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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第46回 工学部 イベントレポート | 体験授業・イベント

「欠陥に着目した最先端の物質科学」

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2022年6月26日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名古屋大学と河合塾のタッグで授業

イベント風景

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第46回 工学部を、2022年6月26日(日)河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学工学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

現代社会で活用される「欠陥」について

松永 克志教授

第1部:欠陥に着目した最先端の物質科学
松永 克志(まつなが かつゆき)教授(工学研究科 物質科学専攻)

松永先生がご専門の物質科学は、物理学・化学・数学等を使って、物質・材料を研究する分野です。物質・材料とは、現代社会や未来社会において、私たちの生活に欠かせない製品に使われる素材のことです。素材は大きく分けて「金属」「半導体」「セラミックス」「有機・高分子」の4つに分類されます。今回の講演では、「金属」「半導体」「セラミックス」などの無機材料を題材にお話しいただきました。
松永先生は、結晶のミクロな構造と欠陥についてご説明くださいました。結晶は、膨大な数の規則的に並んだ原子からなります。結晶の構造はどの元素からなるかによって決まり、ひとまとまりの繰り返しからなります。この中で、「異種原子」と呼ばれる思わぬ原子が混ざっているところや、「空孔」という抜け落ちたところを「点欠陥」と呼びます。また、「転位」「結晶粒界」という他の欠陥についてもご紹介いただきました。「欠陥」とは、原子の規則的な並びが乱れたところです。「欠陥」と聞くと悪いことのように聞こえるかもしれませんが、松永先生は悪いことではないということを、大きく分けて2つの現象を例に教えてくださいました。
1つめは「酸化アルミニウム結晶」を例に、他の元素が結晶に混ざると着色するという現象についてご説明くださいました。私たちに聞き馴染みのあるルビーやサファイヤは、2つとも同じ結晶ですが、混ざる元素が違うため赤と青の異なる色になるそうです。このような現象も点欠陥によるものです。
2つめは、結晶が明るいところでは硬いものの、暗いところでは軟らかくなり、力が加わった際に壊れにくいという新しく発見された現象があります。軟らかくなるのは「転位」という結晶の欠陥が原因であり、「転位」は暗闇になると増えるためにこのような現象が起こります。
松永先生は物理工学について、「漠然としたイメージがあるかもしれないが、私たちの生活に密着している」として、スマートフォンなども例にしてお話しくださいました。また物質科学は、新しい素材を作り出したり新しい性質を見出したりして、世の中の役に立てる方法を開発している分野であるとお話しくださいました。大学で研究している内容は、理学部に興味のある方のやりたいことにもフィットするような、様々な方が学びやすい領域であるとご説明いただき、参加者の生徒のみなさんの進路選択の幅や興味が広がる素晴らしい講演でした。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
材料デザイン工学専攻(リチウムイオン固体電池) 野島 悠生(のじま ゆうき)氏
電気工学専攻(核融合プラズマ) 夏目 祥揮(なつめ ひろき)氏

第2部では、名古屋大学大学院工学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

材料デザイン工学専攻(リチウムイオン固体電池) 野島 悠生 氏

野島 悠生氏

野島さんは初めに、高校時代の進路選択についてお話しされました。名古屋大学工学部への進学は、昔から化学が好きだったこと、高校1年生の時に東北大学の教授の話を聞いて材料工学という分野を初めて知り、興味を持たれたことがきっかけでした。そこで化学の知識を生かして社会の役に立ちたいと考え、材料工学を学ぶことができる大学に進学されました。入学後に、ほとんどの学生が大学院に進学していると知り驚いたそうです。次に現在の大学生活についても触れられ、名古屋大学の1、2年次から4年次までのカリキュラムや、勉強以外で大学時代に楽しかったこともお話しされました。野島さんは3回生の時に進みたい研究室が決まったそうで、4回生で研究室に配属され、大学院に入るための勉強と卒業研究に励まれました。教授とテーマの相談をし、研究テーマの似た先輩のもとで実験器具の扱い方や、データのまとめ方も学ばれました。

次に、マテリアル工学科の学部のある場所の周囲環境や、在籍生徒数なども紹介いただき、現在の研究内容について詳しくお話されました。野島さんの所属する研究室ではエネルギー問題の解決のために、新しい電池の研究開発が進められていますが、固体同士の接触性の悪さに起因する抵抗や、負極との間でリチウム金属が析出する際に固体電解質を壊してしまう現象が起きており、電池として使うにはまだまだ多くの課題があると述べられました。普段、学生が行っている研究については、全固体リチウム電池の短絡現象の解明について資料を用い説明されました。リチウム金属はイオン化傾向が大きく、空気中にほっておくと燃えてしまう危ない物質であるため、アルゴンで充満された箱の中で扱うようにしています。リチウムを装置の中に入れて、空気を抜いて圧力を下げ蒸発させやすくし、蒸発させたリチウムが膜として残るという仕組みになっています。こういった研究を通じて短絡の依存性からの原因を究明しているということでした。また別の研究についても2つの例を挙げられお話しされました。
最後にご自身の研究内容のまとめと今後の方針について話され、講演を締め括られました。

電気工学専攻(核融合プラズマ) 夏目 祥揮 氏

夏目 祥揮氏

夏目さんは初めに、自己紹介と経歴についてお話されました。中学生のときに「天使と悪魔」(ダン・ブラウン著)という本を読んで巨大エネルギーに興味を持つようなり、それが現在の研究に繋がったということです。化石燃料の体積可能年数が50~132年ということから、将来的には化石燃料が枯渇することが予想されるため、新たなエネルギー源を獲得しなければならないというミッションがあり、現在はそのための研究をしていらっしゃいます。核融合燃料が1グラムあれば石油約8トン分のエネルギーが生み出せるという例を挙げ、そのような理想的なエネルギー源を作ることが核融合発電の研究であるとお話しされました。
次に、核融合反応がどのように起きるかということを、動画を用いてご説明いただきました。核融合反応を制御するための巨大装置を1985年に旧ソ連のゴルバチョフ大統領とアメリカのレーガン大統領が冷戦の終結の象徴として一緒に作ろうという計画が始まりました。現在ではアメリカ・ロシア・中国・日本・韓国・インド・欧州で部品を分担して製造し、最後に超巨大な核融合装置を作ろうという計画が進んでいます。その計画が進んでいる中で、夏目さんの研究室がどのような研究をされているかをお話しいただきました。

熱核融合発電炉という装置では、ダイバータ板到達前の超高温の熱処理が必要という課題があります。これを解決するための手段が、非接触プラズマによる熱負荷低減です。これは、プラズマ粒子と中性粒子との相互作用によって気相中でプラズマを消滅させることにより、ダイバータ板への熱負荷を低減させる手法です。これが現在有望視されています。ただ、この非接触プラズマがまだ完全に理解できていないため、名大では現在この研究が進められています。夏目さんは修士2年のときに5か月間、南フランスにあるITER機構にインターンシップに行かれていました。そこでは、ダイバータ不純物モニターの計測シミュレーションをして様々な問題を明らかにしていくということに取り組まれました。このダイバータ不純物モニターは反射光の影響を大きく受けるため、レイトレーシングという手法によって反射光を評価するという研究を行っていたそうです。ITER機構では、色々な国の人が好きな発音で英語を話しているということが印象に残っていて、いわゆる“日本語英語”というものにそれまでは恥ずかしさを感じていたそうですが、そんなに心配することはないのだと気づかれました。
最後に参加者に対して、「解析」「ハードウェア」「ソフトウェア」「プログラミング言語」という様々な専門技術を身につけることができるという大学院生活の魅力についてお話いただき、講演を締め括られました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

懇談会風景

第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、参加者との懇談会が行われました。

Q.大学で研究したいことがあるのですが、旧帝大だからできた研究や、名古屋大学にしかない研究費などはありますか。
A.(松永教授)国公立大学の研究室にはそれぞれの特徴があります。それは1つや2つではなく、国の施策に関わるテーマで研究しているものもあります。研究者の特徴もあるので、自分に1番フィットしたところを選ぶのがよいです。また他大学や海外の研究所との共同研究などもあり、英語は必須となるため頑張って学習してください。

Q.工学部・農学部・理学部で就職先にどう違いがあるのかご教示ください。
A.(松永教授)企業側からするとどの学部で学んでいたかはそんなに違いはないようです。仕切りがあるわけではありません。

Q.工学部と理学部の化学の違いは何でしょうか。またどちらの学部に進むべきか、どのように選べばよいでしょうか。
A.(松永教授)私は理学をめざしていて、工学に進みました。ノーベル化学賞を受賞された福井謙一先生の影響もあり、工学部の化学は面白いんだと思いました。現在の工学部と理学部の化学は、分野の違いがなくなってきています。そのため自分自身の興味、その後の進路などを見据えて選べばよいと思います。また大学のオープンキャンパスなどにも参加し、自分自身のイメージに合うところを見つけてください。

Q.理学部志望から工学部に変更された決め手は何でしたか?また化学が好きだったということですが、農学部で化学を学ぶ選択肢はありましたか?
A.(野島さん)材料研究に興味を持ったこと、実際に社会に生きる研究ができるのが工学部だと考えています。自分のやりたいことが工学部であったことが進路決定に影響しました。また、名古屋大学の理学部は二次試験に国語があったことが避けたい理由でもありました。

Q.工学を志した理由を教えてください。
A.(夏目さん)まずものづくりが楽しいということと、自分はペンを舐めるより、手を動かすことが好きということがありました。

Q.どの程度パソコンを使うことができたらよいのでしょうか。
A.(夏目さん)手作業では不効率だと思うことに対して、プログラミングで自動化できるとよいと思います。

参加者の感想(一部抜粋)