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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第37回 医学部 「糖鎖研究から明らかになった分⼦機能の精密制御機構」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第37回 医学部を、2020年9月20日(日)河合塾名古屋校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学医学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約50人の生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2020年9月20日(日)14:00~16:00

会場

名古屋校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

“見えない”糖鎖の研究で、生命機能を明らかに

●第1部:糖鎖研究から明らかになった分子機能の精密制御機構
岡島 徹也(おかじま てつや)教授(医学系研究科)

岡島 徹也(おかじま てつや)教授(医学系研究科)

前半は先生の研究について、後半は名古屋大学医学部医学科について、ご説明いただきました。まずは海外でのご経験も含めたご自身のキャリアをご紹介いただいた後、研究内容についてご講演いただきました。岡島先生が一貫して取り組まれているのは細胞の表面に存在している「糖鎖」に関する研究で、その存在も重要性も“見えない(見えにくい)”この「糖鎖」について、その一端をお話しいただきました。
糖鎖については、まずその多様性について、いろいろな木々が季節の移り変わりで色を変える様子を例に挙げて説明していただきました。ヒトの血液型は糖鎖の種類や数によって決まっており、糖鎖は多様性の源となっているそうです。また糖鎖の重要性について、糖鎖が存在しなかった場合、大きくは異常がなくても精密の部分に異常が出てしまうことを「アダムズオリバー症候群」の症例とともにご説明いただきました。
研究に関しての最近のトピックとしては、名古屋大学と岐阜大学とが設立した「東海大学国立大学機構」のなかで、新たな共同研究拠点として「糖鎖生命コア拠点」が設立され、岐阜大学と連携するだけでなく、理学部や農学部とも連携して糖鎖の研究に取り組めることで、世界一の統合糖鎖研究の場となっていることをご紹介いただきました。先生はそこで日々研究に励まれているそうです。
後半は名古屋大学医学部医学科の特徴や、研究者の道に進むことについてお話しいただきました。特徴としてご紹介いただいたのは、3年次の「基礎医学セミナー」として後半半年間を研究室に所属して基礎研究に取り組むことや、「ジョイントディグリー」という海外など複数の大学と連携して学位記を授与する取り組みをご紹介いただきました。また、さまざまなキャリアプランがあることもご紹介され、通常の6年で学位をとって医師免許を取得し臨床研修にあたる、というなかに博士課程大学院を組み込むことも可能であることや、研究医志望の大学生に対しての奨学金制度があることもご紹介いただきました。
そして最後には、これから研究者をめざす学生に対して「医学研究志望者向けの推薦入試」があることから、人体の構造や機能、病気になるメカニズムなどといった研究に興味がある学生に名古屋大学にぜひ来てほしいとの熱いメッセージをいただきました。参加した学生のみなさんは名古屋大学に入りたい、研究者になりたい、という気持ちが高まったのではないでしょうか。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
医学系研究科・医科学専攻(分子細胞免疫学) 熊谷 和裕(くまがい かずひろ)氏
医学系研究科・総合医学専攻(精神医学)遠山 美穂(とおやま みほ)氏

第2部では、名古屋大学医学系研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

医学系研究科・医科学専攻(分子細胞免疫学) 熊谷 和裕 氏

医学系研究科・医科学専攻(分子細胞免疫学) 熊谷 和裕 氏

熊谷さんは現在、名古屋大学大学院医学系研究科 分子細胞免疫学研究室に在籍されています。学部時代は薬学部のなかでも薬科学・創薬科学を学んでおり、その後は自分の興味にピッタリとあう研究室があったため、名古屋大学大学院医学系研究科への進学を決意されました。そんな熊谷さんは子供の頃から「この広い宇宙の中で自分は何者なのか」という疑問をずっと持っており、その疑問をどうしたら解決できるのかを考え続けていました。そんななか、高校の生物の先生から「免疫は自分とそれ以外のものを見分けるためのシステムで、それがないと人は死んでしまう」と聞き、「人が頭で考えなくても人は体で自分とそれ以外を見分けるようにできている」という事実に感銘を受けられました。また、高校の教科書には起こる現象しか書かれておらず、「もう一歩踏み込んでくれたら、もっと知ることができるのに」という葛藤が免疫の分野に多かったそうです。さらに、大学で勉強し始めると高校時代に学んだことと違うことが最新の論文で書かれていることに衝撃を受け、未知な部分が多い免疫に興味を抱き、勉強をするようになったとのことでした。
現在の研究生活は、自分で実験の計画を立てて好きなことをやっているので、大変だと思ったことがないそうです。また、名古屋大学大学院の研究室には多くの外国人留学生が在籍しており、熊谷さんの在籍する研究室も在籍者の半分以上は留学生で、発表会やミーティングはすべて英語で行われているため、英語の勉強をするには良い環境だとお話されました。実際に、熊谷さん自身も英語を話す機会が増え、英語の力がついたそうです。
研究内容については、まず免疫とは何かという基礎知識やそのメカニズムをクイズを交えながらわかりやすく説明してくださいました。免疫細胞には確実に自己と非自己を見分け、非自己のみを攻撃する精密なメカニズムがあることや、免疫細胞に非自己として認識されるがん細胞が、いかにして免疫からの攻撃を逃れるかについてお話しいただきました。現在は、2018年にノーベル賞を受賞した京都大学教授の研究グループにより発見された「PD-1」から開発された薬について研究されていますが、その薬はがん患者に投与しても30%程度の人にしか効果がなく、その原因を探る研究を行っているとお話されました。そして、「今後の研究でその薬の効果を100%の人に発揮できるようにしていきたい」と目標を掲げられ、参加者からは大きな拍手が送られました。

医学系研究科・総合医学専攻(精神医学)遠山 美穂 氏

医学系研究科・総合医学専攻(精神医学)遠山 美穂 氏

現在は名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻精神医学分野に在籍されている遠山さんですが、学部時代は理学部生物学科に所属されており、人だけでなくさまざまな種類の生き物の仕組みから遺伝学まで、幅広く学ばれました。大学院で精神医学分野を学ぼうと決めたきっかけは、大学2年生のときにレポート課題で「統合失調症には遺伝が関係している」という情報を見つけ、自分がいま勉強している生物学・遺伝学が、この病気を患って大変な思いをしている知人やその家族の役に立つかもしれないと思ったこととお話されました。研究室を探す際には、精神疾患でDNA(ゲノム)の研究が盛んであり、異なるバックグラウンドの人がさまざまな研究を行っている研究室を条件にし、最終的には病気の克服に対して熱意を持ち、周りを巻き込みながら研究している先生がいる現在の研究室を選んだとお話しされました。
続けて研究内容について説明されました。精神疾患とは脳の機能異常で、統合失調症に一生のうちにかかる割合は人口の約1%で、早期から正しく治療を行えば他の人と変わらない生活を送れる人もいるようですが、一方で1/4の人が脳の複雑さゆえ治らないままでいることもあるそうです。そのような現状のなか、遠山さんは「統合失調症多発家系におけるまれな一塩基変異の探索」をテーマに研究されています。一塩基変異とは、遺伝子の文字の並びが多くの人が持つものと異なっていることで、文字の並びが1%にも満たない人だけ他の文字を持つことがあるそうです。限りなく少ない確率ではあるものの、違う遺伝子情報を持つ人は疾患を引き起こすこともあると説明されました。さらに数十年間研究されているなかで、「この遺伝子に異常があると必ずこの精神疾患になる」というものは見つかっておらず、おそらく今後も見つかることはないようです。しかし、遺伝的な要因が一要因ではあるので、どんな遺伝子が統合失調症の発症に関係する可能性があるのかを研究されています。具体的には、遺伝子情報のなかで病気に関係しそうなものをプログラミングで探し当てる作業を行っているとのことでした。他にも研究に関わるリーディング大学院や研究アシスタントの活動を行っており、他の分野の学生と関わりを持ったり、医者が原因を決めやすくするプログラミングを行うなど、多岐にわたり活動されているとのことでした。
遠山さんは大学院に入ってから専門分野を変えたことで大変な思いもされたようですが、チャレンジ精神や苦労への覚悟がついたと話され、続けて「大学院への道はいろいろあるので、大学に進んだ後も広い視野を持ってみてください。また、大学院は自分の可能性を広げることができる素敵な場所なので、みなさんもぜひ博士をめざしてみませんか」と参加者に問いかけられ、講演を締めくくられました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、参加者との懇談会が行われました。

講演者と参加者による懇談会

Q.やってみたい研究は最初から決まっていた方が、推薦入試の際に有利ですか?
A.決まっていた方が具体的な説明はしやすいと思いますが、必ずしもやりたいことが決まっていないといけないということはありません。面接の際には大まかにこんなことに興味がある、こんなことをやってみたいという思いがしっかりと語れていれば問題ありません。

Q.臨床と研究を両方行うことはできますか?
A.研究は基礎から臨床まで境目がないので、基礎薬の研究をしたい方は製薬の研究が主になり、病気のメカニズムと治療につながることを研究したい方は臨床と研究の両側からのアプローチも可能です。ただ、1人で両方行うのは難しいと思うので、グループで手分けをしながら行うことが望ましいです。

Q.岡島先生が医学部をめざしたきっかけは何ですか?
A.当時はがん遺伝子がわかり始めていた頃で研究もおもしろそうでしたし、医学の研究は成果が還元できる分野なので、そのような研究はおもしろそうだと思って医学部をめざしました。

Q.医学部に関して、海外の大学と日本の大学の違いを教えてください。
A.まずシステムが違います。日本は高校卒業後に医学部に入学しますが、アメリカでは大学卒業後に医学部を受験して医学を学びます。さらに、アメリカで医学部を受験するには研究室の教授の推薦状が必要なので、日本の大学を卒業後、海外の大学をめざすのは大変かと思います。

大学院生2名には、研究内容を中心にさまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.研究をする際に、名古屋大学を選んで良かったことを教えてください。
A.(熊谷さん)外国人留学生が多いので、英語でのコミュニケーションが上達したことです。また、研究室内での連携もとれているので、共同研究の際に他の研究室からも情報を得られますし、使える機器も豊富なので良い環境で研究できるところです。
(遠山さん)他の研究科との交流も多く、他の研究科の先生に相談にしに行きやすいので自身の研究に役立ったところです。また、学部時代よりも研究に使える費用が多いので良かったです。

Q.研究をしていて、最近おもしろいと感じたことはありますか?
A.(熊谷さん)免疫学は動物モデルを扱って実験することが多いのですが、がんが自然に発生するようなモデルのマウスに抗体を打って、大きな腫瘍の塊が完全になくなっていくのを見て薬の効果に感動しました。
(遠山さん)大学院に入ってからプログラミングを行っており、始めた頃はエラーが出ることが多かったのですが、最近は新しい言語で書いていてもエラーが出る回数が減り、やりたいことがすらすら書けるようになったことです。

Q.受験生に向けアドバイスやメッセージをお願いします。
A.(熊谷さん)大学に入る前から「自分はこういう風になるんだ」と決めてしまうのはもったいないです。入学後も授業や他の人との交流で様々な素晴らしいことやものに出会うと思うので、いろいろなものを受け入れられるような心の余裕をもって入学すれば、良い大学生活を送れると思います。まずは入学することだけでなく、入学後にどうしていきたいかの目標をもって頑張ってください。
(遠山さん)受験までの努力やどう目的に到達したかを覚えておくと、その後、困難にぶつかったときに自信につながると思うので、今できることをしっかり行うと良いと思います。大学ではさまざまな人に出会えるので、それを楽しみに頑張ってほしいです。

参加者の感想(一部抜粋)