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大学入学共通テストの初実施はどうだったのか 知っ得!医学部合格の処方箋 知っていますか?~知識編~ | 知っ得!医学部合格の処方箋 | 医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>

2021.4.9公開

●目まぐるしく変わった実施方針

2021年1月、「大学入試センター試験」の後継となる「大学入学共通テスト」が初実施されました。とにかく今回のこの実施までの間、様々な紆余曲折があったことは多くの方がご存知のことでしょう。目玉となった英語試験の変更では民間の英語テストを導入する予定だったのですが、残念ながら実現には至りませんでした。結果として共通テストの英語は、配点が変更されたこと、発音やアクセントの単独問題がなくなったこと、リスニングの難度がやや上がったことなどが本来目指したことよりも目を引く形になりました。
また、数学ⅠAは時間が60分から70分に増加しています。これはもともと「記述題」を導入することが前提でそうなったはずですが、結果として記述題導入が見送られたことによって、10分の時間延長をいただいただけの格好になりました。国語でも記述題導入が検討されていましたが、これも数学同様見送られています。結果的に、本来実施しようとしていたものとは大分違ったものになってしまった大学入学共通テストですが、「思考力・判断力・表現力」をなんとかして試そうという出題方針そのものは随所に工夫がみられ、新しい入試としての試みとしては多方面から評価を得た出題だったと言えるでしょう。

●COVID19と受験日程

ご承知の通り、今年はCOVID19の影響で受験そのものがどうなるか分かりませんでしたから、それへの対策もかなり検討されました。テスト日程は第一日程(ⅰの日程)の他に「学習の遅れ」に対応した第二日程(ⅱの日程)の選択もできました。しかも、第二日程は第一日程の追試も兼ね、全国の都道府県に会場を設ける念の入れようでした。これまで追試といえば東京と大阪にしか会場を設けていなかったこととは大違いです。さらに特例追試験として第三日程(ⅲの日程)まで設けてありました(表1参照)。

テスト日程 (ⅰ)令和3年1月16日,17日 (ⅱ)令和3年1月30日,31日 ・(ⅱ)学業の遅れを理由に当該日程を選択する者 ・(ⅰ)を疾病等の理由で受験できなかった者の追試験 ・全都道府県に試験場を設置(従来は東京と大阪のみ) (ⅲ)令和3年2月13日,14日・(ⅱ)を疾病等の理由で受験できなかった者の特例追試験 テスト日程 (ⅰ)令和3年1月16日,17日 (ⅱ)令和3年1月30日,31日 ・(ⅱ)学業の遅れを理由に当該日程を選択する者 ・(ⅰ)を疾病等の理由で受験できなかった者の追試験 ・全都道府県に試験場を設置(従来は東京と大阪のみ) (ⅲ)令和3年2月13日,14日・(ⅱ)を疾病等の理由で受験できなかった者の特例追試験

ただし、実際にはほとんどの生徒は第一日程のみの受験者で、その数は482,088人です。第二日程以降で受験した人は、はじめからこの日程で受験した人の他、第一日程からの再試験・追試験の人を合わせて二千人強です。毎年追試受験者が200〜500人発生するのに比べれば4倍にもなりますが、結果的に第一日程で99,6%の受験が完了しており、第二日程以降を受験した人数は思ったほど多くありませんでした。
追試の受験人数が少ないということは、選択科目に平均点格差が大きく発生しても、得点調整は適用されないことは知っておく必要があります。例えば、今年の第一日程では科目間格差を埋めるために得点調整が実施されましたが、「受験者が一万人未満の科目」は得点調整の対象とならないと定められているため、得点調整の「条件」を追試日程がクリアすることはまずありません。選択科目間の平均点格差がどんなに大きくても、そのままになってしまうのが追試の運命ということができるでしょう。
追試の方が本試験よりも難しくなる…そんな都市伝説がありますから、それに影響されて第一日程の人数が多いのではないか…などと囁かれていました。しかし現実の指導面では、自己採点後に出願先を検討する時間がないことなど、追試日程は不利なことが多く、高校の先生方はそういうことも見越したご指導をされたこともあって、受験生は第一日程受験に偏ったのが真実だと思われます。
因みに、この伝説を検証するために実際に問題を見ると、科目によっては必ずしも追試の方が問題難度が上とは限らないようです。しかしその一方で、追試では得点調整が実質はないため、選択科目に極端に難しい科目があって平均点格差が大きくなることがあっても、全く考慮されないままになる…という言い方はできそうです。
さて、今年のCOVID19の蔓延によるイレギュラーな対応のために何重にも対応策がとられた大学入学共通テストですが、感染拡大の縮小があれば、次年度にも同じような多日程・多会場の柔軟な対応がなされる保証はありません。今後の成り行きを注意したいところです。

●想定より高かった共通テストの平均点

新しい入試をスタートさせる時によくあることですが、大方の予想と違って問題の難度は想定よりも易しかったといってもよいでしょう。もともと2018年の「試行テスト」の段階では「大学入学共通テストは5割くらいの平均点を目指すように作成する」と言われていましたから、「共通テストはセンター試験よりも難しくなる」と、大方の人は覚悟していたことでしょう。センター試験の時代には「6割くらいの平均点になるように作成されている」と言われていましたから、平均点が1割も下がると言われれば身構えてしまうのは当然です。
かくいう私も、身構え過ぎたために現実の平均点を見て拍子抜けした一人でした。内容的には新入試の傾向が十分に反映された作成問題になっていたものの、時間とのバランスでは十分に解答する余裕がある出題でした。

では、ここでその得点が実際にはどうだったかを検証してみます。まずは大学入学共通テストを含む、過去のセンター試験も含んだ平均点の推移をご覧ください(表2参照)。

<表2>大学入学共通テストを含む、過去のセンター試験も含んだ平均点の推移の表 ※総合型平均点は河合塾推定。 ※公民と理科②において、20点以上の平均点差が得点調整あり。 ※2018~2020までの英語は100点満点換算得点。 <表2>大学入学共通テストを含む、過去のセンター試験も含んだ平均点の推移の表 ※総合型平均点は河合塾推定。 ※公民と理科②において、20点以上の平均点差が得点調整あり。 ※2018~2020までの英語は100点満点換算得点。

<表2>は大学入学共通テストを含む過去4年分の各教科・科目の平均点の推移を示しています。特に黄色で色付けをしている数学ⅡBと生物は、前年までに比べて非常に平均点が高く出ています。また、河合塾が推定した「総合型(5−7理系型)」の900点満点の平均点は、過去と比較しても、むしろ高めの得点となっています。

問題の難度も選択科目によってかなり違ったため、科目間の格差が出ました。「理科②(4単位の理科)」内と「公民科目」内では選択科目によって差異がかなりあり、その結果として今年は久しぶりに「得点調整」が実施されました。「得点調整」とは、「理科」「地歴」「公民」内の選択科目間で「(100点満点中で)20点以上の平均点差」が出た場合、受験生に不利にならないように平均点差が15点になるように、個人の得点を調整することです。私の記憶では、得点調整はセンター試験時代の今から20年以上前に一度だけあったはずで、それ以外に実施されたことはありません。因みに、<表2>は第一日程の得点調整後のものを一覧表に載せています。

●医学科のボーダーラインへの影響

実際の出題内容が新傾向を多分に含んでいたことはすでに河合塾の分析でも触れられていますし、多くの予備校でも同様の内容が伝えられているところです。もちろんそれはコアの分析として大切なことですが、受験生の関心事は問題の質よりも、各大学のボーダーラインはどうだったかでしょう。

昨年からの変化を見るため、まずは昨年の状況から見てみましょう。医進研究会や講演会で私がよくお示しをしているマトリックス表で、まずは昨年の入試を検証した結果がどうだったのかを<表3>で示します。

<表3>各大学医学科のボーダーライン <表3>各大学医学科のボーダーライン

<表3>は昨年の「国公立大前期医学科49大学」の本試験の検証結果の難度表です。縦軸にセンター試験(1年前なので)の「得点率」、横軸に河合塾の全統記述模試という模試での「偏差値」をゲージとして示しています。当然、右の上の方に難度の高い大学がきて、左下に向かって並ぶようになるはずですね。
よくお間違えになる方がいるので解説しておきますが、このマトリックスに示されている得点率なり偏差値なりがあった場合、「その大学」に合格する可能性が確約されているのではありません。あくまで「合否の可能性が五分五分」の位置、つまり「チャレンジできる成績」を示しているのです。例えば京都大学なら「91%のセンター試験得点率」「二次の偏差値が70.0」の人が2人チャレンジしたとすれば1人が合格する成績ということです。
<表3>で昨年の国公立大前期医学科49大学全体を見回すと、概ねセンター試験の得点率は84〜85%の大学が多いことがわかります。また一見して83%程度が最下限で、それを割り込むと出願大がほぼなくなってくるのも全体のバランスから見えてきます。

では、この2020年度(昨年)の入試結果を踏まえた上で、今回の「2021年度大学入学共通テスト」で河合塾が設定したボーダー得点率とランクを次の<表4>で見ていきましょう。

<表4>2021年度大学入学共通テストで河合塾が設定したボーダー得点率とランク <表4>2021年度大学入学共通テストで河合塾が設定したボーダー得点率とランク

すると、得点率82〜83%のところに大学が固まっています。つまり、一見して前年よりも1%程度下目にボーダーラインが設定されているわけです。
当然、この設定ボーダーラインは共通テストの平均点によって変化します。平均点が高くなればどの大学もやや高めに、平均点が低くなればやや低めに設定されるものです。しかし、今年の平均点は昨年よりも高めになった割にはやや低目の設定大学が多いのは、一見それと矛盾するように思われますが、これは一体どうなっているのでしょうか…実は、今年の医学科入試では、医学科出願者の得点は中堅レベルの人が多く、超高得点の人数が減少していることがその理由です。これは、医学科志望者の現役生比率が昨年よりも相当多くなっている結果だと思われます。
しかし、ボーダーラインが若干下がったとはいえ、これでもまだ高止まりといったところです。昨年の年度途中、われわれボーダーライン設定の担当者は、共通テストの平均点が5割程度になることを想定していましたから、模試でのボーダーライン設定はもっと下げたところに設定していたからです。ところが本試験の平均点があまりにも高くなったことで、上にシフトさせざるを得ず、やや上ずれして表4の結果になりました。

今年のこの共通テストの結果から、次年度はもっと問題難度が上がるだろう、などと言われています。新しい入試になった時の二年目の問題作成にはよくあることですから、私もその可能性はかなり高いと思います。そうなれば、受験生は今年以上に「油断のない大学入学共通テスト対策」をしておく必要があります。私たちもボーダーライン設定は平均点が下がれば、それに応じてある程度低めに調整するでしょうが、それと反比例して受験生は自分の得点をあげなければならないのです。
次年度の平均点を予想することはできませんが、今年の結果より平均点が高くなるとは思えません。つまり、はじめから「難度が上がる」と見越して対策をスタートさせるのが普通の感覚です。受験生の皆さんには目標大学がどこであっても、平均点に左右されずに共通テストで85%の得点を目指してほしいところです。再下限のボーダー大学に目標を定めて学習を始めた結果、そこに到達しない人をたくさん見てきました。

確実な合格に一歩でも近づくためには、次年度は1日1日自分を成長させる心構えが必要になります。「今日ひとつ得たものがあった」といえる300日が、次年度の自分への第一歩となるでしょう。