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予備校は「急がば回れ」の地

受験生には自分を客観視する謙虚さが必要・・・京大農学部から医学部を再受験した彼女の結末は?

受験生は自分のやるべきことを自分で考えられるか

受験生が自分のやるべきことの優先順位を自分で認識できるかどうかは、その人の性格によって少し幅があるようです。多くの方は謙虚な「いい人」ですから、きっちりとした環境の中でやるべきことをやろうとします。しかし、私のこれまでの指導経験では、性格によっては自分の実像の把握を困難にするタイプの人もいるようです。
本人にあまり自覚がないようですが、自分のレベルを高く評価されたいという欲目がある人や、友人と比較して「下は嫌だ」という体面のようなものを気にしすぎる人は冷静な判断の目が曇るといえます。また、物事の優先順位をやるべきことかどうかで冷静に判断するより、「楽しいかどうか」を重視して決める傾向の人も、注意が必要です。
いずれのタイプも、自分のやるべきことを客観的に把握しようという謙虚な気持ちが欠けてしまい、結果的に冷静な決定と行動を難しくしてしまいます。常に客観的かつ論理的に自分を見つめたいものですね。

かつて、生徒指導の中で受験生が自分のするべきことを自覚することがいかに難しいことかを経験した、ある出来事をご紹介します。それは、「土曜日の特別指導」を用意したある高卒生コースでの経緯です。
そのコースでは、英語・数学・理科の各科目の中から、自分の弱点科目を2つまで土曜日に選択して指導時間をもらえるというものでした。
彼らは恐らく「成績の下位2科目」を積極的に選択するだろういう目論見でしたから、我々としては面白い試みだと自負がありました。ところが、実際に彼らの選択した科目を並べてみると予想外の結果となりました。テストの成績と彼らの選択科目を見比べると、なんとほとんどの生徒の選択科目は「成績下位2科目」と一致しなかったのです。成績を伸ばすことをシビアに捉えれば、指導者側は成績が低い科目をアップさせるという当たり前の選択を考えます。
しかし、彼らに自主的に選択させたところ、科目選択のポイントは違うところにありました。彼らは「学習していないからできないのはOK」であって、「学習しているつもりだが予想ほど伸びていないものはNG」という感覚を持っていたのです。そうなると、「学習していないから成績の低い物理」よりも、成績が高くとも「学習しているんだからもっと伸びていてほしい化学」を選択することもあるわけです。成績の伸びない数学よりも、やっていておもしろい英語を選択することもありましたから、これでは「弱点強化」の「土曜特別指導」が、ただの学習クラブに陥ってしまいかねない事態でした。
最終的にはこちらで弱点科目を1つは含む状態に修正して指導したのですが、受験生に自主的にやるべきことを自由選択させることは、きわめて危険性が高いことが明確になった「事件」でした。受験生が自分のやるべきことを自分で選択するには、自分を客観視する謙虚さが必要です。しかし、それに自信がないなら、客観的に指示してくれる指導者がいる方がよい結果につながるということです。

予備校の教材の上下レベル

多くの予備校の高卒クラスでは、成績に合わせてクラスを分け、教材レベルを変えていることが多いのではないでしょうか。河合塾でももちろん、そうしています。世間一般で考えても、学力レベルと教材をフィットさせた方がいいことは想像できるはずです。
一般的にはテストを行い、その結果をもってテキストレベル(授業レベル)を決定するようにしています。しかし、一部の生徒はそのレベル編成に自分の感覚で異論を唱えて窓口に話をしに来るケースが、年度当初は相当あります。
彼らに言わせれば「本当はあの問題はできたんですが、ちょっと間違って・・・。後から解答を見たら理解できたから、自分の本当の成績はもうちょっと上」なのだそうです。しかし、その時に「ちょっと間違って」いなかった生徒たちが多数いる現実がありますし、彼はその時に「ちょっと間違って」しまう程度の学力だということですから、下位のテキスト相当であることを理解させてあげなくてはなりません。
そこで河合塾の窓口では、年度のはじめに「そもそも学力というのは・・・」という説明を、窓口に来る一人ひとりに延々としていくことになります。年度当初の恒例行事のようなもので、一人ひとりの納得感を得られるように丁寧に説明してあげなければなりません。皆、不安なのですから仕方がないことです。地味ですが、一人ひとりに丁寧に説明して理解を促すことは、1年のスタート時点において非常に重要な仕事です。

「急がば回れ」

1年のスタートがようやく切れたら、後は日常の学習あるのみですね。4月後半頃にははじめの面談がスタートしますが、何人かと話をしていると、先ほどの「窓口組」とは逆に本当はこの人はもっと学力が上ではないのか、テキストは一つ上のレベルの方がよいのではないかと思わせる人も出てきます。それでも、本人が「上位のテキストでギリギリでついていくよりも、一つ下のテキストで余裕を持って学習できる方がよい」というので、そのままにしておくケースもかなりあります。3週間くらい授業を受けてみると、講師との間合いがある程度出来てきて質問も行きやすくなり、その段階で授業を変えたくないという気持ちもあるから、なおのことでしょう。

私が京都校にいた時代にご指導した、ある女性のお話をしましょう。その方は高卒コースに入ってこられたのですが、面談で話をしていると、学力も高そうなのになぜかテストの結果はあまり出ず、数学は2番目のテキストでした。色々お聞きしていると、この方は京都大学の農学部に在籍する4年生で、受験勉強していたのが4年も前なので「数学の基本がちょっと抜けているみたい」だといっていました。
ここは無理をしない方がよいという本人の判断でもあり、私もそれを推奨してそのままで授業を継続してもらうことにしました。判断に間違いはなかったことは、12月の模試に学習成果が現れたことによって証明されたといえます。
ちなみに彼女は教育実習に行くということで、秋口に2週間以上高校で教壇に立っており、その間の受験勉強は少しお留守になっているような状況でした。しかし、結果として彼女はその後で京都大学を卒業し、同時に医学部にちゃんと合格して再入学しています。教材のレベルをしっかり見極めた成果だといえるでしょう。
さて、ということは・・・そう、彼女は自分が秋の教育実習に教えた生徒と一緒に医学部の受験をし、その生徒と同級生になるということになったのです。なんだか微笑ましいエピソードですね。

学力を上げるためにはテキストレベルを無理せず見極めることを生徒たちに伝える時、「急がば回れ」という言い回しをよくしますが、これは「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」という歌の一部だということをご存じの方も多いでしょう。彼女を指導した河合塾京都校からさほど遠くない、滋賀県瀬田にある橋のことです。京の都に上る時、琵琶湖の対岸が見えているからといって、矢橋(やばせ)から近道してやろうと船で渡っても、途中で風が強くなって転覆することだってある・・・本当に思った通りの時間に着きたければ、遠回りに見えても湖の縁を回って瀬田の長橋を渡った方が結局は早くて確実だ・・・ということです。
現在では矢橋にほど近いところに近江大橋がかかったのは皮肉ですが、瀬田の長橋(唐橋)は今もあります。いつも車でそこを通る時、「回り道をすることによってかえって近道につながった」彼女のことを思い出します。

受験生には、近視眼的にならずに自分を謙虚に見つめた彼女のように、冷静な判断をしてほしいですし、冷静な学習で受験を成功に結びつけてほしいと願ってやみません。予備校は現代の瀬田の長橋なのです。