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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第30回 経済学部 「『経済』って何だろう?―ことばの歴史から考える―」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

講演の様子

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第30回 経済学部を、2018年9月16日(日)河合塾名古屋校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学経済学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約70人の生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2018年9月16日(日)14:00~16:00

会場

名古屋校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

文系から理系まで、懐が深い経済学部!経済学部で探究する社会思想史

●第1部:『経済』って何だろう?―ことばの歴史から考える―
隠岐 さや香(おき さやか)教授(経済学研究科)

隠岐 さや香(おき さやか)教授(経済学研究科)

経済学といえば、お金について研究したり数学を使って考えるとイメージしている人が多いのではないでしょうか?隠岐教授は、その「経済」や「市場」「お金」という今では当たり前に使われている言葉や概念が、そもそもどのような社会から発生し、どのような思想から生まれたのかという社会思想の歴史、「社会思想史」について研究されています。講演では、「『経済』という言葉を使わずに現代社会を考えることはできるだろうか」というテーマのもと、順を追って社会思想史の探究についてお話ししていただきました。

そもそも研究とは、まず“問い”を立てて、その問いから自分が調べられる範囲の小さな問いに少しずつ絞って検証していきます。今回の場合、まず“西洋”において現代の「経済(economy)」の概念がどのように出現したのか、という問いを立て、各時代で出版された辞書をもとに「経済」という言葉の意味の変遷を確認していきました。「経済」は一番古い時代、「家政術(家を営む)」という意味で用いられていましたが、神への信仰や神学が広がった時代には「神による配剤・計らい」という意味が追加され、さらにさまざまな言語圏への広がりを経て、現在の意味になっていきました。隠岐教授は、自身が調べられる範囲まで絞り、更なる小さな問いとするために、このさまざまな言語圏へ広がりを見せた時代の中でも、18世紀半ばのフランスに限定して経済の意味の変遷を探究されました。

18世紀にフランスで出版された「百科全書」では、「経済」という言葉について、お金を儲けることや商いについての記述は見られず、その理由は、商いを卑しいものとみなす、という当時のフランスの社会的思想が大きく反映されていたものと考えられており、この時代の「経済」は、農業生産のあり方や、国(という大きな家)を治める術の意味合いが強かったそうです。一方で、同時代のイギリスの哲学者であるアダム・スミスは、国を豊かにするためにも商業としての経済に着目しており、フランス革命以降のフランスにもこの意味合いが受容されたそうです。

西洋における「経済」の意味の変遷をたどった結果、「商いをすること」「富を増やす活動」の意味を持つ前に「丁度よい配分」「摂理」のような意味を持ち、「経済」とは、本来的には富の配分について「バランスが良い」「丁度良い」状態のことである、ということが今回の問いから導き出されました。

このような社会思想史の探究は、当たり前だと思っていることや事柄がいつから発生したのかを研究することによって、その事柄を深く理解できると同時に、当たり前だと思っていた考え方をより良い方向に見直すきっかけとなることでもある、とお話しされていたのが印象的でした。まさに、今回の「経済」の意味の変遷をたどってみて、改めて現代社会の経済と社会的モラルのあり方について考えた参加者もいたのではないでしょうか。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる。

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
経済学研究科(社会経済システム専攻) 安藤 順彦(あんどう よりひこ)氏
経済学研究科(産業経営システム専攻) 首藤 洋志(しゅとう ひろし)氏

第2部では、名古屋大学経済学部所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

経済学研究科(社会経済システム専攻) 安藤 順彦 氏

経済学研究科(社会経済システム専攻) 安藤 順彦 氏

現在、名古屋大学大学院 経済学研究科に所属されている安藤さんは、学部時代は立命館大学で社会学を専攻されており、大学院進学の際に研究内容を社会学から経済学に変更されました。学部時代の社会学の授業では、世界の貧困や環境問題など、社会のさまざまな問題を幅広く学ばれましたが、そのときに、「社会問題を分析するツールはどうなっているのか」、「経済学は社会のあり方をどう描いているのか」、「経済学の考え方は本当に正しいのか」などを疑問に思い、大学院では経済学を学ぼうと決意されたそうです。また、名古屋大学に研究したい内容を教えてくれる教授がいたことが、名古屋大学大学院を進学先として選んだ決め手だったというお話もされました。

次に、「経済学と社会学の違い」についてお話いただきました。経済学は貧困や格差など、社会のさまざまな経済問題について言及し、その実態を調査する学問に思われがちですが、実際の経済学は「数学を利用して、社会や個人の行動がどういうメカニズムで成り立っているのかを定式化することである」と説明してくださいました。近年、研究分野のより一層の進展や細分化の結果、“必ずしも経済学はこうである”と定義するのは困難になったものの、従来の経済学では分析の対象が経済や社会などの抽象的なもので、実際に実験ができないため、実験の代わりになる数学モデル(定式化)が必要とされたこと、歴史や経験から仮定をつくり、その仮定に基づいた数学モデルを作成することが行われてきたこともお話くださいました。

続けて、安藤さんはご自身の研究テーマである「社会問題を解決しながら、持続可能で最適な経済成長のモデルを数式で表すこと」について、現在研究をされている「環境問題と経済成長の関係性」と「東南アジアでのインフォーマルな制度が経済に与える影響」を例に挙げながら、わかりやすく説明してくださいました。

最後に、参加者に向けて「研究生活は自分で行わなければいけないので、昼夜逆転する生活や徹夜のときもあります。しかし、自分で調べて、自分で読んで、自分で考える時間がメインになってくるので、自分でやることが大事です。研究生活は自分との戦いで、自分でどれだけ興味を持ってできるかが大切になってきます」と語られ、会場からは多くの拍手が寄せられました。

経済学研究科(産業経営システム専攻) 首藤 洋志 氏

経済学研究科(産業経営システム専攻) 首藤 洋志 氏

首藤さんは公認会計士の資格を持ち、監査法人に勤務しながら、名古屋大学大学院 経済学研究科の博士課程で研究されています。
はじめに、会計に関する解説があり、首藤さんはわかりやすく自動車メーカーを例に挙げ、説明されました。

・車をつくるという“活動”
・材料を仕入れる・従業員を雇う・車を売るなどの“取引”
・その取引を記録する“帳簿”
・利害関係者(投資家など)への財政状態や経営成績の“報告”

この一連のプロセスが会計です。企業が利害関係者に報告するときの財務情報は「財務諸表」で表され、これは大きく2つに分けられます。決算など、ある時点での「財政状態」の報告には、保有資産、借入などの負債、資本を一覧にした「貸借対照表」を使い、企業の一定期間の状態である「経営成績」の報告には、収益、費用、利益を一覧にした「損益計算書」を使います。

次に、首藤さんの研究テーマに話が進みました。経済がグローバル化している今、企業は資金を国内外から集めるようになります。国外の投資家から会社を評価してもらうとき、財務諸表が国で異なっていれば比較が難しくなります。そのため、世界中の企業を同じ会計基準で比較しようとしているのが国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)です。欧州を中心に作られており、財務報告(会計基準)の国際的調和化につながっています。しかし、日本や米国などは、まだ国がIFRSを強制的に適用することを定めていません。そこで、日本企業が国際レベルの比較可能性を維持するために今後何をすべきか、どのようにIFRSを適用していけばよいのか、そもそも会計基準のあるべき姿は何か、ということが首藤さんの研究テーマである、というご紹介がありました。

その後、キャリア形成についてお話がありました。「やりたいことが見つかっている人はそのまま突っ走ればいい、見つかっていない方はひたすら悩んでいい。でも、悩んだ時には人と話すことが大切です。さまざまな人の話を聞いて考え方を知る。何に興味を持つかはまだわからない」と、会場の参加者に向けて心強いアドバイスをくださいました。最後に3つのメッセージがスクリーンに映し出され、大きな拍手で首藤さんの講演は終了しました。

□知らないことは選べない(まず知ることがスタート。知ってみてはじめて興味があるかどうかがわかる。)
□未来の選択肢を狭めない(わかれ道に来てどっちの道を選んだらよいか迷ったときは、未来の選択肢をより狭めない道を選ぶ。)
□親、友達、先生を大切に(自分のために耳の痛いことを言ってくれる人を大切にしてください。)

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会。

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、隠岐教授と大学院生2名でそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

隠岐教授の懇談会に参加した方たちからは、研究の結果をまとめる上でのポイントや、学問に関する内容などの質問や、講演に対する感想が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.高校の卒業研究で「投票率と主観的幸福度について」を調べており、アンケートをとって調査を進めているのですが、結果に大きな差が出たわけでなく、どう結論付けたら良いかを考えているので、何かアドバイスがあれば教えてください。
A.結果がはっきりしなかったと書くのも1つの書き方です。アンケートをとって結果がはっきりしなかったということはよくあり、「似たような集団ではなかったか」や「同じ情報源に影響されていなかったか」を調べて考察しておいたほうが良いです。

Q.「社会思想史」と「社会哲学史」にはどのような違いがあるのでしょうか。
A.これは名前の問題になってしまうのですが、日本語で哲学と言うと、ある決まった流派、特に19世紀のカント以後の思想家の思索を研究することが哲学と呼ばれやすいです。哲学も含めてさまざまな思想を扱うのが思想史です。

講演者と参加者による懇談会

大学院生2名との懇談会に参加した方々からは、経済に関することや学部選択などについてさまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.日本と外国で、経済について考え方に大きな違いはあるのでしょうか。
A.経済学の面では、国の政策によって異なります。民間に任せる自由主義の国、政府が大きく介入している国、その国の産業や企業で何が強いか、さまざまな条件で異なってきます。会計的な見方をすると、国のバックグラウンドで異なります。日本はものづくりで発展し、欧米諸国は金融で発展してきたと言われています。ものに対するお金の考え方を重視するか、投資など実態のないものをうまく回すことで経済を取り仕切るか、ものと金融で大きく見方が異なります。

Q.数値化・モデル化といった研究内容は、どのように国に活用されていくのでしょうか。
A.経済学者が政府の顧問やアドバイザーになっています。また、官僚の方ご自身が大学院を出て、経済学を引き続き研究されているケースもあります。

Q.経済系の学部には、経済学部・経営学部・商学部などがあります。それぞれの適性や選び方を教えてください。
A.経営学と商学は、企業の会計や経営管理、マネジメントなど、現実社会に近いことを学びます。一方、経済学は理論中心で抽象的な内容です。経済史なども対象です。世界史、公民の知識のほかに、数学がある程度できるとよいです。このように学部で扱う内容が異なりますので、ご自身の興味がある学部を選んでいくとよいでしょう。

参加者の感想(一部抜粋)