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2020.12.4公開

迷ったら「やる方」を取るのが受験の鉄則!

意外と知られていない共通テスト利用のメリット。12月は私大受験校決定時期。受験生にとって、今まさに「決断と行動」の時です。

●共通テスト利用方式とは

1〜2月の私立大入試の方法には、「一般型方式」と「共通テスト利用方式」の二種類があることはよくご存知のことと思います。私立大の「共通テスト利用方式」は、昨年までは「センター利用方式」と呼ばれていた入試方法のことです。2021年からセンター試験が共通テストに変わることによって、役割を引き継いだ形になっていますが、名称が変化しただけのことで、引き続き実質的な仕組みは同じです。
私立大の二つの入試方式のうち「一般方式」は、まず一次の学科試験を受験し、それに合格すれば二次試験に進む方法です。当然、一次の大学独自試験の過去問対策は大学ごとに必要になります。ところが、「共通テスト利用方式」なら、その名のとおり「大学入学共通テスト」を一次試験として利用するため大学ごとの対策が不要で、二次試験のことだけ考えておけば事足ります。ちなみに二次試験はいずれの方式でも「面接や小論文」です。ということは、「共通テスト利用方式」なら、「一般方式」と違い、一次の大学独自試験の過去問対策なしで済むメリットがあるといえます。
もちろん、「共通テスト利用」と名がついているわけですから、共通テストを受験しない人は利用できません。しかし、国公立大志望の方は共通テスト受験が必須ですから、私立大の併願を検討するなら考えてみる価値はあります。
国公立大を第一志望にしている方はそちらの対策に専念したいでしょうから、私立大の過去問対策や受験のための移動を極力減らしたいに違いありません。一般入試の私立大を一つ増やせば過去問対策が必要ですし、受験の移動にも日数が割かれてしまいます。そのときにできるだけ負担なしに出願大学を増やす意味で、「共通テスト利用方式」に注目するのはどうでしょうか。

●共通テスト利用方式の実態とは

「共通テスト利用方式」があまりポピュラーにならない理由の一つは、募集定員が少ないからでしょう。一般入試なら大体どの大学でも70~80人程の募集定員ですが、共通テスト利用方式ではせいぜい5人~10人程度のことがほとんどですから、やはり難関なイメージがあります。
ここで具体的に2020年の大阪医科大学(2021年に大阪医科薬科大学に統合改称)の場合で見てみましょう。同大学の「センター利用方式(2021年より共通テスト利用方式)」では、10名の募集定員に対し出願は449名、「一次試験」合格者は100名でした。
ところが、一次試験に合格した100名のうち「二次試験」を受験したのはわずか37名だけで、そのうち最終合格は31名でした。つまり、最終的には、募集定員の3倍以上の合格者を出したことになります。また、今回のこの大学のケースでは、「一次試験に合格して二次試験に進めば、合格可能性がかなり高い」こともわかります。それでもこの31名の合格者のうち、入学者はわずか4名でした。つまり、せっかく合格者を多めに出しても他大学に流れてしまい、定員は充足していないのです。
一方の「一般方式」では定員の84名に対して受験者1,663名、二次試験の最終合格者は定員より多い164名です。このうち92名が入学しましたので、募集定員を超過しています。ただし、「センター利用方式」の手続者が少なかったことにより、両方式を合計するとほぼ定員ちょうどに近い入学者でした。
さて、この大学の両方の入試方式を検証すると、倍率は共通テスト利用方式が意外にも高すぎるわけではないことが分かります。当然、共通テストの得点が高くなければ上位の37名に残ることは出来なかったでしょうから、そこが重要ポイントであることは間違いありません。
もっとも、一次試験の合格状況や二次試験の受験率などは大学によってかなり違っています。概ね大学のホームページの入試結果に掲載されていますから、12月にはご自身で確認されることをお勧めしたいところです。

●出願時期・科目数・得点率のバランス

「共通テスト利用方式」と聞くと、何となく国公立大の併願のイメージですから「5教科フル」という感じがします。しかし、要項をしっかりみると理解できることですが、実は「5教科フル」でない大学が結構あります。実は、こんな単純なことが意外と知られていません。
獨協医科大、東海大、杏林大、近畿大などは「英・数・理の3教科」のみです。また、愛知医科大、藤田医科大、大阪医科大(大阪医科薬科大)は「英・数・理+現代文の4教科」です。「英・数・理」だけなら、理系の生徒が当たり前に学習している教科です。しかも、共通テストの数学はⅠAとⅡBまでですし、理科も大学独自試験に比較すれば易しいといえるでしょう。これなら、ある程度の高得点が取れそうです。5教科フルでは国語に古文や漢文があったり、理系生の苦手な地歴/公民科目があったりしますが、それらの科目が含まれないのなら少しくらいは高得点が取れる可能性があるような気がしませんか。
これまでは90%の得点率がないとなかなか合格しないといわれていた「共通テスト利用方式(旧センター利用方式)」ですが、最近では一次試験を突破するためのボーダー得点率はやや下がりつつあります。共通テストになれば問題難度がセンター試験より上がると言われていますから、それに伴って共通テストの平均点は低くなり、ボーダー得点率はさらに下がるはずです。結果的に、85%程度の得点率で一次試験を突破するケースはかなり出るのではないかと考えています(表参照)。
ここまで聞くと何となく魅力的に見えてくる「共通テスト利用方式」ですが、他に何がネックになってくるのでしょうか。

2021 共通テスト利用私大の二次予想ランク(偏差値)とボーダー(得点率)についての表 2021 共通テスト利用私大の二次予想ランク(偏差値)とボーダー(得点率)についての表

●出願の決断には思い切りが必要

実は、出願までの最終関門は「出願時期」です。「共通テスト利用方式」の多くは、共通テスト受験前が出願締め切りです。つまり、多くの大学は受験生が共通テストの得点が判明する前に、出願を締め切ってしまうのです。人間の心理として、得点が高ければ出願したくなるのは当たり前です。それが判明する前にほとんどの出願が締め切りになることが、共通テスト利用方式がポピュラーにならない理由だともいえます。
もっとも、「出願時期を遅くして欲しい」という受験者のニーズに応える形で、得点判明後に出願できるものもあります。例えば近畿大では「前期」は共通テスト受験前が出願締め切りですが、「中期」「後期」はそれ以降の出願にするなどにして対応しています。ただし、それこそ定員は多くないですし、合格の出方も年度によってバラついていて不安定です。
医学部受験では浪人を重ねる人が周りに多いせいで出願にも手慣れていることが多く、「一般方式」の受験は「この大学」と「あの大学」、「センター利用方式」では「あそこの大学」と「こちらの大学」というように、まるで定食屋でおかずを取るように出願大学を書き連ねる多浪生をずいぶんみてきました。しかし、今年の「共通テスト利用方式(旧センター利用方式)」に関しては少し様子が違うようです。
今年の模試がセンター試験対象の「マーク模試」から、大学入学共通テスト対象の「共通テスト模試」に変わるや否や、急に受験生が得点できなくなり、全体として平均点が大きく下がる状況が続いているからです。センター試験が平均点を60%程度になるように作成されていると言われていましたが、共通テストは平均点を50%程度にすると言われています。河合塾の模試がその出題傾向を反映した結果、共通テスト型の模試平均点が下がって来るのは当然でしょう。
現在、多くの受験生が「本番で本当に得点が取れるのか」ということに非常に弱気になっているように見受けます。おそらく、多くの受験生が模試で得点が取れないことに意気消沈しており、結果的に「共通テスト利用方式」の私立大出願まで意識を回せないでいるのではないかと思われるのです。模試の結果は受験生の心理に大きな影響を及ぼすものです。

とはいえ、こういう時こそ人と違ったことをしてみることが大切です。できるかどうかわからない時は、できると踏んで準備する心構えが必要です。成績はギリギリまで伸ばすことができますし、模試でボーダー得点率に達したことがないのであれば、「自分の最高記録で本番に間に合わせてみせる」という決意があれば出願してみるのはどうでしょうか。
「意外に点数が取れたけど、これだったら出願しておいたらよかった」という後悔は避けたいところですね。これまでも、12月の出願面談で最後に「そんなにお勧めになるなら、センター利用方式を一つ出願します」と、何となく出願を加えたところ、本番でセンター試験の得点が伸びて、結果的に合格が残ったのはその大学だけだった…という受験生は少なくないのです。

「どうしようか」…これは行動を促す心のシグナルです。迷ったら「やる方」を取る…受験の鉄則だと私は考えています。新型コロナの影響で、私立大志望の受験生が地区間移動の受験を避けようとしていることが模試のデータでわかっています。場合によっては多くの受験生が出願大学数を制限することにつながるかもしれません。だったら、自分は違う行動を取ってやろう…そうです、このご時世だからこそ、一つでも併願大学を増やすことをお勧めしたいところです。共通テスト利用方式も、迷ったら出願しておきましょう。

チャンスをどう生かすか…これは考えていても見えず、行動の中でつかむものです。人は「言った言葉」に価値があるのではなく、「とった行動」に価値があるものです。受験生ならば「受験という行動」をどのようにとるかで、「とった行動」に見合う結果がきっと返ってくるに違いないのです。いよいよ12月の面談がスタートしました。受験生にとって、今まさに「決断と行動」の時です。