず」としてこけてからのスタートにするかの二つの方法があります。前者は現役生にとって理想的な方法のはずです。それは、多くの人のアドバイスを謙虚に聞いて、状況に応じて自分の行動をよりよい方法に「置き換え」ていく生き方です。一方、後者は失敗してはじめて、自分の行動を改めようとする生き方です。
そう考えれば、先にお伝えした OBのお話は、たいへん的を射たアドバイスだといえるでしょう。「転ばぬ先の杖」として行動する人は現役合格にそっていますが、「後悔先に立たず」の行動ばかりが目立つ人は、結局浪人してしまう可能性が高いといえます。何のことはない、現役合格できるかどうかは、学力というよりむしろ日常の行動や考え方そのものが直結しているといえるのです。

さて、このお話はみなさんにとって、「転ばぬ先の杖」となりますでしょうか、それとも「後悔先に立たず」の実例となるでしょうか。それは皆さんの行動しだいなのだと思います。