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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第4回 教育学部「教室での学びを解明する-授業分析の方法-」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

名大研究室の扉in河合塾4

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第4回教育学部を、2015年8月29日河合塾名古屋校で開催しました。
冒頭、名古屋大学の木俣元一副総長よりご挨拶がありました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生・高校生・高卒生・保護者の方を対象に、名古屋大学教育発達科学研究科の教授と大学院生をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約60人の生徒・保護者の方が、名古屋大学の先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教授による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者と参加者による懇談会

日時

2015年8月29日(土)14:00~16:00

会場

名古屋校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名大教授による最先端研究についての講演。

柴田 好章(しばた よしあき)教授 (教育発達科学研究科)

●第1部:「教室での学びを解明する-授業分析の方法-」
 柴田 好章(しばた よしあき)教授 (教育発達科学研究科)

第1部では柴田教授に、名古屋大学教育学部の特徴の一つである「授業分析」についてお話ししていただきました。

柴田教授はまず、名古屋大学の教育学部の特徴についてお話しされました。
全国の教育学部は、教員養成大学・学部と、非教育養成系学部の二つに分けることができ、名古屋大学は、非教育養成系の学部です。非養成系の教育学部では、教育学や心理学についての研究が主となっており、教員免許は取得できますが必須ではありません。卒業生の中には、高等学校(および中学校)の教員になる方もいます。
また、名古屋大学教育学部は、学内で一番定員が少ない学部であり、学生数に対して教員数が多く、小規模で親密な雰囲気があるそうです。そして、学部内にはたくさんの留学生や外国人教員もいて国際的であることに加え、付属中学・付属高校があり、付属学校を活かした研究ができる環境が整っているそうです。

学部の紹介後、ご自身の研究である「授業分析」について今日の学校が置かれている状況を踏まえながら分かりやすく説明していただきました。
「授業分析」の研究は1954年に、名古屋大学にて重松鷹康氏が始めました。授業の詳細な記録(音声を文字化した逐語記録)を分析し、授業を構成する諸要因の関連構造を解明します。授業内での生徒の発言をすべて記録し、授業での生徒の発言が他の生徒の発言にどのように影響を与えているか、またどのような流れで結論を見出しているか等を分析する研究です。
現在はユビキタス社会で、コンピューターをはじめとするネットワークを通じて「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」知識を習得することが可能となっています。そのため学校は、知識を伝達するだけでは存在意義が薄らいできています。
今、学校に求められている教育は、ペア、グループ、教室全体での話し合い、聴き合い、関わり合いです。現在注目されている協同の学びの手法であるアクティブ・ラーニング(能動的・協働的学習)は、まさに柴田教授の「授業分析」での研究が活かされる学びの手法といえます。
また、「授業分析」の研究では、授業記録の分析のほか、量的な手法やさまざまな研究手法が駆使されます。授業分析は、いわば現場における教育学的概念の発見や再発見を行うために必要な教育学の基礎研究(理論構築の場)です。

最後に大学での研究とは何か、についてお話をされました。「わからないから研究する、研究とは未知への挑戦である」と研究に対しての熱意をお話しされた柴田教授に、参加者からは大きな拍手が送られました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる。

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
 心理発達科学専攻 中島 卓裕 (なかじま たかひろ)氏
 教育科学専攻 内田 康弘 (うちだ やすひろ)氏

第2部では、大学院教育発達科学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

心理発達科学専攻 中島 卓裕 氏

心理発達科学専攻 中島 卓裕 氏

博士課程2年の中島さんは、教育学部と教育発達科学研究科の説明と、児童の発達障害に関わるご自身の研究についてのお話をしてくださいました。
教育学部では、1・2年の間は専門に限らず幅広い分野を学び3年から5つのコース(教育科学系-小学教育開発・学校教育情報、国際社会文化、心理発達科学系-心理社会行動・発達教育臨床)に分かれてそれぞれの領域の基礎を勉強します。教育発達科学研究科には、教育科学専攻と心理発達科学専攻がありますが、中島さんは心理発達科学専攻の中の精神発達臨床科学講座に所属されています。
中島さんは、小学校時代から子どもと関わる仕事にあこがれ、自閉症の子と関わる仕事をめざすようになりました。自閉症は発達障害の一つです。大学時代に自閉症の子どもたちと関わるボランティアを始めた中島さんは、大学院に所属する今、彼らがどんな風に世界を見ているのかもっと研究をしたいと思っているそうです。
また、大学院での活動、授業や研究、実習や臨床活動について話してくれました。来場した高校生に、「研究活動はしんどい部分もあるが、何故やっているかと言えば、おもしろいから。日常からおもしろいものを見つけてください」という言葉を残されました。

教育科学専攻 内田 康弘 氏

教育科学専攻 内田 康弘 氏

教育社会学専攻で博士後期課程3年の内田さんは、高校時代から現在の大学院生活までのお話をしていただきました。
内田さんは学部時代、経済学部に所属していました。やりたいことを研究する満足度の高い学生生活でしたが、大学に進学した意味を持つ(考える)大学生が非常に少ないことを不満に感じていたそうです。そこで、大学に行くことの意義について多様な視点から論じる学問領域である教育社会学に出会い、研究しようと考えるようになったそうです。
教育社会学は、教育にまつわる社会問題や社会現象に対して、社会学的観点からアプローチする学問であり、「常識」(当たり前、当然)を疑う態度が必要です。
現在の大学院生活については、趣味の話も交えて、わかりやすく1日の生活スケジュールを説明していただきました。「単位を取る」「調査に行く」「学会発表をする」「論文を書く」といったことから、「高校や大学の非常勤講師や大学のティーチングアシスタントをする」「お金を稼ぐ」ということまで具体的にお話ししてくださいました。
内田さんは来場者に、「高校時代にやってほしいこととして、大学に行く意味をじっくり考えたり、常識を疑ってみたり、自分の得意・不得意なものを見つけたりしてほしい」と話されました。

どの分野の講演も専門的で興味深く、貴重な経験談を実際の生活に絡めて語っていただき、教育学部の奥深さが感じられる講演でした。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会。

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部、第2部の終了後、柴田教授と大学院生2名はそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

柴田教授の周りでは、実際の学校での授業のような、少人数による質疑応答が行われました。
「センター試験の短所は?見直しの理由と先生の立場を教えてください。」
ペーパーテストでは「知識」は測れるが、記述力が問われないため思考力・応用力は測りにくい。私見としては、測定する上ではだれが測っても同じ値が出る「信頼性」と測りたいものを計っているという「妥当性」が必要ですが、日本では信頼性は重視するが妥当性は重視されない傾向にあります。そこで、ペーパーテスト以外の方法で学生を評価しようという制度が進んでいます。

「教育で最も測りたいものは何ですか?」
センター試験では本当に測りたいものが測れていない。たとえば知識と知識を結びつける力を、決められた設問の中で全て測るのは難しい。紙の評価では測れないものの中に教育として大切なものがあると思います。

「人は何歳まで変われますか?」
何歳でも変われる、成長できます。ただ、一般的に年を取ると頑固になり、学べなくなります。“開かれている”ことが大事です。

「今の学校は30~40人に対して1人の先生だが、これについてはどう思いますか?」
この「クラスサイズ」は、教育学で最も重要なテーマです。日本はクラスサイズが大きいと言われています。あまり人数が多いと意見を交わしづらいし、アクティブ・ラーニングは逆に人数が少なすぎると意見が出ません。人数は多すぎても少なすぎても駄目です。

「学ぶことは自分自身を変えることだと思うが、自分は頑固。柔軟性を持つにはどうしたらいいのか?」
この質問をしていること自体、自分を変えようとしている。自分の得意なところを見つけてみようとすれば良いと思います。当たり前のことに疑問を持つ・関心を持つと何か変わっていきます。

先生より最後に「質問を受けると自身も考えます。問うということは考えること。どの道に進んでも、自ら問うて自ら考えることが大事」とのお言葉を頂き、参加者から大きな拍手が送られました。
大学院生のお二人には、参加者から「一般的に文系学部は大学の単位が取得しやすいと言われますが、名古屋大学の文系学部はどうですか」「臨床心理士の資格はどのように取得するのですか」「大学院入試はどのような試験ですか」「名大に入ってよかったと思うことを教えてください」「お二人ともプレゼン能力が非常に高いと感じますが、どのようにプレゼン力を身につけたのですか」など多岐にわたる質問があり、その一つひとつに実体験を交え、わかりやすくお答えいただきました。
参加者と一体となった親しみやすい雰囲気の中で、第一志望合格に向けてやる気が芽生え、大変有意義な時間となりました。

参加者の感想(一部抜粋)