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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第50回 農学部 イベントレポート | 体験授業・イベント

「切れ味の良い分子を自然界に求めて」

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2022年9月25日(日) 14:00~16:00

会場

名駅校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名古屋大学と河合塾のタッグで授業

イベント風景

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第50回 農学部を、2022年9月25日(日)河合塾名駅校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学農学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

将来に向かって、己の学問を養成する

北 将樹教授

第1部:切れ味の良い分子を自然界に求めて
北 将樹(きた まさき)教授(生命農学研究科 応用生命科学専攻)

北先生は初めに、名古屋大学農学部についてご紹介くださいました。名古屋大学農学部には「生物環境科学科」「資源生物科学科」「応用生命科学科」の3つの学科があり、さらに大学院に進むことでより専門性の高い環境で研究を行うことができます。「大学ってどんな所だとイメージされますか?」と投げかけられた北先生は、「世界が大きく変わる所です」と続けられ、名古屋大学では全学生の15%を占める2,400人が海外からの留学生で、116カ国から受け入れているとお話しされました。農学部ではアジアからの留学生が多く、中国やインドネシア、タイといったアジア諸国と非常にかかわりが深い学部だそうです。国立大学全体でも海外からの留学生受け入れは今後も進んでいくため、高校生、中学生の皆さんは、将来このような熱意ある留学生と一緒に学んで切磋琢磨していくチャンスがあるとお話ししてくださいました。
続いて、名古屋大学農学部は「食」「環境」「健康」の3つをキーワードとしている点についてご説明くださいました。農学部と聞くと畑を耕すようなイメージを持つ方もいると思いますが、生きていくために不可欠な要素「食」に加え、森林や地球といった目で見える範囲から、目で見えない変化などについても研究していく「環境」、さらに「健康」においては、例えば薬の開発や栄養に関する研究を行うなど、3つの観点を核として将来を維持していくための学問であると述べられました。さらに、先に述べられていた3つの学科の違いについて、研究対象を例にお話しされ、「生物環境科学科」は主に生態系について研究を行い、「資源生物科学科」は動物・植物などの個体に関する研究、「応用生命科学科」は器官や細胞といった生命の中の仕組みや化学物質について研究するとご説明くださいました。応用生命科学科では、学部3年生になると月曜から金曜まで毎日実験があり、全国の大学と比較しても実験実習が多いのが特徴で、実験をし、結果をまとめ、その結果についてディスカッションする機会も多く設けられているそうです。また、7〜8割の学生は大学院に進学することから、まずは大学+大学院博士前期の2年を6年セットにして考えて、大学入学後も色々とアンテナを張って過ごしてほしいとお話しされました。

ご自身の研究室「天然物ケミカルバイオロジー研究室」では、自然界のさまざまな生物がつくり出す化学物質を研究しているそうで、果実の香りを例に、炭素原子・水素原子・酸素原子の結びつき方の違いによって香りが変わることをご説明くださいました。さらに、このような化学物質が、我々人間や動物の鼻の中の奥にある受容体に合致することで「バナナの香り」「リンゴの香り」と判別できるそうです。このような化学物質は人工的に石油の材料から混ぜるだけでつくられるものもあれば、中には非常に複雑で強力な活性を示すものがあり、それらを自然界から見つけ出しその働きを調べる「天然物化学」という学問分野を紹介されました。食中毒を引き起こす「フグ毒」や鎮痛材として使用される「モルヒネ」、抗生物質として知られる「ペニシリン」も、この天然物化学によって構造や機能が明らかにされました。ご自身の研究内容にも触れられ、ユニークな化学物質を使って進化してきた生物についてご紹介くださいました。北先生は珍しい毒を持つ哺乳類について長らく研究されており、トガリネズミが持つ唾液に含まれる毒を新たに発見し、現在はこの構造や働きについて論文を執筆しているそうです。さらに、雄のカモノハシが蹴爪にもつ神経毒を分析し、新しい成分を発見したこともお話ししてくださいました。このように、誰も研究していない自然界の事象に着目し、フィールドワークを通して新たな活性についてそのメカニズムを解明されています。
最後に、「常識にとらわれずに、新しいことに取り組んでほしい。そのためには、大学で学びたいことについて高校生のうちからアンテナを張って考えてほしい。皆さんが大学を卒業する頃には、多くの人が現代ではまだ存在していない職種に就くだろうと言われています。そのくらい世の中は劇的に変わっていきます。もちろん専門的な技術や知識を身につけて卓越した技術者になることもとても大切ですが、ぜひ国立大学でそういった世の中の変化にも対応できる総合力を身につけた人材になってほしい」と講演を締めくくられました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
森林・環境資源科学専攻 森林生態学 高津 柊大(たかつ しゅうた)氏
動物科学専攻 動物生殖科学 土田 仁美(つちだ ひとみ)氏

第2部では、名古屋大学大学院生命農学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

森林・環境資源科学専攻 森林生態学 高津 柊大 氏

高津 柊大 氏

高津さんは地元である大阪府の高校に通い、名古屋大学農学部へ進学されました。幼い頃から山や海といった自然が好きで、中学生の頃から大学へ進学するなら農学部と決めていたそうです。さらに、名古屋大学農学部のなかでも、環境や生き物について学びたいという思いから生物環境科学科「森林生態学研究室」を選び、フィールドワークを中心に日々研究されています。主に環境の保全と持続可能な利用をめざし、森林の構造と動態について研究を行っており、フィールドワークに重きを置いて活動しているのが特徴であるとお話しくださいました。

高津さんの研究内容は、亜高山帯常緑針葉樹林における外生菌根菌の感染状況や、宿主植物に及ぼす影響についてです。菌根菌とは、植物の根に感染・共生する菌類の総称で、宿主からは炭素源が送られ、菌根菌は宿主植物の養水分の吸収の補助をする、といった共生関係が成り立っています。養水分の吸収能力は菌根菌の種類によって異なっており、高津さんはある林分にどの菌種が何の樹木にどれだけいるのか、菌根菌の群集構造の把握をすることで、菌根菌が樹木に与える影響を理解しようと調査を続けられています。さらに、この研究を通して森林の保全や地球規模の環境問題に貢献していきたいとお話しされました。

続いてご自身の調査方法について詳しく教えてくださいました。御嶽山の針葉樹林に設置された調査地で群生している対象樹種を採取し、顕微鏡で菌根の色や形や数、菌糸の様子などを調べ、菌根菌の感染率の算出や、DNAの配列から菌種の同定を行ったりするそうです。そうした個体調査から得られたデータをもとに、菌根菌が宿主植物の成長に及ぼす影響について解析を行っていくとご説明されました。また、研究を通して大変だったことについても触れられ、日本語・英語問わず論文をたくさん読まなくてはいけないこと、実地調査だけではなく実験や論文作成も行わなくてはならないこと、またその実験が基本的には仮説通りに上手くは進まないことなどをあげられました。しかし、予想外のことが起きたり思い通りにいかなかったりすることが研究の醍醐味でもあると述べられ、研究を通して普通は経験できないことができたり、論理的思考や課題解決に向けた行動力が身についたとお話しくださいました。
最後に、現在充実した日々を過ごせているのは、常に自分が何を学びたいのか、どうなりたいのかを考えて選択・行動してきた結果であるので、皆さんも自分の将来の理想を思い描きながら、人生の選択をしていってくださいと講演を締め括られました。

動物科学専攻 動物生殖科学 土田 仁美 氏

土田 仁美 氏

土田さんは、高校を卒業後に浪人をされたことで貴重な経験ができたとおっしゃっていました。大学入学後は資源生物科学科の授業で、タイやカンボジアの学生と一緒に、愛知県や三重県で農学に関するフィールドワークを行い、そこで学んだことを英語でプレゼンする「海外学生受入研修」や、タイとカンボジアにそれぞれ1週間ほど滞在し、現地の学生とともにフィールドワークを行い、その国の農学について学んだことを英語でプレゼンする「海外実地研修」もされました。この研修を通じて海外の友達ができ、農学の現状を知る良い経験になったとお話しされました。またこれらの研修の存在が浪人時に資源生物科学科を選ぶきっかけになったそうです。

大学3年生の後半から研究室へ配属されましたが、研究室を選んだ理由は、2年時の「動物生理学」という授業が面白かったこと、3年時の農場実習で畜産に興味を持ったこと、尊敬できる先輩の「農学は世界を幸せにする科学」という言葉だったそうです。博士課程前期課程を2年間過ごされ、続いて博士後期課程に進学されました。進学理由は、新しいことを発見するワクワクに取りつかれたこと、3年間の研究期間では足らず、もっと深く研究したいと思われたことと、目を輝かせながらお話しされました。

次にご自身の研究内容についてご紹介いただきました。肉やミルクは人間の重要なタンパク源であり、畜産物の需要量は年々増加しています。一方、牛の人工授精の受胎率低下が大きな問題となっており、原因究明が求められています。雌牛が出産し、ミルクを作るのにはとてもエネルギーが必要で、その間は生殖機能が抑制されてしまいます。また、畜産の現状として乳牛の繁殖障害の約6割が脳の問題であるため、土田さんは、哺乳類の生殖を支配する「脳」のメカニズムを解明することを目的に研究されています。脳は卵胞発育と排卵を制御する司令塔ですが、エネルギー不足に陥ると脳はエネルギー不足を感知して卵胞発育を抑制してしまいます。つまり、繁殖障害の原因の一部は、脳がミルクを作ることによるエネルギー不足を感知し生殖機能を抑制すること、ということとお話しされました。

最後に土田さんの研究がめざされるところとして、世界各国での食料自給率の向上に貢献、つまり牛の生産性を上げること、野生害獣による農作物被害を軽減させること、人の不妊治療に応用することをめざしていると熱く語られ、講演を締め括られました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

懇談会風景

第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、参加者との懇談会が行われました。

Q.鉄細菌を研究したいのですが、何学部で学べばよいでしょうか。
A.(北教授)農学部には生態学や微生物学、酵素学など、細菌について詳しく学ぶことができるさまざまな研究室があります。しかし農学部以外でも、例えば工学部の環境系や理学部の生物学科など、様々な学部・学科で研究する機会があると思います。大学の教員は異動される場合もありますが、ホームページなどでぜひ調べてみてください。

Q.資源生物科学部ではカンボジア研修の話が出ましたが、海外研修がありますか。
A.(北教授)はい。学部生、大学院生が参加できる海外研修プログラムがあります。

Q.発展途上国の水環境や土壌を学びたいが、何学部が良いでしょうか。
A.(高津さん)土壌は農学部で学べます。
(北教授)環境学研究科や工学系でも学べますが、大学院しか設置されていない場合もありますので注意してください。

Q.研究者として食べていくのは難しいと言われたのですが、実際はどうですか?
A.(土田さん)研究職として大学や企業など就職口はたくさんあります。
(北教授)研究職は引く手あまたなので、就職先はあります。大学院では研究だけでなく、人間力やディベート力、英語力をつけるとよいでしょう。

Q.私は物理選択なのですが、農学部に物理選択の人はどのくらいいますか?
A.(北教授)沢山います。大学で生物を学ぶので心配ありません。反対に生物選択の人も大学で物理を必修科目として勉強します。大学の教科書は暗記ではないから読むと非常におもしろいですよ。

参加者の感想(一部抜粋)