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スタッフからのお知らせK会本郷教室

36件の新着情報があります。 1-10件を表示

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冬期講習のお申し込みについて

2025年10月14日 更新

みなさんこんにちは。K会事務局です!

来週、10/21(火)13:00から冬期講習の受付がはじまります!
設置講座は数学・英語・情報・物理・化学・生物・地理・天文学・言語学の全19講座!
詳しくは下記URLよりご確認ください。
https://www.kawai-juku.ac.jp/winter/kkai/

K会の冬期講習は、会員の方以外もお申込みいただけます。
毎年、受講いただいている生徒さんの半数以上がK会生以外の生徒さんです。
初めてK会の講座を受講するという生徒さんもたくさんいますので

「面白そう」 「学んでみたい」 「挑戦したい」

という気持ちがあれば、ぜひご受講ください!

言語学や天文学といった科学オリンピック講座をはじめ、方程式論や、化学の軌道論を扱う講座など、
学校では学ぶことのできない魅力的な講座をたくさんご用意してみなさんのお申し込みをお待ちしております。
講座は、下記お申し込みサイトにて10月21日(火)13:00よりお申し込みを承ります!
お申し込みはこちらから

【お問い合わせ】K会事務局
☎03-3813-4581 日・月除く 13:00~19:00
※日・月に加えて10月15日と12月30日~1月3日はお休み

━【「言語学をのぞいてみよう その42」(元K会英語科講師:野中大輔) 】━

2025年10月10日 更新

━【「言語学をのぞいてみよう その42」(元K会英語科講師:野中大輔) 】━
★このコラムでは、言語学を研究している筆者(元K会英語科講師)が、英語・言語学・外国語学習・比較文化などの話題をお伝えしていきます。★

「上下」「左右」「前後」「内外」のうち仲間外れは?

突然ですが、「上下」「左右」「前後」「内外」という二字熟語のうち、仲間外れはどれでしょうか? といっても、捻りのきいたなぞなぞを出題したいわけではなく、言語学の研究者である私だったら、どんなところに着目するのかをお話ししたいと思います。

まず、「上下」「左右」「前後」「内外」の構成を考えてみましょう。これらはいずれも反対の意味の漢字からなる熟語で、日本語にはこの種の熟語が多数あります(他には「大小」「貧富」「明暗」など)。「上下」「左右」「前後」「内外」はその中でも位置関係、空間関係を表すタイプであり、その点においてはよく似ています。

では、「上下」「左右」「前後」「内外」において、仲間外れがあるとすれば、どれでしょうか。私は日本語・英語の中でも特に動詞の研究を行っているので、ここでも動詞の観点から考えることにします。日本語では、名詞に分類される語に「〜する」を付けて動詞化することがよくあります(例:「料理する」「メールする」)。今回の4つの熟語に「~する」を付けてみると、「上下する」「左右する」「前後する」は自然な表現ですが、「内外する」は日本語としておかしく感じられることでしょう。中に入ったり外に出たりすることを「内外する」という表現で言い表してもよさそうですが、実際にはそのような言い方はしないわけですから、不思議なものです(一方で、「出入りする」という表現はありますね)。

今度は「上下する」「左右する」「前後する」の中で違いを探してみましょう。この3つの表現を使って例文を作ってみると、違いが見えてきます。「上下する」や「前後する」で例文を作るとすると、たとえば「値段が上下する」や「順番が前後する」などが思い浮かぶでしょう。それに対して、「左右する」の例文として自然なのは「この選択が運命を左右する」のような表現です。「上下する」と「前後する」は[Xが~する]の形で用いられるのが普通なのに対して、「左右する」は[XがYを~する]の形で使用されます。つまり、「上下する」「前後する」は自動詞(目的語を伴わない)であるのに対して、「左右する」は他動詞(目的語を伴う)なのです。「左右する」を「左に行ったり右に行ったりする」ことを表す自動詞として使うことがあってもよさそうに思えますが、試しに「風にあおられたボートが左右した」といった表現を作ってみれば、おかしいな、そんな言い方はしないなと感じられるでしょう。しかし、これは当たり前のことではなく、日本語を外国語として学習する人であれば、そのような表現を不自然だと感じずに使ってしまうかもしれません。なお、「左」と「右」を含む表現で自動詞として使うものとしては「右往左往する」があります(あわてふためくことを表す表現ですが)。

以上の内容をまとめると、「上下」「左右」「前後」「内外」のうち、動詞として使うかどうかという点では「内外」が仲間外れであり、動詞として使える3つのうち、自動詞として使うかどうかの点では、「左右(する)」が仲間外れということになります。同じような構成の表現なのに、こうした文法上の違いが見られるのは興味深いですね。

このような日本語の観察から、外国語学習についての教訓も得られます。まず、学習対象についての教訓です。日本語で「上下」「左右」「前後」「内外」のような表現を適切に使うためには、今回確認したような用法を身につけていなければなりません(そのような用法を身につけていないとおかしな表現を作ってしまう可能性があります)。同じく、外国語の表現を覚える際にも、その用法の範囲を知ることが重要です。たとえば「上下」に近い組み合わせとして、英語にはup and downという表現がありますが、単にupとdownを並べただけの表現だと思って終わらせるのではなく、どのような用法があるのかを意識的に学習することが必要です(up and downは副詞としてgo up and downのように用いられるほか、名詞としてups and downsの形にすると「(物事や気分の)浮き沈み、好不調」を表します)。

次に、「なぜ」という疑問との付き合い方について。おそらく、日本語において「内外する」とは言わない理由、「左右する」を他動詞としてしか使わない理由を考えても、納得のいく答えを見出すのは難しいと思われます。言語には〈たまたまそうなっている〉としか言いようのない側面も多々あります。それを受け入れるのも大事なことです。外国語を学んでいると様々な疑問が湧いてくるかと思いますが、「なぜ」については解消できないこともありますし、解消できなかったとしても必ずしも習得に支障はありません(たとえば、日本語を学習中の人は、「左右する」を他動詞としてしか使われない理由がわからなかったとしても、「この選択が運命を左右する」のような表現を学べるでしょう)。疑問を持つのは興味の表れですから、その気持ちは尊重しつつ、言語の実態を理解し、着実に身につけていく姿勢で外国語学習に向き合うことが大切です。

[補足]
「上下する」と「前後する」は「Xが~する]の形で用いられるのが普通であると述べましたが、「XがYを~する]の例も一部存在します。たとえば、「株価が一定の範囲を上下している」や「セミナーの出席者数が例年50人を前後しているので…」のように、Yに範囲や基準値などを表す名詞が現れる例などがあります。

★小学生対象:数学イベントのお知らせ★

2025年10月5日 更新

小学生対象の数学イベントのお知らせです!

『円周率の秘密』
10月25日(土)14:00~16:00
講師:桝澤 海斗
イベント案内はこちらから

3.141592653589793238462643383279 ……
2025年5月「最も正確な円周率の値のギネス世界記録」が樹立されました。
その記録は、なんと小数点以下第300兆桁目まで求めたというものです。

きっと、この記録を人が手で計算したものだと思う方は少ないでしょう。もちろん、これはコンピュータを使って計算された記録です。
しかし、円周率の値を正確に求めようという試みは、古代から多くの人々が挑戦してきました。

現在わかっている最も古い円周率に関する記録は、1936年に発見された粘土板に記されたもので、紀元前2000頃の古代バビロニア時代(縄文時代の終わりごろ)のものです。
日本では江戸時代の数学者、松村茂清が1663年に小数点以下第7桁までを、関孝和が1681年に小数点以下第11桁までを正確に計算したものが古い記録として残っています。
ここで少し考えて見てください。コンピュータのない時代の数学者たちはどのようにして円周率を求めてきたのでしょうか。

この講座では、そんな電卓もコンピュータもない時代にタイムスリップして、当時実際に使われていた円周率を求める計算にチャレンジしていただきます。
自分の手で正確に計算することの、大変さや意外な難しさを通して、数学者の情熱と探究心を少しでも感じて頂けたら、大変嬉しく思います。

算数好きのお子さまはもちろん、保護者のみなさんにも楽しんでいただける内容です。
お子さまと一緒にぜひ気軽にご参加ください!

イベント案内はこちらから

お問合せ
K会事務局 ☎03-3813-4581
受付時間 火~土曜日(13:00-19:00)
※お申し込みはWebから

━【「音楽から見る数学14」(元K会生・元K会数学科講師:布施音人) 】━

2025年9月10日 更新

━【「音楽から見る数学14」(元K会生・元K会数学科講師:布施音人) 】━
★このコラムでは、数学と音楽の両方に魅せられてきた筆者が、数学と音楽の共通点を考える中で見えてくる数学の魅力について、筆者なりの言葉でお伝えしていきます★

― うなり ―

こんにちは。元K会数学科講師の布施音人です。
突然ですが、みなさんは弦楽器や管楽器のチューニングをしたことはあるでしょうか?

チューニングとは、弦の張り具合や管の長さなどを調整することで、楽器どうしの音の高さを合わせることをいいます。そのチューニングの過程で、楽器の音の高さを互いに近づけていったとき、ピッタリ合う直前、少しだけ音の高さがズレているときに、「うわんうわんうわん」と、周期的に音量が大きくなったり小さくなったりしているように聞こえることがあります。この現象は「うなり」と呼ばれます。楽器のチューニングはしばしば、「うなり」を注意深く聴き取り、それを無くすように調整することで行われます。今日はこのうなりという現象について取り上げます。

次のような例で考えてみましょう。考える音は全ていわゆる「正弦波」(変動をグラフにしたものが y = sin x のグラフの形と相似になるような波)だとします。そして、波Aは1秒間に100回振動する波、波Bは1秒間に101回振動する波で、その波の高さ(振幅)は両者ともに等しいとしましょう。これらの波Aと波Bが重ね合わさったときに何が起こるのかを考えます。

とある瞬間に、波Aと波Bとが共に最も「振れている」としましょう(グラフで書いたときに一番"てっぺん"に来ているという意味です)。この瞬間、波Aと波Bとは互いに最も強め合います。そして、この瞬間のちょうど1秒後にも、波Aも波Bもまた"てっぺん"に来ますから、同じことが起こります。ですが、ちょうど0.5秒後を考えると、波Aは1秒間に100回振動する訳なので、0.5秒間にはちょうど50回振動し、また"てっぺん"に来る一方、波Bはその間に50.5回振動し、逆に"どん底"に来ます。よって0.5秒後の時点では、波Aと波Bとは互いにちょうど打ち消し合うことになります。まとめると、ある瞬間①に2つの波が最も強め合い、その0.5秒後②には打ち消し合い、さらにその0.5秒後③には①と同様にまた強め合います。また、①と②の間や②と③の間には、ちょうど打ち消し合ったり、最も強め合ったりする瞬間はありません(細かい証明は省きます)。この結果、「うわんうわんうわん」の「うわん」1個分がちょうど1秒になるようなうなりが発生します。

三角関数の加法定理をご存じであれば、次の計算をするとより明確です:sin(2π(f-a)t) + sin(2π(f+a)t) = (sin(2πft)cos(2πat) - cos(2πft)sin(2πat)) + (sin(2πft)cos(2πat) + cos(2πft)sin(2πat)) = 2sin(2πft)cos(2πat)。なお、上で挙げた例は、f = 100.5、a = 0.5 の場合に相当します。すなわち周波数がfよりaだけ小さい音とaだけ大きい音とを重ね合わせたものは、周波数fの音の振幅を、周波数aの正弦波に比例して大小させたものと等しいのです。

さて、このうなりですが、ピアノなどの楽器で異なる高さの音を同時に弾いた場合にも聞こえることがあります。

以前もこのコラムで触れましたが、一般的な楽器の音は、様々な周波数の正弦波の重ね合わせと見なすことができます。そしてそこで重ね合わさっているのは、鳴らしているメインの音の周波数がfだとすると、周波数f, 2f, 3f, 4f,・・・の正弦波です(※実際の現象はもう少し複雑です)。ですから、たとえばピアノで周波数440Hzの「ラ」の音を弾くと、周波数880Hz, 1320Hz, 1760Hz,・・・の音が同時に鳴っているような状態になります。

一方、現代の楽器は、様々な事情から、「平均律」と呼ばれる方法でそれぞれの音の高さを決めています。これは、1オクターブ(周波数比1:2)をちょうど12等分するもので、すなわち隣り合う2音の周波数比を1:2^(1/12)(=2の12乗根)とするものです。ですから、ピアノが平均律で調弦されているとすると、先ほどの「ラ」の少し上の「ミ」の音の周波数は440×2^(7/12)≒659.255Hzになります(ラとミの間の音程は半音7個分です)。そしてこの音には、その2倍の周波数である約1318.51Hzの音が含まれます。

ここで、「ラ」と「ミ」を同時に弾くことを考えてみましょう。するとここでは、1320Hzの音と、約1318.51Hzの音が同時に鳴っているような状態となり、うなりが発生します。もしピアノがいわゆる「純正律」で調弦されていて「ミ」の音がちょうど660Hzならば、このうなりは発生しません。

このようなうなりは注意深く聴かないと認識できないわずかなものですが、平均律と純正律の違いを実感できる一つの方法です。ピアノを触る機会があれば(もしくは最近ではアプリなどでもいくらでも音を出せますね)、ぜひご自分でも試してみてはいかがでしょうか。

━【「現代数学の視座と眺望7」(元K会数学科講師:立原礼也) 】━

2025年8月14日 更新

━【現代数学の視座と眺望№7(K会元数学科講師:立原礼也) 】━
★「現代数学」、つまり大雑把には「大学の数学科レベルの数学」は、中高で習う数学と地続きに繋がっていながらも、様々な面で、全く新しい考え方に基づくものでもあります。筆者が数学を専攻することに決めたのも、この新しくも自然な考え方の数々に魅了されてのことでした。このコラムでは、現代数学におけるものの見方=「視座」、そしてそれによるものの見え方=「眺望」の解説を通じ、現代数学の魅力の一端をお伝えしていきます★


数学的思考における「同期化」

読者の皆さん、こんにちは。
K会数学科元講師の立原礼也と申します。

前回の第6回は、数学における抽象化と、それによって生じる難しさについて論じました。そして最後に第7回の予告として、「抽象化に伴う数学の学習上の難しさに対する向き合い方についてコメントする」予定である旨を述べました。ただ、もちろん「学習上のアドバイス」のような内容だけの記事では面白くありませんし連載の趣旨にも即しませんので、今回もキーワードを1つ設定してみることにしました。それがタイトルにもある「同期化」という単語です。「同期化」は数学的思考の様々な異なったレベルにおいて、異なった形で見出すことのできる現象であり、人間の数学的思考の1つの本質だと私は思っています。その意味でも、この連載において、一度この「同期化」をテーマとした回を設定しておくことには意味があるでしょう。ただし、今回紹介する意味での「同期化」というのは私が勝手に使っている言い回しであり、他の数学関係者に対して言っても説明なしには伝わらないと思いますので、その点はご注意ください。また、「人間の数学的思考の」等と言っていますが、基本的には筆者自身の個人的な学習体験・教育体験をベースに論じるしかありませんから、また別の意見をお持ちの数学関係者の方もいらっしゃるに違いありません(むしろ、だからこそ私がこの記事を書くことに意味があると思うのです)。この点もまたご承知おきください。

それでは、この「同期化」とは一体何なのでしょうか。実はこの単語は前回の議論にも既にこっそり登場させていました。ですので、まずはそれを復習しましょう。前回は次の初等的な問題と、その2通りの解法を例にとって議論をしていました。

=====
問題
ノート1冊は鉛筆1本より40円高く、ノート1冊と鉛筆1本の合計金額は100円であるとする。鉛筆は1本いくらか。
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この問題の1つの解法は、100-40=60という引き算によって鉛筆2本分の値段を計算して、そこから60÷2=30という計算で鉛筆1本分の値段を得るというものです。また、もう1つの解法は、鉛筆1本分の値段をx円として、(x+40)+x=100という方程式を作り、これを解いて(2x=60という式を経由して)x=30を得るというものです。これら2つの解法で行う計算の実質は同じなのですが、解いている人の思考状態としては明確な違いがあります。それは、前者は「現実の世界」と「数学の世界」を常に結び付けながら考えているが、後者は基本的にはそうではない、ということです。もう少し詳しく述べましょう。前者では、例えば100-40=60という計算をしたとき、その式に対応する現実の意味を考えて、「鉛筆2本で60円なんだ」ということを明確に意識しています。そして、そのように「現実の世界」との対応関係を把握しているからこそ、それに続く60÷2=30という計算で答えが求まっていることもわかるのです。一方、後者の解法では、ただ抽象的な数式として中間結果2x=60が得られており、ここで「xは、鉛筆1本の値段がx円、として意味付けられている」ということを意識している必要は全くありません。一旦「現実の世界」のことは忘れて方程式を解き切ってx=30まで到達してから、最後に初めて「そういえば、鉛筆1本の値段がx円でしたね」と思い出せば、答えが出てくるわけです。

この前者の解法における、「「現実の世界」と「数式の世界」を常に結び付けながら考える」という頭の働き方が、「同期化」の一例になります。「現実の世界」と「数式の世界」の2つの世界を(そうと意識するかは別として)頭の中に両方とも用意して、対応関係にある操作を常に同時実行的に、いわばシンクロさせながら考えていくのです。(同期化という単語を私は、シンクロ、つまりシンクロナイゼーション(synchronization)の和訳のつもりで用いています。)後者の解法はこれとは違って同期化が見られません。「現実の世界」と「数式の世界」の結び付き自体は確かに登場するのですが、その結び付きは最初に方程式を立てるところ、最後に「x=30」を「鉛筆1本は30円」と解釈するところ、2回しか使われません。途中の部分はずっと同期化を切って、「数式の世界」単体で完結する操作をしているのです。こういった「同期化を切った」考え方への移行が汎用性の向上をもたらし、数学の発展に寄与する一方で、しばしば学習者にとってはその習得を難しくするというのが、前回行った議論の大体の要約(を今回のキーワード「同期化」の観点で捉えなおしたもの)になります。(ただし前回は、「同期化を切る」とは階層の異なる「抽象化」をキーワードにして論じていました。詳細は前回記事をご参照ください。)

さて、それでは、この(前者の解法に見られるような)同期化的思考それ自体が、数学の発展の観点からは「無用の長物」なのでしょうか?数学を学ぶ上でも、この「同期化」的思考を、なくしていったほうがよいのでしょうか?いいえ、決してそんなことはありません。むしろ「同期化」的思考は人間の数学的思考の1つの本質である、というのが私の考えです。確かに上の例では、「現実の世界」と「数式の世界」の同期化を切ることが数学の発展の方向性でした。しかし、「同期化」の枠組みを用意すること自体は有益であり、数学という学問の発展のためにも、学習者が理解を深めるためにも、むしろ積極的に利活用されるべきものなのです。以下では、いくつかの具体例に触れながら、これをもう少し詳しく論じてみたいと思います。

中学校に入って方程式の考え方を勉強してゆく上で、「現実の世界」と「数式の世界」の同期化にこだわり続けるのは流石にちょっと無理があります。何しろ、上の文章題の例でもわかることですが、「現実の世界」の意味とは切り離されて、純粋に抽象的な「数式の世界」で完結した枠組みに収まっていることこそ、方程式の考え方の本質的な側面です。しかし、だからといって、この同期化が全く無駄になるわけではなく、むしろこれは「勉強の土台」としてほぼ必須と言ってよいものです。例えば、「鉛筆1本の値段がx円なら、鉛筆2本の値段は2x円だよね」といった思考が呼吸のようにこなせるようになっていないと、地に足の着いた形で複雑な数式を理解することは困難でしょう。(もちろん、そのために、「鉛筆1本の値段が30円なら、鉛筆2本の値段は60円だよね」といった更に具体的な考察がこなせるようになっていることも必須です。)この例は「具体例と抽象論の同期化」の重要性を示していると言えます。様々な具体例が予めわかった上で、それらを念頭に置きながら抽象論を考えることで、地に足の着いた抽象論の理解に到達できるのです。逆説的ですが、同期化の思考回路がしっかり確立できているからこそ、同期化を切り離した抽象論の理解も盤石になるのです。いずれにしても、こういったことは中高数学の勉強でも、現代数学の進んだ勉強でも、あるいは最先端の研究の現場ですら同じことだと思います。

以上から数学を勉強していて困難を感じた際の対処のヒントも得られます。(もちろんこれは単なるヒントに過ぎず、個々人で色々な事情や個性がありますので、唯一絶対の指針はありません。)例えば、上の中学校1年生の数学で、方程式の勉強でよくわからなくなった場合、まずは小学校の算数の文章問題を沢山解く練習をするのが有効な初手になる場合がかなり多いのではないかと筆者は考えています。こうして具体例に徹底的に親しんだ後で、常に具体例を当てはめながら(つまり、具体例との同期化を図りながら)抽象的な文字式を扱うようにするのが、ひとつの妥当な方針なのではないでしょうか。現代数学でも同じことで、抽象論がよくわからないときは、必ず具体例を納得のいくまで考えるべきです。それも、1つの例ではなく、10個の、100個の例を考えるべきです。そして、その例に当てはめながら抽象論を考えてゆくのです。

前段までに論じた「具体例と抽象論の同期化」と(関係は深いのですが)別の階層にある観点として、「イメージと厳密な論理の同期化」も非常に重要です。引き続き初等的な例で考えてみましょう。方程式を解く上での1つの重要な原理に、「a=bならばa+c=b+c」という(当たり前な)含意が挙げられます。これ自体は、数学の世界に属する、厳密な含意関係です。一方、これは、等式を「左と右で釣り合っている天秤」に喩えることにすると、「釣り合っている天秤の左右に、同じ重さのおもりを乗せても、釣り合ったまま」というイメージで捉えることもできます。「イメージと厳密な論理の同期化」とは、この含意の議論をするときに、同時に、天秤の左右におもりを乗せるアニメーションを脳内再生する。といった感じの頭の使い方を指しています。この天秤の例はあくまでも説明用の例で、実際の式変形でこれをやるのは不利益の方が大きいかもしれません。(私自身、等式を変形するときに天秤のアニメーションを想像することはまずありません。)しかし、こういった思考を適切に確立できている人の場合、特に、原理的な理解ができていることになりますので、例えば(中学生のやりがちな)「移項の符号ミス」などを起こす頻度は非常に低くなるでしょう。つまり、適切なイメージの確立は、「原理がわかっていれば有り得ないエラー」に対する耐性を与えてくれるのです。また、現代数学の議論では非常に複雑な概念や対象を扱う必要に迫られるため、適切なイメージの確立による思考のショートカットは、効率の向上のためにも有益です。中高数学で言うと、「単調増加関数」と言ったときに「x≦yならばf(x)≦f(y)」のように定義通り捉えることも大切ではある(というか、数学ですから、「定義通り」が圧倒的に一番大切である)のは間違いないのですが、同時に「右肩上がりのグラフ」を視覚的に想像できていると、考察を進める上で便利でしょう。こういったことが「イメージと厳密な論理の同期化」です。

「イメージと厳密な論理の同期化」においては特に注意点もあります。例えば、上の単調増加関数の例では、定義を見直すとわかる通り、グラフが右肩上がりというよりは横ばいの定数関数(増えも減りもせず一定値の関数)や、大体右肩上がりだけど一部で横ばいになっている関数なども例になっています。(この記事では「広義単調増加関数」すなわち「非減少関数」のことを「単調増加関数」と呼ぶことにしたためです。なお。今回の趣旨とは関係のない別の話ですが、同じ語が文献によって相異なる定義で用いられることもよくありますから、知っているつもりの言葉であっても定義をしっかり確認しておくのも数学では大切なことです。)ですから、(広義)単調増加関数を考える際にこの「右肩上がり」だけを想像して、それに頼って議論してしまうと、間違った議論をしてしまう可能性があります。

こうした「不適切なイメージ」に引きずられた間違いを防ぐために大切なことが2つ思いつきます。まず、当たり前なことですが、イメージに頼りきりで考えるのではなく、むしろ言葉や式で行う厳密な議論の方を大切にすること。しつこいようですが、ポイントは、両方を大切にした上で結び付けて並行的に処理する「同期化」なのです。そして数学は論理を立脚点にしていますから、特に習得を目指す上での最初のマイルストーンとしては、(イメージの確立というよりも)厳密な議論が一通りできるようになることを目指す方が適切であることが多いでしょう。イメージはあくまでも常に仮説的・暫定的な補助具です。厳密な議論と頭の中のイメージが矛盾した時には、少なくとも学習の初期段階ではイメージの方を修正すべきです(上級者になればイメージを活用して議論の間違いを検出することができたりもするのは、先述の「移項の符号ミス」の例が示す通りです)。(ただし、このあたりのバランスは非常に難しく、適切な指導者の存在が特に望まれる部分です。私自身、独学で大学レベルの数学を学び始めたころには、厳密な議論を習得することばかりに気を取られてイメージの形成が遅れたことが原因の苦労が沢山あった気がします。)もうひとつのポイントは、多種多様な具体例を知り、意識しておくこと。特定の限定的な具体例だけを知るのではなく、なるべく多くの具体例を把握することが、適切なイメージの形成の役に立ちます。このことは上の単調増加関数の例からも想像がつくでしょう。この意味で「具体例と抽象論の同期化」と「イメージと厳密な論理の同期化」は密接な関係にあることもわかります。

前段の最初に「間違いを防ぐために」と書きましたが、数学者も人間ですから、数学の議論において多種多様な間違いを犯します。(学術論文にまとめる段階では、丁寧に考え直して間違いをつぶしてゆきます。)そして私の知る限りでは、間違いのひとつの典型は、まさに「イメージをベースとした(厳密な議論との同期化を切った・緩めた)考察をして間違える」、というものなのです。数学者と言えば物事を厳密に考えるイメージの方が強いと思いますので、これは意外に思われる読者もいるかもしれません。もちろん実際、多くの数学者は、厳密に考える能力自体は持ち合わせています(最終的に論文にまとめるときにはそれを発揮します)。しかし、クリエイティビティを発揮する段階では、完全に厳密に議論を遂行するよりも、新しいアイデアを見出すことなどの方が遥かに優先度が高く、そこにイメージ的な理解が活きてくるのです。もちろん、それと同時に厳密な議論も遂行できるに越したことはないのですが、高度に複雑化した現代数学の考察を最初から厳密な形で実行することはしばしば無理があります(脳の処理限界を超えます)。ですから、一旦はそちらをあきらめてイメージベースの考察に注力するのは、ある程度仕方がないことなのです。その結果、しばしば間違いが生じるというわけです。ただし、細かいところが間違っていても多少の努力で修復が可能だったり、あるいは完全に間違っているけれど次なる考察への第一歩にはなったりと、間違いだとしても無意味ではないこと、「ただでは倒れない」ことが強く望まれます。そして実際に数学者の失敗はそのような「ただでは倒れない」ものになっていることも多いのです。こういった「間違いを含むかもしれないけれど、そうだとしても、無意味・的外れではない」議論が効率よく生産できるようになるためには、同義反復的ですが、やはり、あてずっぽうのイメージではなくて、妥当な、適切なイメージを確立できていることが非常に重要です。そのためにも、やはり、訓練の段階では「イメージと厳密な論理の同期化」を予めしっかり確立しておくことが大切になります。

以上に「具体例と抽象論の同期化」「イメージと厳密な論理の同期化」という2種類の「同期化」の観点、そしてそこから自然に導かれる学習上の指針のヒントなどについて述べてきました。最初に述べたことの繰り返しになりますが、筆者はこういった「同期化」を、人間の数学的思考の非常に本質的な側面であると考えています。ですから、これから数学の勉強を進められる読者の方も、この「同期化」的思考回路の確立を意識して目指してみてほしいのです。もちろん、2つの異なる要素の両方をきちんと用意して、更にそれらを結び付けながら並行的に処理することが求められるため、その確立の過程では大変な負荷がかかります。しかしそれは数学をきちんと理解するためには不可避な、本質的な難しさだと筆者は思うのです。ゆっくり進めてゆくしかありません。そうして「同期化」の回路を確立してしまうことで、気づいたときには世界の見え方が一変しているのです。個人的な話にはなりますが、この「世界の見え方が一変する感覚」は、まさに筆者を次なる数学に向かわせる最大の原動力でもあるのです。


=====
(意欲ある読者に向けた、答えのない演習問題)

1. あなた自身の数学的思考の中にどのような「同期化」を見出すことができるか、考えてみてください。

2. 今回の記事に登場させることがかなわなかった、また別の重要な(そして、より数学的な)「同期化」の例として、「同型対応を通じた両側の議論の同期化」が挙げられます。当コラム第3回記事を参考に、そこで起きている同期化について検討してみてください。

★夏期講習2タームの締切について★

2025年7月30日 更新

みなさんこんにちは。K会事務局です!

夏期講習第2タームの講座は8月1日(金)中にお申込みください!
2ターム(8月5日~8月8日)の講座は下記6講座です。
・初等幾何(14:00~17:10)
・整数論(14:00~17:10)
・情報オリンピック予選問題に挑戦!(14:20~17:10)
・グラフ理論(17:30~20:40)
・英語で読む数学(17:30~20:40)
・物理数学(17:30~20:40)

講座の詳細はこちらから

講座を受講されたみなさんの声
●初等幾何●
知らなかった定理の証明はもちろん、知っていた定理も「何故そうなるのか」を知ることができました。(筑波大学附属・中1)
円周角の定理や内接四角形の性質を逆にすれば、色々な証明に利用できることが分かりました。(京華・中2)

●整数論●
平方乗除の相互法則の証明がすごくきれいで印象的でした。(筑波大学附属駒場・中2)
環や体などのはなしは難しかったが、新しい数学の世界に触れられた気がした。(市川学園・中2)

●情報オリンピック予選問題に挑戦!●
自分で勉強しようとすると挫折しそうなことも、先生や他の生徒がいるから頑張ろうという気持ちになれた。人から直接教えてもらうと分かりやすいし、受講してよかった。(筑波大学附属・中2)
計算量の説明がわかりやすく、オーダー記法の基本をしっかり理解することができました。競プロが強くなれるように頑張ります。(桜蔭・中2)

●グラフ理論●
一見、グラフとは関係ない問題も、グラフを用いることで簡単に解けるようになることが面白かったです。(学習院中等科・中2)
点と線だけでこんなにも楽しい定理が生み出されるということに感動しました。先生の解説もとても分かりやすかったです。(横浜雙葉・高1)

●物理数学●
先生が抽象なものに対する例を多く示してくれたり、内容を掘り下げた深い話をして下さったりしたおかげで、あきずに楽しめました。(筑波大学附属駒場・高1)
物理の基礎となる微分積分についての理解がかなり深まりました。(横浜サイエンスフロンティア・高2)

※「英語で読む数学」は2025年度夏期講習が初開講

K会の授業は河合塾本郷校で行います。大きな校舎ですが「こんにちは!」の挨拶に始まり、受講場所のご案内や、施設利用についてお一人ずつ丁寧にご案内します。
少人数授業のため講師もみなさんの様子を見ながら、授業のペースや出題する問題などをその都度変えており、質問や机間指導にもじっくりお応えしています。
塾がはじめてという方も安心してご受講下さい!

みなさんとお会いできることを講師・スタッフ一同楽しみにしております♪

お問合せ
K会事務局 ☎03-3813-4581
受付時間 火~土曜日(13:00-19:00)
※お申し込みはWebから

★夏期講習1タームの締切について★

2025年7月17日 更新

みなさんこんにちは。K会事務局です!

夏期講習第1タームの講座は7月25日(金)中にお申込みください!
1ターム(7月29日~8月1日)の講座は下記4講座です。
・数(14:00~17:10)
・Pythonではじめるプログラミング入門(14:00~17:10)
・【対面】数学オリンピックに学ぶ証明問題の考え方(17:30~20:40)
・【映像】数学オリンピックに学ぶ証明問題の考え方(配信:8月12日~9月16日)

講座の詳細はこちらから

講座を受講されたみなさんの声
●数●
複素数、二重根号、行列など知らなかったことをたくさん学ぶことができた。複素数の偏角など説明がとても分かりやすかったです。(渋谷教育学園幕張・中1)
複素数などまだ聞いたことないことを分かりやすく説明してもらえ、中1の自分でもある程度理解できるようになったことが印象的でした。(公立・中1)

●Pythonではじめるプログラミング入門●
先生の教えも教材もとてもわかりやすかったです。(桜蔭・中1)
わずか4日間で簡単なコードを自分で考えて書くことができるようになりました。新しいことを1つずつしっかり学べて楽しかったです。(暁星・高1)

●数学オリンピックに学ぶ証明問題の考え方●
今ままで問題を解くことに重点を置いてきて、必要な取り組み方を意識したことがなかったので勉強になりました。(桜蔭・高1)
一見すると複雑そうに見える式や図形から重要な要素を取り出すことで、簡単に解けるようになるということにおどろきました。(明治大学附属中野・高1)

K会は無学年制のため、講座によっては中学1年生から高校3年生までの方が同じ授業を受けています。
受講目安に書かれた知識をお持ちであれば、学年は問いません。
内容に不安がある場合は校舎にてテキスト閲覧や、事前にZoomなどを用いた個別受講相談が可能です。
不安な方はお気軽にご連絡ください!

お問合せ
K会事務局 ☎03-3813-4581
受付時間 火~土曜日(13:00-19:00)
※お申し込みはWebから

━【「言語学をのぞいてみよう その41」(元K会英語科講師:野中大輔) 】━

2025年7月15日 更新

━【「言語学をのぞいてみよう その41」(元K会英語科講師:野中大輔) 】━
★このコラムでは、言語学を研究している筆者(元K会英語科講師)が、英語・言語学・外国語学習・比較文化などの話題をお伝えしていきます。★

動詞と目的語を深掘りする:「穴をあける」はどう表されるか

私の専門分野は言語学で、英文法を研究しています。英文法にもいろいろなトピックがあるのですが、私の場合は特に動詞と目的語に注目しています。今回は動詞と目的語の関係について取り上げつつ、英語のちょっと変わった表現を紹介したいと思います。

日本語の「ボールを蹴る」や「りんごを食べる」といった表現でも、英語のkick a ballやeat an appleといった表現でも、目的語が表しているのは動詞が示す行為の対象です。これらの表現では、ボールやりんごがあって、それに対して蹴る、食べるという働きかけを行うことが表されています。一方、「家を建てる」やbuild a houseという表現の場合、家に対して何かを行うわけではなく、行為の結果として出来上がるのが家だと言えます。このように、目的語が行為の結果に当たるものを表す場合、結果目的語と呼ばれます。「手紙を書く」とwrite a letter、「絵を描く」とdraw a pictureなども結果目的語の例です。

動詞の中には、この2種の目的語が両方とも可能なものもあります。たとえば「掘る」とdigです。「地面を掘る」とdig the groundにおける目的語は行為の対象を表しますが、「(地面に)穴を掘る」とdig a hole (in the ground) の場合は結果目的語です。ここで「掘る」やdigという動詞がどのような行為を表すかを考えてみると、おおむね〈地面に対して土を取り除くなどの働きかけを行い、その結果として穴を作る〉のようなものだと言えるでしょう。この前半部分に着目した場合は「地面を掘る」やdig the groundという言い方になり、後半部分に着目した場合は「穴を掘る」やdig a holeという言い方になると考えることができます。

ここまでは日本語・英語に共通の例を紹介してきましたが、違いが見られるケースもあります。日本語では結果目的語として「穴」が用いられるのは基本的に「穴を掘る」という表現ぐらいで、たまに「穴をくり抜く」のような言い方も見つかりますが、いずれにせよ、意味の中に〈その結果として穴を作る〉が含まれている動詞に限られます。一方、英語の場合、〈その結果として穴を作る〉という意味が含まれていないように思われる動詞であっても、holeを結果目的語とする表現が成立します。たとえば(1)や(2)のような表現が可能です。kickやeatの目的語にholeが用いられるなんて、おもしろいですよね。

(1)He kicked a hole in the wall.(彼は壁を蹴って穴をあけた。)
(2)The mouse ate holes in the floor.(そのネズミが床をかじって穴をあけてしまった。)

先ほど見たdigの例と(1)や(2)のような例では違いもあります。dig a hole (in the ground) の場合、括弧でくくったin the groundの部分はなくても自然な表現になりますが、(1)と(2)の例でin the wallやin the floorの部分を取り除いてしまうと、おかしな文になってしまいます。〈穴を作る〉という意味が含まれていないような動詞の場合、[動詞+hole+in ...]という構文(inの他にintoやthroughも可)で用いるときのみ、holeが結果目的語として解釈されて、穴を作ることを表すと考えればよいでしょう。私はこの構文を「穴あけ構文」と呼んでいます。

私は大学生のときに穴あけ構文に興味を持ち、卒業論文ではこの構文を取り上げました。それ以来、この構文の用例を集めるようにしています。その中から、ニュース記事で用いられた例(3)を紹介します(The Independent紙より。用例の出典は本コラムの末尾にまとめて記載)。どのような意味になるかわかりますか? 英文に出てくるMr Wynnはアメリカの実業家で美術品の収集でも有名なSteve Wynn(スティーブ・ウィン)氏のことで、Le Reveはピカソの絵画です(日本語だと「夢」と呼ばれています)。

(3)Mr Wynn elbowed a hole in Picasso’s Le Reve as he showed it to guests in his office last month.

(3)でa holeの前にあるのはelbowedです。elbowは名詞だと「ひじ」ですが、ここでは-edが付いている、ということは動詞になっているのだとわかります。それが穴あけ構文で用いられているわけですね。ということで、(3)は「先月、ウィン氏はオフィスで客人にピカソの『夢』を見せていた際に、ひじをぶつけて穴をあけてしまった」といった意味になります。

(3)は2006年の記事から引用したのですが、この事件は世の中に衝撃を与えたようで、現在も語り継がれています(なお、この絵は後に修復されています)。(4)は2018年に別の問題(セクシャルハラスメント疑惑)でウィン氏を取り上げたBBCの記事ですが、ここでもピカソの絵の件が触れられていて、やはり穴あけ構文が用いられていました。

(4)He famously accidentally elbowed a hole in the middle of his Picasso painting when preparing to sell it for a record $139m (£74m) in 2006
(よく知られているように、ウィン氏は2006年に、所有するピカソの絵画を史上最高額となる1億3900万ドル(7400万ポンド)で売却する準備を進めていた際に、誤ってその絵の真ん中にひじで穴をあけてしまった。)

今回は動詞と目的語の関係に注目し、穴あけ構文について紹介しました。(1)から(4)のような表現があるなんて知らなかったという方もいるかもしれませんが、こうやって印象的な例を見たら、きっと忘れないんじゃないかと思います。


用例出典
(3)
https://www.independent.co.uk/news/uk/this-britain/london-renoir-exhibition-to-focus-on-landscapes-422581.html

(4)
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-42848795

★夏期講習のお知らせ②★

2025年7月8日 更新

みなさんこんにちは。K会事務局です!

夏期講習の開始まで3週間を切りました!
近頃よく、「夏期講習の〇〇〇講座はまだ申し込めますか?」というお問合せをいただきます。
定期テストも終わり、夏の予定を考え始めた方も多いのではないでしょうか。現時点での申し込み状況は下表の通りになっております。
ターム時限講座名空き状況
11
11Pythonではじめるプログラミング入門
12数学オリンピックに学ぶ証明問題の考え方
21初等幾何
21整数論
21情報オリンピック予選問題に挑戦!
22グラフ理論
22英語で読む数学
22物理数学
31サイバーセキュリテイ入門
31病理学入門
32放射化学・核化学入門
32地質学
32古生物学
32言語学オリンピックで入門する音韻論
41座標幾何
41形式言語理論と数理言語学
42極限
42楕円曲線上の有理点
42地理オリンピック国内予選問題研究会2025
✕:締切  ▼:残り5名以下  △:残り10名以下  〇:残り10名以上
※数学オリンピックに学ぶ証明問題の考え方の映像受講については定員はございません
※講座の詳細はこちらから

初めてのご受講は不安かもしれませんが、講習初日に1階の受付カウンターで教室や施設のご案内をいたします。
また、忘れ物や先生への質問など、困ったことや自分一人では緊張することがあれば、
いつでもK会スタッフがサポートいたします!

「敷居が高い」「近寄りがたい」イメージがあるかもしれませんが、実はK会はとてもアットホームな場所です。
講師はもちろん、スタッフも優しく丁寧な方ばかりなので安心してくださいね。

夏期講習で皆さんとお会いできることを楽しみにしております♪


お問合せ
K会事務局 ☎03-3813-4581
受付時間 火~土曜日(13:00-19:00)
※お申し込みはWebから

★夏期セミナーのご案内★

2025年7月4日 更新

本日は中高生とその保護者の方を対象とした夏期セミナーのお知らせです!

『数学を通して学ぶ音楽~音楽と数学の不思議な調和~』
7月26日(土)13:00~15:00
講演者:布施音人
講演案内はこちらから

数学と音楽の共通点は?
と問われたらみなさんは何か思いつくでしょうか。

論理的な数学と、感性に訴える音楽。全く違うように見える二つではありますが、人類は古くからこの2つに共通点を見出してきました。
例えば数学者として有名なピタゴラスもそのひとりです。ピタゴラス音律という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

ピタゴラス音律は音と音の周波数の比が1:2、2:3、3:4など特定の整数比のときに美しいハーモー二―になるというものです。
音楽に詳しい方はオクターブ、完全五度といった音程をイメージしてください。
ピタゴラスがこの音の性質に気づいたきっかけは、鍛冶屋(最近のみなさんは刀鍛冶といったら分かりやすいでしょうか。とあるアニメに刀を叩いて鍛えるシーンがありますよね。)の前を通りかかった時に響いていたハンマーの音だったそうです。
複数のハンマーの音が、美しく響くときとそうでないとき、その違いを調べたところハンマーの重さに違いがあることがわかりました。
そのハンマーとハンマーの重さの比が音の響きの美しさに関係しているというのが、ピタゴラス音律の発見のもとになったと言われています。

このピタゴラスように音の美しさを突き詰めて調べていくと、そこに数学的な法則が隠れていることがあります。
今回のセミナーではそんな音楽と数学のつながりを実際に楽器を使った演奏を交えながら分かりやすくご紹介していきます。
講師はK会数学科の元講師であり、ジャズピアニストとしても活躍されている布施音人さんです。

数学が好きな方も、音楽が好きな方も、ご家族やお友達をお誘いのうえお気軽にご参加下さい!

お申込・お問合せ
K会事務局 ☎03-3813-4581
受付時間 火~土曜日(13:00-19:00)

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