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一人ひとりの提出書類はその人の人生や祈りのようなものが詰まっています。

どんなに手間がかかっても、彼らが自分なりのアプローチで文体や表現方法を考える過程に時間をかけることは、大事なことだと私は思います。

●出願書類作成にはスケジュールが必要

医学科受験では学力をアップすること以外にも、いろいろなマネジメントが必要です。出願時に「志望理由書」や「課題文」が必要な大学もありますから、出願時にはスケジュールだてが必要です。では、昨年の2020年度入試で、実際に志望理由書などの提出書類が必要だった大学を一覧にまとめてみましたので、見てみましょう(表参照)。

<表 2020年入試で志望理由書が必要だった国公立大>

2020年入試で志望理由書が必要だった国公立大 2020年入試で志望理由書が必要だった国公立大

ご覧の通り、かなりの大学が提出書類を課しています。提出書類は必ずしも「志望理由書」とは限らず、様々な形式があります。しかも、出願時に提出させるケースばかりではなく、出願した人に送られてきて、特定の日までに提出するよう指示があったり、前期試験1日目に持参するように指示があったりと提出方法もまちまちです。
大学への提出書類ですから適当な内容を書くわけにもいきません。当然、どなたかのご指導を受ける必要があるでしょう。どなたかに添削してもらうなら、一定程度の時間が必要なことはもちろん、お願いした方が自分の提出書類の添削だけをしておられるのではないことも考えておかねばなりません。第一、添削にはかなりの時間と手間がかかりますから、ご指導いただく方には感謝したいものです。

●志望理由書は内容が不出来なことが前提

様々な提出書類の代表として「志望理由書」の場合で考えて見ましょう。多くの受験生は、「出来ていないところ」を少し手直ししてもらう・・・、多少アドバイスしてもらう程度で添削は済むだろうと考えているようですが、実際にはそう簡単ではありません。
私たちの経験では1回の「朱入れ(あかいれ)」で済む志望理由書はほとんどなく、まず1回目の提出では朱入れすらできないほどずれているものが大半だという現実に出逢います。大体において、使える部分は多くありません。そこで「どの部分を採用するか」を指示し、その部分について書き直しをしてくるように伝えるのが第1回目の指導という場合が多いです。つまり、初めて提出されるものは「朱入れ以前」の状態で、「ほとんどが書き直しになる」のが普通です。
志望理由そのものの曖昧さや物足りなさ、文体のまずさ、書かれていること全体のバランスの悪さ、言葉の使い方が適切でなくうまく表現できていないなど、相当の不備があるのは普通のことです。しかし、私は多くの受験生はこういうものを書き慣れていないのだから、それはそれで構わないと思っています。出来不出来よりも、自分自身を見つめ直して分析し、どのように「他人に説明」するかを「考える過程」や、自分なりに考えて書いても「うまく表現できないことの体験」の方がそれより重要です。誰かが以前に書いたものを手本として渡して真似をさせれば、私の添削の手間はかなり減少するかもしれませんが、それはただの猿真似であって「対策程度」の添削です。こういう方法は「彼らが自分で考える成長の妨げ」になりますから、私は絶対にしないことにしています。一人ひとりが違う人生を背負っているのに、その志望理由書に模範解答や書き方の手本を渡すことで個性を失わせたくないものです。
彼らは第1回目の提出で指示されたことについて、方針を再度立てて書き直してようやく第2回目の提出に至ります。本格的に記入内容に「朱入れ」するのはこの段階です。どんなに手間がかかっても、彼らが自分なりのアプローチで文体や表現方法を考える過程に時間をかけることは、大事なことだと私は思います。
一人ひとりの提出書類はその人の人生や祈りのようなものが詰まっています。その方の志望のきっかけや将来めざしたいもの、自分が社会に還元しようとしていることや将来のキャリアプランなどの塊です。彼らは無自覚・無意識の内に漠然とそれを持っているのでしょうが、それを意識の中に引き出して自覚させてあげねばなりません。それを大切にしつつ、提出先の大学の方が本当に必要としていることは何か、また本人が本当に表現したいことが字数制限の中でうまく表現できているか、十分な語彙が尽くされているかなど多方面から評価して添削することは、引き受けた人間の義務というところでしょう。

●今時の添削方法として

多くの方は添削と聞くと、「原稿用紙に手書き」の絵面が思い浮かぶのではないでしょうか。確かに多くの生徒は志望理由書のような書類は、特に指示がなければ原稿に手書きしたものを提出してきます。中には本当に提出する用紙をわざわざコピーしてそれに書いてくる人も少なくありません。もちろん、これまで在籍していた高校では礼儀としてそれはそのように指導されてきたでしょうし、正しい方法です。
しかし、私は生徒たちにこの部分だけは少し工夫するようにさせています。提出方法については、あえてこちらから「原稿用紙で提出しなくても良い」と伝えるようにしています。今時スマートフォンを持っていない生徒はほぼいないので、それを活用するのです。具体的には「ワープロ」で打ってから出力して持ってくるか、もしくは私はAppleの端末を使用しているので、生徒が同じならそのまま窓口まで端末を持って来て、「AirDrop」で渡してくれればそれで構わないと伝えています。Appleユーザー以外は通じにくい表現ですが、要はテキストデータをその場送信でこちらにくれれば、紙への出力と添削はこちらでやるから…ということですね。
なぜあえて私がワープロ機能を推奨するのでしょうか。それは、彼らの「文章作成・修正のスピード」を「思考のスピード」に即応させたいからです。文章を作成すると、どうしても順序を逆転させたり挿入したいことなどが発生したりします。もしも仮に「全てを手で記入」していれば、そういうことを一つするにもかなりの手間がかかってしまいます。せっかく考えた表現がその手間の間に失われる可能性がありますし、書いてみてやはりまずいと思ったら書き方を手直しするなどの方法も難しいので、なかなか筆が進まないことも発生します。
一方、ワープロなどの技術を導入すれば、表現の手直しや文章の順番のやりくりはかなり簡単に済ませることができます。「とりあえず書いてみる」と言うことも簡単に出来るでしょう。書いている途中であっても文章を推敲して入れ替えたり、消したりすることも自在です。文章作成が不慣れな年齢の人たちにとって、「とりあえず書いてみる」「読んでみてまずいかどうか確かめる」という手法は、かなりの効果を発揮します。書くことそのものも、机に向かっていなくても電車の中でもできますから時間を節約することもできます。
その状態で「一応完成したもの」を提出してもらい、こちらが手直ししても修正はさほど労力がかかりません。「次回の再提出」までの時間も比較的短時間で済みますから、本人にとっても負担が少ないでしょうし、添削するこっちの身からしても多少は時間短縮できるのです。
このように、志望理由書作成には「かけなければいけない時間」と「かけなくてもよい時間」があると私は思います。彼らが自分のことを考える「思考の時間」は十分にかけてもらい、その「記入時間」は短縮する、それも考えた表現方法を即応で試せるようにと、パソコン・タブレット・スマートフォンなどを推奨しているのです。
二、三度こういう添削のやりとりをすれば、ほぼ「志望理由書」は完成です。そして、実際に「もうこれで良い」という段階まで来たら、ようやく原稿用紙に清書すればいい…というのが私の発想です。
ただし、多くの志望理由書には字数制限がありますから、ここだけは少し注意が必要です。ワープロ上では字数は収まっているよう思えても、実際に原稿用紙に書き始めると改行の位置によってはロスが出て字数がはみ出すことがあるからです。最終、ここだけは注意して書き進めるように伝えることも、忘れないようにしなくてはなりませんね。

●出願書類を期日に間に合わせるために

ある女子生徒のことをお話ししましょう。彼女は前期試験で大阪市立大に出願したのですが、後期試験では佐賀大に出願していました。前期試験は2月25日・26日ですから、そこまでは全力でその試験に打ち込んでいたのですが、多くの受験生と同様に、その後には「前期試験が不合格になるかもしれない」ことを見越して後期試験の準備をし始めました。
佐賀大学の提出書類は出願済の人に送られてくるもので、「ある課題」について期日までに提出させる作文です。ところが、その課題があまり簡単なものではなく結構難解なものだったのです。テーマは「ダイバーシティ(多様性)と寛容について、経験や将来医療人として生きていく立場から述べてください」と言うものでした。普通に考えても、「ダイバーシティ」と言う言葉はまだ一般用語というレベルにはなっておらず、記述が簡単でないことは明らかです。しかも、どういった方向に向けて書けばいいのかということが具体的に示されているわけでもなく、それは書き手に全て任されているものでした。また、後期試験は3月12日と決まっていますが、提出には期日があり「3月4日必着」という条件がありましたので、あまりのんびりしているわけにもいきません。
彼女は何にでも全力で取り組む姿勢の人でしたから、この提出書類もかなり考えてから私のところに「はじめの添削」を持ってきました。一般的に「ダイバーシティ」という言葉がどのように使われているか、医療の世界ではその中でどのようなことが課題としてトレンドになっているかなど、切り取り方一つとっても出題している側がどの側面からの記入を期待しているかのスタンダードには、暗黙の条件があるものです。自己本位に何を書いてもいいわけではないところが、提出物の難しいところです。
彼女の「はじめの添削」もそれなりにできていましたが、納得いくまで内容の精選をしようということで、かなりの時間をかけ4回以上の添削を重ねました。彼女なりに十分納得するところまで推敲するのに相当の労力と時間をかけた結果ですが、時間的には提出期日ギリギリです。先程の提出期日は「付則」として、「窓口に直接持参しても構わない」とされていましたが、彼女はギリギリの日程まで推敲を重ねて清書した上、なんと大阪から佐賀まで書類を期日当日に持参したのです。
ここまで自分のエネルギーを全力集中する人に、他の人は果たして勝てるでしょうか。佐賀大の後期試験は面接と調査書のみですから、その評価は圧倒的に違うはずでしょう。ただし、結果的に彼女は前期試験の大阪市立大に合格しており、後期試験は受験しませんでした。後期試験で佐賀大を受験した方にとっては、彼女が来なくてよかったのではないかとさえ思います。

「これくらい書いておけばいいだろう」…そういう浅はかな考えで添削を提出しにくる生徒には、彼女の話をするようにしています。何事にも全力で取り組む姿勢が若い人から失われては、もったいないことです。少なくとも、添削に入った瞬間に「この程度」と考えていることは私たちにはすぐに伝わります。文章を書かれた方の想念は、書かれた文章に出るものです。