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2020.7.1公開

保護者の皆さん、名ディレクターになれますか?

受験生自身が今やっていることは一般論としてそれでいいかどうか、助言を受ける機会を親が用意しましょう

新しい自分を見つける

私が高校で講演をする時、「ながら学習」をやめるようにという話をよくします。集中力を高めるため、飲食したり音楽を聞いたりし「ながら学習」することをやめるようにという内容です。「カフェ勉は落ち勉」という以前の原稿も、これと似たことを指しています。カフェにいるのと同じようなゆったりした「ながら学習」はのんびりした学習ですから、集中力に影響するわけです。
さて、講演後にはアンケートをお願いするのですが、以前から自由記述欄に「カフェではないが、リビングで学習しているのはダメでしょうか」というものがチラホラ混じっており、よく似たシチュエーションで学習している人が多いのが不思議な感じがしていました。ある時、保護者講演の終了後にこれと似た質問を口頭でされた保護者の方がおられ、「どういった経緯で子供がリビングで勉強するようになったのか」を尋ねました。すると、その方のお答えは予想しなかった面白いものでした。いわく、「小学校の頃に通っていた塾では、保護者の目の届くところで学習状況を見ておいた方がよい」というアドバイスを受け、そこからそうなって今に至る…ということでした。ようやく謎が解けて、「なるほど」と思ったものです。これまで同じ質問をなさった方も、おそらくこれとよく似たことが発端でそのようになられたのだろうと推量できます。
その保護者の方に言わせれば、
「高校生の今はかなり“かさ”が高くなっているので、ちょっと邪魔かなと思ってたんです。リビングを占領されるとテレビも見られないし…。今日の話で“ながら学習がよくない”と言っていただいたので、これを機会に自室にいくように話せるきっかけになりました」
ということでした。
この話だけを聞くと、別に講演をきっかけにしなくても変えたければ変えればいいじゃないかと思う方も多いでしょう。ところが、この方のお子さんのように小学校時代からしていることは無自覚になっていることがあり、人間の中に刻まれている慣習はなかなか取り除くことができないのです。しかし、より大きな一歩を踏み出すために、受験生は保護者以外の目線で新しい価値観を発見する必要があるはずです。そのために保護者は受験生となった子供を丸抱えにしないことが必要です。
受験生として子供本人が、自分が今やっていることは一般論としてそれでいいかどうかを考えさせること、それは多くの方のアドバイスに耳を傾けさせることから生まれるものに違いありません。今年の春に大阪大学の医学部に合格したある受験生は、「どんな人がいうことにも学ぶべきものが何かある。そう思ってお話は聞くようにしていました」といっていたことはとても印象的でした。
受験生本人が多くの方のアドバイスに触れられるようにすることは大切です。子供時代から長く接していると、多くの保護者は「自分が教えないといけない」という思いを持ちすぎる傾向があり、そのことによって世の中には多様な考え方があり、多くの行動の価値観があることを知る道をふさぐことにも繋がります。友人を増やし、先輩を増やし、よき指導者を増やし、多くのチャンネルで行動変容のきっかけを子供に与えることが、年齢的には受験期の保護者に求められるのではないでしょうか。また、受験生本人も新しい価値観に触れるように一歩踏み出すことが必要な時期になっていると考えてほしいものです。

過去のトラウマを乗り越えて

ある日のこと、お一人のお母様が校舎の窓口を尋ねて来られました。
「娘が医学部志望なんですが、昨年通学していた予備校がちょっと合わなくて、河合塾でやり直そうと考えているんです。」
「そうですか、それは大変でしたね。」
「えぇ。ところで、娘は今年が“四浪め”でしてね、それでも合格できるでしょうか。」
「まずはご本人にいろいろと確認したいことがあるので、明日よければご同伴ください」
お母様には一通りのご説明したものの、内心では「四浪の娘さんとはどんな方なのだろうなぁ」と少し気がかりでした。決めつけはよくないのですが、経験的に男女問わず4浪くらいまで学習歴を重ねる方は、自分を見直すことが苦手の頑固なタイプであることが多く、学力以外の自己マネジメントができていない人が多いからです。おそらく「自分」という芯があってなかなか気合の入った人でしょうから、しっかりと受験生としての心構えをお伝えしてから河合塾での学習をしていただこうと翌日のお話の方向性を整理して、ご本人の来訪をお待ちすることにしたのです。
さて、翌日のこと件のお母様に連れられてご本人が来られました。
「この子なんです。よろしくお願いします。」
「こんにちは、よろしくお願いします。」

と娘さんとはじめてお会いしましたが、私はちょっとあっけに取られてしまいました。そこにいたのは、受験生のイメージとは程遠い、屈託なくにこやかに笑う二十歳代前半の女性…母の話を聞いていなければ、まるでモデルさんかなんかではないのかと間違ってしまいそうな女性が立っていたのです。

「あなたが…本人なの? 失礼ながら、私は四浪の人だと聞いてどんな方が来られるかと覚悟していましたけど、なんだか拍子抜けしてしまいました。本当に受験生なの?」

さて、話をしてみると頑固なわけではなく、非常に普通の方です。年代相応のコミュニケーション力があり、話せば話すほど本当に四浪の受験生なのかと信じがたいものがありました。しかし、これまでの学習歴を尋ねてみたところ、ちょっと変わった履歴であることがわかったのです。

実は、小学校の頃のご本人はとても勉強が好きで成績がよく、結果として地元の公立中学ではなく「中高一貫国立大付属の中学部」に進学したことが分かりました。しかし、中学部から高校部に進級する際、大学受験を見越して、より進学率の高い高校に進もうと考えたらしいのです。中学から高校への内部進学を辞退し、いわゆる「外部受験」をしたそうです。ところが、高校入試で不合格となり、同時に内部進学辞退で所属していた中高一貫校の高校部へも進めなくなってしまった結果、予想もしなかった私立高校への転出という道を進むことになったようでした。転出先として絶対に合格しなくてはならないことで、安全重視で受験したその高校では、生徒たちが難関大学進学を目指す人はいないという状況だったのです。そんな中にいて、彼女は自分自身のアイデンティティを失っていったのでしょう。当然、これらのマネジメントを本人だけでできるはずはなく、お母様の方がそのことを気にしておられるように感じました。
この人は、本当に医学部に進学したいのだろうか…まず私がこの女性にこの履歴を聞いてはじめに感じたのはそこです。「とりあえず医学部」「とりあえず難関大」というのがピッタリのように思います。「医学部」は本人が自分を取り戻すための象徴かもしれない。だったら、結論を出すのに誰かが付き合わないといつまでもいってしまいそうな気がしました。
さて、そこから彼女を1年お預かりし、受験(と自分のアイデンティティ確立)に向けてご指導することにしました。結論からいうと、彼女は結局医学部の受験はしていません。最終は自分で納得の上で薬学部に進学しました。それは、成績がなかったからではなく、年度の途中から志望を薬学部に変更したのです。自分の人生を考えた時、その生き方の先に医学部はなかったというのが結論です。

お子さん本人が自分の過去に決着をつけることは重要なことです。本来は保護者がそれをするのが普通でしょうが、保護者の側に、彼女の例のように「うまくマネジメントできなかった自分が悪かった」という妙な負い目があると、手を差しのべる機会を失うこともあるのです。
意外にも過去のことは「過去のこと」なのではなく、今の何かにリアルにつながることです。医学部受験を目指す生徒の場合、この彼女のように面談で過去までさかのぼって学習歴を尋ねることは多いのですが、そこで何かの躓きがあった生徒は多く、そのことが現在の彼らのスタンスに影響していることは少なくありません。
私の経験では中学受験の失敗は大きいようです。受験のために小学校の3年生や4年生から友人と遊ぶことも我慢してきた…その上で中学受験したのに失敗し、子供時代の時間を失い、その成果も得られなかった12歳の子供の心情は想像できます。保護者に悪気がなくても結果が出なかったことに「残念だった」という一言のつぶやきは、子供の脳裏に6年以上焼き付いて離れません。日々のつぶやきで「あの時に合格できていたら」と10回言えば、彼らの心を10回つぶすと保護者は想像できるでしょうか。

面談の際、そういったことを思い出して、私の目の前で泣き崩れる18歳の彼らを何人も見てきたのです。彼らは共通して「親は自分のこんな気持ちは知らないと思う」と私にいいます。決して過去のことは「過去のこと」ではないのです。これは、彼らがフタをして自分自身に隠そうとしていた爆弾です。

保護者はディレクションする役割

しかし、この爆弾はいつまでも危険な訳ではありません。自分のそういう思いがあったことを誰かが知ってくれたことで、彼らの爆弾は信管がはずれるようなのです。誰が外すかといえば、それは保護者よりも私たちなのだろうと思います。彼らはその後新しいスタートを切り、よい受験結果を残すことが多いように思います。当面の間、予備校の爆弾処理班はフル稼働のようですね。
成績状況や出席状況は確かに保護者の方に管理しておいてほしいことです。しかし、子供に助言が必要だと思ったら、保護者の方はご自身がすべきか他の誰かに委ねるべきかの判断が必要です。他の誰かに助言を求めるならば、子供の自主性に委ねるだけではなく「〇〇先生に訊いてみたらどう?」などのディレクションならできるに違いありません。信頼できる方は、より多くの助言でお子さんを導いてくれるに違いありません。
手取り足取りの直接の指導から、名ディレクターになること…。この年代のお子さんをお持ちの保護者の方に求められるのは、こういった付かず離れずの役割なのではないでしょうか。