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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第41回 教育学部 イベントレポート | 体験授業・イベント

「個性って?-こころはどう発達をしていくのか-」

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2021年7月4日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名古屋大学と河合塾のタッグで授業

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第41回 教育学部を、2021年7月4日(日)河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学教育学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

赤ちゃんの能力と、周囲とのやりとりの中での発達

第1部:個性って?-こころはどう発達をしていくのか-
永田 雅子(ながた まさこ)教授(心の発達支援研究実践センター 教育発達科学研究科)

永田先生は、妊娠中から乳幼児期の子どもの心理的発達と家族関係の早期支援を専門とされています。本講演では、赤ちゃんはどんな能力を持って生まれてきて、周囲とのどのようなやりとりの中で発達を遂げていくのかということについてお話しいただきました。
永田先生は進路選択の際、将来につながる領域に進むことを求められていると感じられていました。その中で、大学紹介で読んだ心理学に興味を持ち、名古屋大学で心理学を学ぶことをおもしろそうだと感じ、名古屋大学教育学部に入学されました。心理学の中でもご自身の研究の道に進まれたきっかけは、ご姉妹が当たり前にできることが永田先生には難しいことがあり、能力の凹凸はどこからくるのかという疑問に思ったことから、大学院時代に、発達障害児の研究にはいっていったとお話しされました。
まず永田先生は、「生まれたばかりの赤ちゃんがどのような能力を持っているか」ということを参加者に問いかけられました。多くの人は、赤ちゃんは未熟な存在で何もわからないと思いがちです。しかし、見たものや聞いたことを真似したり、お母さんの母乳のにおいをかぎわけたりできると説明されました。実際には、赤ちゃんは生まれた直後から周囲にアンテナを張り、周囲との相互交流を行うことで、外界に適応しようとする能力があると説明されました。
また、赤ちゃんの周囲にいる大人は、無意識に赤ちゃんが聞き取りやすい高さの声を出し、赤ちゃんも大人の反応を見ながら反応をするという、出生後の早期から親子のやり取りが生じているということを教えていただきました。泣いている赤ちゃんに、大人が「おなかがすいて怒っていたのね」などと反応を意味づけて表現することで、赤ちゃんは「この不快な感じはおなかがすいているということなんだ」と、未分化だった自分の状態像を相手の読み取りによって理解し、それが赤ちゃんの情緒的発達の基盤となるとお話しされました。しかし、赤ちゃんが何らかの疾患を持っていたり未熟な状態で生まれてきたりすると、赤ちゃんからのサインが受け取りづらくなり、相互作用の一方の担い手として機能しにくいという問題を提示されました。
講演会の途中で、実際に赤ちゃんがどのような反応を見せるかという映像資料も見せてくださいました。参加者のみなさんは、研究内容をより身近に感じられたのではないでしょうか。また、永田先生は大学院進学後に現場に出たいという思いから、周産期専門の心理職として小児科に勤務されました。その後、博士号取得のために10年を経てから博士後期課程に社会人入学をされたこともお話しいただきました。多様なキャリアをご紹介いただいたことで、進学後の活躍の幅に強い魅力を感じられる素敵な講演となりました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
教育発達科学研究科 教育科学専攻 カリキュラム研究 山下 大喜(やました だいき)氏
教育発達科学研究科 心理発達科学専攻 社会心理学 Alexander Navarro(アレクサンダー・ナヴァロ)氏

第2部では、名古屋大学大学院教育発達科学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

教育科学専攻 カリキュラム研究 山下 大喜 氏

高校時代の山下さんは日本史が好きで、社会科の先生をめざしていました。学部時代はアジアに興味を持ち、東洋史の研究室に所属されていた山下さんですが、大学3年生の秋に行った教育実習で「教育方法」や「カリキュラム」に興味を持ち始め、東洋史と教育を絡めた卒業論文を書けないかを模索されました。その中で、胡適がアメリカ留学の際にデューイからどのような影響を受けたかに関心を持ち、そのテーマをもとに卒業論文を書かれたそうです。胡適とデューイについて調べていくと、胡適が中国の国語科の誕生に大きくかかわっていることに気づき、学部時代の「東洋史と教育」を絡めた研究から「カリキュラム研究と東洋史」を絡めた研究を行うため、2017年に名古屋大学大学院教育発達科学研究科に進学され、現在はカリキュラム研究を専門に研究を取り組んでいます。
山下さんの現在の研究内容について、まず初めに我々は言葉を通じてコミュニケーションをとっているものの、日本ではその言葉をどのように学習してきたか、歴史的にどうつくられてきたかを明治時代の国語科を例に説明してくださり、次に中国はどうなのかをお話しいただきました。さらに、山下さんが行っている2つの共同研究についてもお話ししていただきました。1つめは、校内授業研究とそれをけん引した校長リーダーシップについてです。現在は愛知県新城市を事例に、現職教育で配布された校内資料などを用いながら研究していることをご説明されました。2つめは、日本と台湾における小学校の「生活科」の比較についてです。この共同研究では、カリキュラム・教科書・授業実践の3つの観点から「生活科」を比較されているそうです。山下さんは台湾での現地調査・資料収集・研究交流などをもとにこの研究を行っていることをご説明され、今後はこれらの研究内容を応用させて、「中華民国初期のカリキュラム史」の研究から「戦後台湾のカリキュラム史」の研究へとつなげていき、日本から「中華民国を見つめること」、「中華民国の系譜を歴史的に位置づけること」を行っていきたいという次のステージの構想についても語られました。
最後に、山下さんは「日々、いろんな関心を持って取り組んでほしいです。進路というのは“すすむみち”と書きますが、今日の講演が皆さんの進路選択の参考となっていましたら幸いです」と語り、講演を締めくくられました。

心理発達科学専攻 社会心理学 アレクサンダー・ナヴァロ 氏 [動画上映]

ナヴァロさんはまず女性の同性愛者、男性の同性愛者、両性愛者、心の性と体の性が一致しない人、LGBTについて説明されました。日本の人口割合では10%ですが、メンタルヘルスの問題に苦しんでいる人も多く、これらの問題は差別的な経験から生じますが、他に原因はないのかについて研究されているとのことでした。研究の基礎となるのは、LGBTコミュニティの他のメンバーから尊敬される度合いである「グループ内地位」「認識する差別」「メンタルヘルス」はいったいどういう関係を持つのか、です。日本でLGBTの調査協力者を募集し、アンケートでデータを収集、その収集したデータを分析するそうです。
日本人と比べ、アメリカ人の方が日常的にアイデンティティについて考えることが多いと予想されるため、日本において、差別・グループ内地位・メンタルヘルスの関係を正確に予測できるかが課題だそうです。
次にどうして心理学を学んでいるかについてお話しされました。心理学は、ほとんどすべてのことに関係しており、他人だけでなく自分を理解できる、また世界が変わるとともに人間の心や行動が変わるため、研究のネタに尽きることがないそうです。ナヴァロさんは大学3年生までは医者になるため勉強されてきたそうですが、急遽心理学に専攻を変えられたそうです。それは「人を助けたい」という思いからでした。「人を助ける」職業は医者だけでなく、警察官、エンジニア、研究者などいろいろありますが、答えは人により異なります。最後に「過去の自分への手紙」を読まれ講演を締めくくられました。

高校1年のアレックスへ
夢を見つけるには、時間が非常にかかるから、
夢が見つかったら、叶えるに一番近そうな道を選びたくなるけど、
道は一つ以上存在することを気づいて、
将来のことを深く考える上で進めたらいい。
人間は未来を予測することができないから、
自分の将来を想像することももちろん難しい。
迷ったり、不安になったりするときも来るかもしれないけど、
ゆっくりで大丈夫だから、頑張ってください!
<原文より>

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、参加者との懇談会が行われました。

Q.名古屋大学の文学部や情報学部と比べて、教育学部ならではの研究内容などがあれば教えてください。
A.(永田教授)歴史的には同じくらい長いですが、教育学部の心理学は人の発達に重きを置いた研究を行っており、実験を行うことが多いです。文学部や情報学部では基礎的な心理学を学びます。

Q.大学院を卒業された後の進路について教えてください。
A.(山下さん)研究者をめざしている人が多いです。大学院に進んだ人の中でも、博士課程を修了された人は研究者になる人が多いと思います。修士課程を修了された方は高校の先生だったり、教育系の企業に就職しています。

Q.個人研究と共同研究ではどのような違いがあるのでしょうか?
A.個人研究は個人でテーマについて研究していき、研究したことがモチベーションになることも多いです。共同研究では、色々なつながりやご縁で出会った人たちと一緒に資料を読みながら研究し、一緒に論文を書いています。

参加者の感想(一部抜粋)