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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第27回 医学部「からだづくりの原理を問う:脳はどうできる?」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

講演の様子

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第27回 医学部を、2018年6月17日(日)河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学医学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。

冒頭に高橋理事より、今回の講演を聞いて医学部のさまざまな可能性を探していただきたいとお話されました。約100人の生徒・保護者の方が、名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2018年6月17日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

脳の仕組みを問い、過去から未来につながる基礎研究。

宮田 卓樹(みやた たかき)教授(医学系研究科)

●第1部:「からだづくりの原理を問う:脳はどうできる?」
 宮田 卓樹(みやた たかき)教授(医学系研究科)

宮田教授の、「本日の講演を通して、脳の仕組みについて理解していただき、面白く、そして不思議に思ってもらえると嬉しい」との言葉から、研究内容についてのお話が始まりました。
宮田教授は、大学では基礎医学である“解剖学”で体の仕組みを教えながら、脳の発生・脳づくりを支える細胞の生き様について研究されています。講演では、「脳はかたまりか?」という問いで聴衆をひきつけました。脳はかたまりではなく、薄い皮が分厚くなり“脳”ができています。その脳がどのように発生しているのか、大人の脳から胎児の脳へと遡ることで発生・起源を研究しています。
脳の発生には、パーツとなる「細胞づくり」とその細胞の動きや配置を行う「組み立て」という2つの柱が車の車輪のように重要な役割をしています。その重要性を、先天的にふらついて歩くマウス「リーラーマウス」の研究例を元にお話してくださいました。リーラーマウスは生まれたときは正常なマウスの脳と差異はないのですが、成長するにつれて増えるべき細胞が増えないことで、重要な役割をする小脳が発達しません。さらに細胞を正常に配置させるはずの分子が欠如していることもふらつく原因でした。脳発生に重要な「細胞づくり」と「組み立て」に欠陥があることは、現在の状況からさかのぼって研究することで判明した研究例で、脳の仕組みという人体の不思議をわかりやすく説明してくださいました。
宮田教授は、医学部入学後に生理学の授業で「細胞」の様子を見せてもらい興味を持ちながらも、耳鼻咽喉科での2年間の臨床研修を経て医学研究の道に進まれています。その経験から、研究に興味を持ってもらうために身近な例を元に講演をされ、さらには実際の実験サンプルを持参されていました。参加者は興味津々な様子で実験サンプルを間近で見学することができ、とても貴重な経験となりました。また、「医学研究は必ずしも医学部に入らなくても研究できる」、「学んだことにはひとつも無駄なことはない」とおっしゃっていました。「受験科目で物理・化学は有利か、生物は選択しておいたほうがいいか」という受験生の質問にも、「一概に有利・不利とは言えない。しかし、現在もそして大学に入ってからもさまざまなものに関心を持つことは大切。私自身も最先端の研究をするために現在も教科書や問題集を頻繁に見ている」とお話しされていました。
最後に、基礎研究を行う理由として「過去の先人が残した研究に独自の問いをすることで通じ合える。それと同時に過去の先人の研究が自分の役に立ったように、自分の研究・論文が誰かの新しい問い・研究の足場として役立つこともある。このように過去からのバトンを未来へつなぐために、時を惜しまず努力をしていく、ベストをつくす。大変だけれどもやりがいはある」とお話しされて、講演は大盛況に終わりました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる。

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
 総合医学専攻(機能組織学) 金子 葵(かねこ あおい)氏
 医科学専攻(脳神経外科学) 前田 紗知(まえだ さち)氏

第2部では、名古屋大学医学部所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

総合医学専攻(機能組織学) 金子 葵 氏

総合医学専攻(機能組織学) 金子 葵 氏

金子さんは、名古屋大学医学部保健学科 理学療法学専攻に入学後、初めは理学療法士として働くことを考えていました。しかし理学療法(リハビリテーション)についての授業を受ける中で、「神経の可塑性」について知ります。通常、神経細胞は皮膚などの細胞と違って、一度損傷を受け壊死してしまうと再生することができません。脳梗塞など、脳が障害を受けた後に手足に麻痺が出るのは、このためです。ではなぜリハビリテーション後に手足が動くようになるのでしょうか。これは、麻痺した手足に外部から刺激を与えることで、壊死した神経細胞の周りにある細胞が代わりに手足を動かすようになるからです。これが「神経の可塑性」です。このダイナミックな脳の変化に興味を持った金子さんは、「こんなことが起きるなら、壊死した神経細胞の再生もできるのではないか」と考えました。そのことを研究するためには、細胞や動物実験など「基礎」のレベルでの研究をしなければなりません。このことがきっかけで、「リハビリテーション」という「臨床」の場と、「神経再生」という「基礎」の研究をつなげられるような研究者になりたいと考えるようになりました。大学の卒業研究で配属された研究室も非常に「基礎研究」が熱心なところで、大学を出た後も深い研究を本格的にやっていきたいという思いを後押しされました。そこで「自分のやりたい研究をもっと深めてみよう」と、医学科大学院の医科学専攻に進学されました。
医学系大学院は医学部からそのまま入る場合と他学部から入る場合があり、さまざまなルートから入る人がいて年齢層もさまざまです。多様なバックグラウンドの人たちと関わることができることは非常に興味深く、他の大学院にはない面白さがあるとのことでした。会場にいる中学生や高校生に「大学に入るときは研究の道に進む気持ちがなくても、大学はいろいろな人や考え方に出合える場。そこで4年間なり6年間を過ごすことで、自分の考え方が変わることもある。視野を広く持って大学に進んでもらえればいい。」と熱く語りかけていらっしゃいました。
研究内容の紹介では、DINEについてお話をされました。DINEとは、研究室が独自に発見した分子で、神経損傷後に発現が上昇するため、神経再生に関わると考えられています。機能が不明なため、この機能を探ることを研究しています。具体的には普通のマウスとDINEをなくした遺伝子改変マウスの目を損傷させて、さまざまな実験を通して神経が再生するかしないかをみています。
一日の生活の紹介では、忙しい毎日を過ごされていますが、趣味の時間を確保して、心を癒す時間を持つことも大切なことだとおっしゃっていました。
最後に、大学院に進学する人にとっては無視できない学費に関する話もあり、奨学金・学費免除の申請、アルバイト(専門学校の講師など)、「学振」制度(自分の研究論文などを申請することで国からお金をもらうという制度)について紹介されて、親御さんと相談して大学院に進学することをすすめていらっしゃいました。

*「学振」…日本学術振興会特別研究員

医科学専攻(脳神経外科学) 前田 紗知 氏

医科学専攻(脳神経外科学) 前田 紗知 氏

前田さんは愛知教育大学教育学部出身で研究とは関わりがないのではないかと思われるかもしれませんが、教育学部の中でも研究に重きをおく自然科学コース分子機能・生命科学専攻に所属し、細胞生物学の研究室で繊毛・鞭毛の研究をされていました。その研究の中で私たち人間や哺乳類の組織に存在している繊毛・鞭毛のうち、繊毛が脳にも存在しており、それが脳の隙間である脳室に脳脊髄液が溜まってしまう「水頭症」という病気の原因の一つとして関係しているかもしれないということを知ります。専攻していた細胞生物学が医学と密接につながっていることに興味を持ったことが、医学系大学院へ進学されるきっかけとなりました。また、名古屋大学の脳神経外科学講座は、水頭症を始めさまざまな脳の研究を行っていることも、魅力の一つでした。
ここで医学系大学院について次のような説明がありました。
まず医学部から大学院に進学する場合、6年間医学部に通い医師である証明のMD(Doctor of Medicine)を取得します。その後博士課程に進み、修了後博士号を取得した証明のPhD(Doctor of Philosophy)を与えられることから、MD・PhDと呼ばれます。一方、医学部以外の学部から進学する場合、まず2年間の修士課程を経て、4年間の博士課程に進みます。博士課程を修了すると博士号が授与され、PhDとなります。医学系研究科には、医学部以外のさまざまな学部出身の人が入学するため、大学院に入る前に学んでいたことも千差万別で、さまざまなバックグラウンドを持った人がおり、修士課程や博士課程修了後の進路も多種多様ということでした。
名古屋大学脳神経外科学講座は、全国の中でもかなり大規模で7つのグループに分かれています。前田さんはその中でも積極的に研究を行っている脳腫瘍グループに所属して、日々研究に取り組んでいます。研究室での生活は、1日の大半を研究室で過ごし、実験室にいるときは実験をし、デスクにいるときは論文を読んだりして勉強をしています。週に1回の脳腫瘍グループミーティングでは、1週間の研究の進み具合を報告したり、実験でうまくいかないことについて全員で解決策を考えたり、今後の研究の進め方について話し合っています。また、このミーティングの時間を使って、月に1回、論文を読みあうジャーナルクラブも実施されるのでこのミーティングは、グループ内での情報共有や研究の相談をする、とても大切な時間ということです。
そしてご自身の現在の研究についての紹介もありました。
がんの8つの生物学的特性の一つに、がんが免疫細胞からの攻撃を受けないように逃げる「免疫逃避」があります。そのような特性を持つがん細胞を、免疫細胞を使っていかにして効率的に攻撃するかということを目標に、治療法の研究を行っています。名称を「キメラ抗原受容体発現T細胞療法」、通称「CAR-T療法」といいます。がん細胞には、正常な細胞にはないがん細胞だけが持つ信号や目印のようなものが存在しています。また、私たちの血液の中には、T細胞という免疫細胞が存在しています。これら2つのポイントを利用した治療法が、CAR-T療法です。具体的な方法としてまず血液を採取し、そこからT細胞のみを取り出します。そのT細胞にがん細胞だけが持つ目印を認識する受容体を発現させ、そのT細胞をもう一度体内に戻します。体内に戻されたT細胞は、その目印しか認識しないため、正常な細胞を攻撃することなく、がん細胞のみを攻撃できる、という仕組みです。がん細胞には特異的な目印がいくつか存在していて、前田さんはそのうちの1つのターゲットに対するCAR-Tの作成を行い、マウスで実験を行っているということでした。
最後に会場の学生へ向けて「研究の世界は日々情報が更新され日々変化しており、まさに日進月歩の世界です。論文をたくさん読んで知識を深めることも大事なのですが、実は人と人とのつながりがとても大切な世界でもあります。いろいろな人に相談して研究は進んでいき、それが結果につながることも多くあります。思うような結果が出ず、時間が足りなくて、辛いときもありますが、結果が出た時の喜びはとても大きい!」というメッセージを送っていただき、会場は大きな拍手に包まれました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会。

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、宮田教授と大学院生2名でそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

宮田教授の懇談会に参加した方たちからは、研究内容に深く切り込んだ内容から、大学・大学院での学びに関することまで、さまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.心臓疾患だと心臓移植で再生は可能ですが、脳というのは将来そういったことが可能性であるのか、研究段階ではどうなのでしょうか。
A.リーラーマウスの場合でしたら、1995年にキーリーという遺伝子がないことがわかりました。その5年後に人で原因不明の先天性疾患のリストの中にキーリーという遺伝子がないことがわかりました。残念ながら治療までは至っていませんが、理論上は実験室レベルでは可能なので対峙治療や移植治療ができるようになると良いと考えています。実地の段階では相当ハードルが高いと予測されますが遠い未来の基礎となるものとして、細胞の中の振る舞いをきちんとみることが遺伝子やたんぱく質レベルでは語ることができ、そういう機構を知ることがいずれは治療に役に立つと言えます。
再生医療についてですと、パーキンソン病のドーパミンニューロンではマウスモデルの実験データがあります。

Q.工学部から医学部への研究職(修士課程など)へ行くことは可能でしょうか。
A.医学部は医学部、医学科だけでは滅びます。医学部修士の生徒は多岐に渡り、受け皿をいろいろと広く構えています。医学生物学も人だけではなく、その他の生物など工学的見地や広さ・多様さがものすごく大事です。工学部に関係したことを生かして研究をすすめてもらいたいです。

Q.精神医学に興味があるのですが、医学部で学べることはありますか。精神医学や心理学は2・3年生でも学ぶことができますか。
A.カリキュラムとして精神医学は臨床の科目に属するので、4年生からになります。ただ、研究室を自主的に訪ねることはできます。本日、学生研究会というチラシを配布しています。1年生からカリキュラムに関わらずラボツアーがあります。4・5月は基礎研究を回り、秋には希望があれば臨床の教室や救急なども回ります。難しくない内容で一般の人にもわかるように研究の解説があります。

大学院生2名との懇談会に参加した方々からは、お二人の専門分野に関することから、大学・大学院での学生生活に関することまで、こちらもさまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

講演者と参加者による懇談会

特に大学院についての質問が多く、「勉強の仕方」や「入試内容」などについて、皆さん真剣に質問されていました。「この大学に入ることを決めたきっかけ」についての質問には「理科が好きだったことで進学先を決めたこと」や「文理を決める際、スポーツをしていたことからバイオメカニズムについて勉強がしたくて理系を選択し、理学療法士になろうと決めたこと」と、お二人とも高校生の時には現在の研究につながる方向へと進学を考えていたことをお話しされました。
就職に関する質問については受験生だけでなく保護者の方からも質問があり、お二人から「修士課程卒業後、製薬系に就職する方や、博士課程では研究職をめざしたり、中には臨床もしながら博士号の取得をめざす方もいます」と説明されていました。「女性ならではの大変なこと」に関しての質問に対しても、「男女比は研究の専攻にもよりますが、男性女性として違いはなく、苦しいことはありません」と答えられ、懇談会に出席していた将来の女性研究者たちが勇気づけられていたことが印象的でした。
参加者の皆さんにとっては名古屋大学医学部での研究や将来について身近に感じることができた、大変有意義な時間となりました。

参加者の感想(一部抜粋)