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2023.3.1更新

4年前と今の「医学部難度」の変化は「ましになった」というのが適切

中堅レベルの医学部の「偏差値65.0」は、数字だけなら京都大学工学部の偏差値と同じ。合格をめざし、あとひと頑張りです。

大学の難度とは何だろうか

「難度」もしくは「難易度」という言葉は当たり前のように使われていますが、そもそもどんな定義で使っているかは人によってまちまちです。ある人が「この大学は難度が高い」と表現する時、「受験する人の学力レベルが高い」というニュアンスで使うことがあるでしょうし、「出題される問題そのもののレベルが高い」という場合もあるしょう。また、問題レベルは高くなくとも、「解答に与えられる時間と問題数の分量バランスが悪い」ために解ききれない場合も「難度か高い」と表現されるでしょう。
「難度」という言葉は、多様なニュアンスをたった一つの表現で表そうとするところに、様々な誤解が生じるものです。そこで本稿では、キッパリと「合格する人の学力レベル(偏差値)」に焦点を絞って「難度」と表現し、これを検証することにします。

2019 VS 2023 4年前と今の「医学部難度」の変化

まずはビジュアル的にわかりやすい資料をみていただきましょう。下の<表1>は「2019年国公立大前期医学科入試結果の難度マトリクス」、<表2>はその「2023年度予想」のものです。因みに2023年度の方を「予想」としているのは、今年度の入試結果分析がまだ終了していないためです。
さて、この2つの表は縦軸の上下の位置がセンター試験もしくは共通テストの「ボーダー得点率」を示し、横軸の左右の位置が二次試験の偏差値になっています。ということは、いわゆる「難度が高い」大学は「上の方」かつ「右の方」に位置していることになります。それに続く大学は、当然そこから「下の方」かつ「左の方」に向かって並んでいくように位置するでしょう。つまり、一番「左下」が最も「難度が低い」ということになります。
ちなみに、縦軸の「ボーダー得点率」は、「受験すると合格可能性が50%になる得点率」ということを示しています。いわば、河合塾が勝負ポイントとして示した得点率のことです。この2表を比較すると、この4年で縦軸の位置がずいぶん下降していることがわかります。また、この縦軸は2019年の表のものが「センター試験」、2022年のものが「共通テスト」になっていますから、この二つのテストの特徴も示しているともいえるでしょう。

<表1>

2019 VS 2023 4年前と今の「医学部難度」の変化 2019 VS 2023 4年前と今の「医学部難度」の変化

<表2>

2019 VS 2023 4年前と今の「医学部難度」の変化 2019 VS 2023 4年前と今の「医学部難度」の変化

センター試験も共通テストも平均点状況によって「得点の価値」が変わります。2つの表の年度での7科目理系型の平均点は、2019年が「571点/900点満点」、2023年は「548点/900点満点」(河合塾推定値)でしたから、2023年は23点(得点率で2.6%)も平均点が下がっていることになります。普通に考えれば、それに応じてボーダー得点率は下降するに決まっていますから、縦軸の上下位置が「下降した」からといって、医学科の難度が易化したとは、単純にはいい難いでしょう。
この2表の縦軸レベルが違うことは、あくまで「共通テストがセンター試験に比べて高得点が取りにくくなっている」ことが原因として大きく働いているといえます。ですから、「医学部が易化している」かどうかは、別の観点からもう少し調べてみましょう。

では、どうすれば難度の差を見られるのかといえば、ここは「偏差値」を使うのが一般的です。つまり、この2つの表でいえば、横軸の位置がどう変化したかに注目すればよいことになります。因みに河合塾で二次ランク(偏差値)を設定する場合、2.5ごとのピッチで集計をかけるのがお約束です。二次ランク(偏差値)の意味は先ほどの共通テスト(センター試験)のボーダー得点率と似ており、「この偏差値の成績で受験した場合、合格率が50%になる偏差値」を二次ランクと呼んでいます。
では、この2表の二次ランク(偏差値)の位置がどうなっているかを見て見ましょう。国公立大の医学科前期の大学は全部で「49大学」ありますが、横軸の二次ランク(偏差値)ごとに大学数をカウントしてみると、以下のようになります。

<ランク偏差値> <2023年度(予想)> <2019年度(実態)>
 【72.5】      2大学          2大学
 【70.0】      2大学          3大学
 【67.5】      7大学         14大学
 【65.0】      20大学          24大学
 【62.5】      17大学          6大学
 【ランクなし】   1大学         該当なし
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
 【合計】      49大学         49大学
(※2023年度の弘前大は総合問題のためランクを設定せず)

一見して分かるとおり、明らかに中堅レベルの大学の二次偏差値が67.5から65.0へと変化し、62.5の大学数もかなり増加していることがわかります。しかし、油断することはできません。上位の大学はまだまだ難度を保ったままで、旧帝大や首都圏、近畿圏の大学はまだまだ難度の高い大学が残っています。
また、中堅レベルといいながら、「偏差値65.0」は数字だけなら京都大学の工学部のランク偏差値と同じですから、別に取り立てて「易化している」というほどのことにはならないでしょう。せいぜい「ましになった」という程度です。

油断のない受験プロの指導力

医学部受験で注意しなくてはならないことは、医学部のみ試験問題が差し替えされていることが多々あるということです。「○○医科大学」のような名称の単科の医学部は、他学部の試験に問題を共有する必要がなく医学科のみの単独問題を作成することになりますので、比較的問題難度は高くなりがちです。多くの受験生は、そういった大学ならば多少心構えをして出願するに違いありません。
ところが、一部の大学、例えば富山大学では英語は医学部のみ専用の問題を使う…、福井大学では英語と数学と化学と生物は医学部専用の問題で、物理は工学部と共通問題にする…など、一見総合大学のような名称の大学にもかかわらず、問題の一部が別扱いになっている場合があるのです。もっとも、富山大はもともと富山医科薬科大学、福井大ももともとは福井医科大学でしたから、その流れを汲んでいるといえなくもないでしょうね。
問題の難度が上がれば、多くの場合には合格に求められる得点率も変わります。例えば、京都府立医科大学など、おそらく合格最低点は二次試験の満点に対してせいぜい5割程度だと思われます。問題の難度が高くなれば、一般的には合格最低点も低くなる傾向があるのです。ところが、それも大学によりけりです。大阪大学はいわゆる総合大学で、工学部も理学部も医学部も同じ問題を使います。その割に問題難度はやや高めです。そんな出題ですが、大阪大学の医学部に合格するには、二次試験の得点率は7割を超えるレベルが必要です。
つまり、大学によって必要とされる二次試験の得点が違ってきます。ランク偏差値は「模試」という共通の問題を解くことによって生み出されたものです。実際の受験では、大学の問題でどれくらい得点できるかは受験生の学習状況によって差が出ますし、それこそ大学ごとの「問題難度」によって変わるでしょう。近畿圏の大学で具体的に表現すると、難問で7割を超えるなら京都大、やや難度が高めで7割を越えられるなら大阪大、標準的な問題でなんとかで8割に達するなら大阪公立大、難問で5割程度なら京都府立医科大…というように、受験生の個性に合わせて過去問の出来具合と先ほどの難度マトリクスを組み合わせて受験大学を決定することになるでしょう。

医学部入試では定員減少や入試科目の変更など年度ごとの変更点もかなりありますから、受験大学選択は非常に複雑です。「予備校の実力」はこういうことを常に研究し、目の前の生徒の個性に合わせてどう指導していくかにはっきりと現れるものです。そこで、河合塾では近畿地区医学科進学情報センターで常に入試情報を分析し、全国に共有することで医学部入試の指導力を全国的に高めています。
あまり表に出ていないことなのですが、河合塾の近畿地区校舎に在籍する医学部志望塾生の成績は、校舎の担当者だけでなく、医進センター長として私も全員目を通し、検討しています。医学部志望の塾生はそれこそ何百人もおられますが、どの科目の強化が必要か、出願大学の候補はどうするか、一人ひとり検討しているのです。

すでにお伝えしたとおり、医学科入試の難度はせいぜい「ましになった」程度で、受験生はむしろ増加しつつあり、沈静化する方向にはしばらくは向かいそうにもありません。当面は私も受験生の皆様の合格を目指し、あとひと頑張りしなくてはならないようですね。