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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第32回 情報学部 「コンピュータ科学の医学分野への挑戦-画像処理研究が医学をどのように変えるのか?-」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

講演の様子

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第32回 情報学部を、2019年5月26日(日)河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学情報学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約110人の生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2019年5月26日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

未来の医療の実現に向けて〜コンピュータ科学による医用画像診断支援〜

●第1部:コンピュータ科学の医学分野への挑戦-画像処理研究が医学をどのように変えるのか?-
森 健策(もり けんさく)教授(情報学研究科)

森 健策(もり けんさく)教授(情報学研究科)

“情報学・コンピュータ科学と医学”と聞いて、最初はそのつながりを疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、病院などの医療現場では、X線CT、MRI、内視鏡など情報機器だらけで、大量のデジタルデータが取得されています。これらのデジタルデータから、診断や治療に必要な情報をコンピュータが取り出し、判断し、示すことも、コンピュータ科学の重要な役割です。このように医療機器がどんどん知能化していますが、まさに人工知能技術を研究しているのが、情報学、コンピュータ科学なのです。

現状では、人工知能は、①計算知能(ほぼ機械学習)、②ニューラルネットワークなど計算オリエンテッドな手法による分類、と言えます。なお、機械学習技術やニューラルネットワークの学習では数学がないと成り立ちません。高校で行列を学ばなくなりましたが、情報学を研究するうえでは必ず必要なので勉強してくださいと、森教授は強調されました。

次に、人工知能を活用し製品化した例として、今年の3月からオリンパスが発売した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」を紹介されました。EndoBRAINは、大腸内視鏡検査中に大腸の超拡大内視鏡画像を人工知能が解析し、リアルタイムで腫瘍性ポリープか非腫瘍性ポリープであるかを判別し、医師の診断を支援します。昭和大学横浜市北部病院、名古屋大学とサイバネットシステムが共同開発し、2018年12月に医薬品医療機器等法に基づく承認を取得しました。大腸がんは日本人のがん死亡数の2位で、その対策として大腸内視鏡で早期がんや腫瘍性ポリープを切除することが重要であると言われており、EndoBRAINを使用することで、医師の診断精度が向上することが期待されています。

このように、研究成果を社会実装に向けて開発していくことはとても大事なことですが、時間はかかります。今回は、国立がん研究センター中央病院など国内5施設による臨床性能試験を経て、製造販売承認を取得しましたが、実用化に向けて今後ますます医学、情報学、企業という多施設共同研究は重要になるだろうと言われました。

最後に「意図しないFakeの危険性」について話されました。これまで不可能と思われていたRealに近いFake画像が生成可能になってきています。医療現場におけるFake画像に立ち向かうためには、十分な議論が必要で、技術的な可能性の議論や研究と、倫理的な問題とは区別して議論すべきであると、警鐘を鳴らされていました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
情報学研究科 複雑系科学専攻(情報学、農業情報)山田 明里(やまだ あかり)氏
情報学研究科 社会情報学専攻(情報学、観光情報)小栗 真弥 (おぐり しんや)氏

第2部では、名古屋大学情報学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

情報学研究科 複雑系科学専攻(情報学、農業情報)山田 明里 氏

情報学研究科 複雑系科学専攻(情報学、農業情報)山田 明里 氏

現在、名古屋大学大学院 情報学研究科に所属されている山田さん。高校時代は、将来やりたいことが決まっていませんでしたが、もともと数学が好きだったことから、数学を生かせる学部に進学したいと考えられ、その中でもさまざまな分野と結びついており、就職の需要が高い「情報学」を選択されました。最終的に家から通えて情報学が学べる名古屋大学に進学され、その後、進学か就職かを選択する際、さらに勉強して専門知識を深めたいと思い、大学院への進学を決意されました。

次に、学部時代についてお話いただきました。1・2年次では教養科目、3年次からは専門科目をメインに履修し、4年次に研究室に配属され、研究生活が始まります。山田さんは、研究生活の他にも「Python」というプログラミング言語や機械学習の勉強、名大祭の研究公開企画の準備、院試の勉強、企業との共同研究なども行われていたそうで、ハードですがとても充実した日々を過ごされていました。

そして大学院での生活について、学部時代と同じ研究室なので研究生活は変わっていないものの、修士課程では講義も加わったため、学部時代より忙しいとお話されました。また、山田さんの研究室では演習ゼミもあり、英語論文に関する発表や議論をすることも学部時代とは違うようです。

続けて、現在研究している「スマート農業」の紹介をしていただきました。スマート農業とは、ロボット技術や情報通信技術を活用して、省力化・精密化や高品質生産等の実現を推進している新たな農業のことで、労働力不足の解決策としても注目されています。具体的には、機械学習手法を用いて植物工場栽培のトマトの最適作業日予測を行っているそうですが、栽培作業日予測をして農作業計画を立てやすくすることで、農業への新規参入を促進できるそうです。この研究を応用すれば、植物工場内の自動環境制御システムが実現できると考え、現在研究を進めているということでした。

最後は「将来のビジョンが決まっていなくても、学部時代の経験で決めていけば良い」「大学は高校と違って自主的な勉強が必要になり大変なことも多いが、自由度が高いからこその楽しみがあっておもしろい」「まずは志望校合格をめざして勉強を頑張ってほしい」と語られましたが、将来のビジョンが不明確な方は、講演の中でも紹介のあった名大祭の研究公開企画に行ってみると、進学につながるきっかけが得られるかもしれません。

情報学研究科 社会情報学専攻(情報学、観光情報)小栗 真弥氏

情報学研究科 社会情報学専攻(情報学、観光情報)小栗 真弥氏

小栗さんは、高校時代は学校祭や生徒会、部活動などに積極的に取り組み、河合塾で浪人した後に、立命館大学の情報理工学部へ進学されました。学部時代はコンピュータの仕組みを学びたいという気持ちで、RoboCupのサークルや、高性能計算に関連した研究をされていました。

立命館大学への入学時から大学院は名古屋大学で学びたいと考えていたとのことで、現在は名古屋大学大学院情報学研究科、社会情報学専攻、情報社会設計論講座に所属されており、MDG(Media & Design Group)という複数の先生による研究グループで「観光と地域コミュニティ」の分野で研究を進められています。日本の重要な成長分野としての観光分野の可能性について海外の観光客数や観光収入の例を交えながら、観光資源として日本の登録文化財の活用の可能性を話され、現在研究されている「文化財を活用したプロジェクションマッピング」についての紹介をしていただきました。具体的には、文化財の歴史的建築の外観を活かした障子プロジェクションマッピングや、茶室で障子や畳に映像を写したプロジェクションマッピングと茶道のコラボレーションなど、実際の様子を動画で紹介されていました。今後の研究にあたっては、文化財を観光資源として活用するためどうしたらもっと楽しんでもらえ、認知度を上げられるかがが重要であるとのことでした。また、実は文化財情報が少ないため、その情報整備も必要であったりなど、課題はありますが、自治体・個人、地域と協力しながら、全国へも広めていくことを考えられています。大学院での生活は、論文・文献調査、研究に加えて、月に1回以上は自治体や共同研究先との打ち合わせで学外へ行くことがあり、学会での発表のほかTAとして授業のサポートを行ったり、非常勤講師としての教育活動もしています。

最後に「自分が興味をもって学べる分野にいくと楽しいので、とにかく自分の良いと思った大学に頑張って合格してほしい」と熱いメッセージをいただきました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、森教授と大学院生2名でそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

講演者と参加者による懇談会

森教授の懇談会に参加した方たちからは研究内容に深く切り込んだ内容から、名古屋大学情報学部と他大学の情報学科との違いなど、さまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.人工知能で症状を判断されると思いますが、エラーが出た場合は誰が責任を取るか決まっていますか。
A.法律的には医師が全責任を取ることになっています。間違えることはどうしてもありますが、間違えるときはデータのパーセンテージが下がってきて、コンピュータ自体も間違いではないかと判断し、それを見た医師も間違いではないかと考えるので、医師がコンピュータを信じて良いかどうかを自身で判断しています。

Q.独立した情報学部のある名古屋大学と、情報学科が工学部の一学科として設置されている他大学との違いはありますか。
A.規模的には名古屋大学はかなり大きめで、学部の中の学科も多いです。教授の人数も多く、学生のサポートは手厚くできるので、そこは大きく違うと言えます。また、独立した情報学部のある名古屋大学は情報を大切に考えているというメッセージを伝えつつ、情報を中心に大学を動かしてもいるので、独立しているということは大学としては大事な分野だと考えていると言えます。

Q.情報学部には文系・理系の方がどれくらいの割合でいるのでしょうか。
A.情報学部の学生は60人くらいが文科系、80人くらいが理科系ですが、教授の数は全体的に見ると理科系が多いです。教授の中には数学をやられている方もいます。

大学院生2名との懇談会に参加した方々からは、大学の研究テーマに関することや院試などについてさまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.大学の研究テーマはどうやって決めるのですか?
A.(山田さん)学部で勉強をしていく中で決める人がほとんどです。自分で決める人も少しはいますが、起業している人は会社のテーマが研究テーマになっています。
(小栗さん)自分で決めています。ただ、今の研究室では自治体の出すデータをもとに自治体が困っていることにコミットして研究に生かしていくやり方もありますので、学部によっていろいろです。

Q.大学3年次の研究室はどうやって決まるのですか?
A. (山田さん)成績で決まります。しかし、大学の成績は出席日数も見られるので、成績が低い人も面接を行い、研究に対して意欲的な人は希望の研究室に入れる可能性があります。
(小栗さん)基本は成績ですが、授業の中でプレゼンをしたりして決めていきます。

Q.修士課程に行く院試はどんなものですか?
A.(山田さん)内部受験だったので、学部のときの授業を復習していました。内部受験は、きちんと勉強(プログラミング・アルゴリズム・物理・数学など)していれば、ほぼ合格できます。
(小栗さん)外部進学も内部進学も一緒の試験を受験します。自分は外部受験だったので、試験の半年くらい前から自分の行きたい研究室の教授にコンタクトを取ってゼミに参加したり、同じ試験を受ける学生とも一緒に勉強したりしていました。

参加者の感想(一部抜粋)