医進フェスタ「全国私立大学 医学部医学科入試相談会」 イベントレポート | 体験授業・イベント
医学部入試情報と合格のノウハウ、医学部教育の現状を解説
2018年9月16日(日)、河合塾 麹町校にて「全国私立大学 医学部医学科入試相談会」が開催され、700名を超えるお申し込みがありました。
相談会に先立ち、午前中には、河合塾数学科講師による医学部受験の心構えや数学の勉強法についての講演と、日本医科大学医学部長の伊藤保彦教授を迎えての、医療界の現状と現在の医学部教育に関する特別講演が開かれました。
午後は、日本医科大学・東京慈恵会医科大学・昭和大学による大学入試説明会と、22大学の入試担当者・8大学の現役医学部生(河合塾OB・OG)、河合塾進学アドバイザーによる個別ブースでの相談会が行われました。個別ブースでは入試に関する疑問、不安について熱心に質問する保護者や生徒の姿が見られました。
- 日時
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2018年9月16日(日)
- 会場
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河合塾 麹町校(全国医進情報センター)
- 対象
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中学生・高校生・高卒生とその保護者の方、高等学校の先生方
第1部 講師講演「私立大学医学部合格への道」~数学で合格に絶対必要なもの~
河合塾数学科講師の長野隆による講演では、医学部合格には最低でも偏差値62.5以上必要で、合格可能性50%の難関であるという現実と、具体的な医学部の入試問題や大学別の傾向を示しながら、医学部入試の数学の特徴について解説しました。
具体的には、医学部の数学は全般的に試験時間に対して問題量が多く、これに対応するために問題を解くスピードが必要なこと、また難問を解けることより基本問題から標準問題までを完璧に解ける力が必要であることが伝えられました。さらに記述式の問題では、言葉での説明を含めて採点者に自分の考えが伝わる答案を書くことが重要であり、そのためには、普段から解答の模範となる授業のノートをしっかり取り、書く練習をすることが大事だとのアドバイスがありました。
また“数学の基本”を考えさせる問題を出題する大学も多いこと、ただし、これと基本問題が解けることを混同してはならず、“数学の基本”の習得とは、教科書に書いてあることを理解することだと指摘しました。
その他、自習しやすい問題集の推薦や、「規則正しい生活を送る」「ノートの取り方や授業の受け方など基本的な学習能力を身につける」など、数学以外のアドバイスがありました。
また、今後の数学の学習スケジュールについて、学校行事で忙しい2学期を終えた冬には、高1生は整数や確率を、高2生は整数、確率、数列、ベクトル、そしてできれば微分積分を身につけておくこと、さらに、年明けから数Ⅲの勉強を始めること、また、学年を問わず、冬には数学以外を含め苦手分野を集中して克服したほうがよいとの話がありました。
そして最後に「人によって医学部に合格できるまでの年数は違うが、受験には必ず終わりがある」とした上で、「受験を終えたとき『この受験をして良かった』と言えるような受験にして欲しい」とエールが送られました。
第2部 特別講演「医師になるとはどういうことか」―変貌する医学教育―
日本医科大学医学部長の伊藤保彦教授からは、まず、現在私立大学医学科1年生の全国平均留年者数は6~7名であることや、医師国家試験は、研修医に定員枠があるために合格者数が調整されており、競争試験の側面もあること、そして合格最低点数は上昇傾向にあるという、厳しい状況が説明されました。また、医療訴訟のリスクや「医師は自分の健康を害しても働くのが当然」という社会からの期待等、医師になるには覚悟が必要であることが伝えられました。
この上で、医師のプロフェッショナリズムとは、「臨床能力(医学知識・医療技術)」「コミュニケーションスキル」「倫理や法的理解」という土台の上に「ヒューマニズム」「卓越性」「説明責任」「利他主義」という柱が立っており、その上に「誠実性」「高潔性」という屋根がかかっているものとお話しいただきました。
続いて、現在の医学部教育は、医療知識や技術を教える教育から「アウトカム基盤型カリキュラム」といって、学生が確実に知識や技術を修得できたかどうかを確認しながら単位を与える教育にシフトしていること、そのために日本医科大学では、卒業時に身につけるべき8つのコンピテンス(到達目標)を定め、これに基づいて、各科目でコンピテンスのうち何を育成しようとしているかと、何ができたらその力が身についたかを段階的かつ具体的に示した「マイルストーン」を作成して成績評価を行っているとのことです。
また、医学医療の国際化に対応した医学教育改革が進んでおり、臨床能力育成のために、PBL(課題解決型学習)や臨床実習が重視されていること、中でも臨床実習は従来の50週から74週へ長くなったこと、他方臨床医も研究マインドを持っていなければ珍しい症例に対応できない等、底の浅い医師になってしまうため、研究の視点も重要であることが述べられました。
また、4年次後半からの診療参加型臨床実習に進むためには“第二の国家試験”と言われるCBT(Computer-Based Testing)による医療知識の試験と、OSCE(オスキー、Objective Structured Clinical Examination)という、医療面接、診察、外科手技、救急の実技試験に合格する必要があることが説明されました。
そして「医師は医師だから尊敬されるのではなく、誰より一生懸命勉強し、一生懸命働くから尊敬される」、「大した努力もせずに天才的な力を発揮する医師は存在しない」と、努力の大切さを説いて講演は締めくくられました。
第3部 大学入試説明会/相談コーナー
日本医科大学・東京慈恵会医科大学・昭和大学による入試説明会では、各大学から、建学の祖や建学の精神、大学の特徴、アドミッション・ポリシー、キャンパスの立地や周辺環境、臨床実習を行う附属病院、教育の特徴、医師国家試験合格率、基本的な入試情報や小論文や面接のポイントなどについて説明がありました。
教育については、日本医科大学からは、同大は救命救急が有名で、テレビドラマ・映画のモデルとなったドクターヘリに乗るフライトドクターの養成に貢献していること、東京慈恵会医科大学からは、建学以来「病気を診ずして病人を診よ」を理念としていることや、学生・教員比率が世界第一位であること、昭和大学からは、医・歯・薬・保健医療学部からなる医系総合大学であり、1年次には富士吉田キャンパスで他学部の学生とともに全寮生活を送り、その後も積極的な学部間交流があること、これによって学生時代からチーム医療に長けた医師を育成している、といった話がありました。
このように、各大学に特徴があり、将来目指す医師像をもとに志望大学を決定することが大切であることが分かりました。
同時に、別室で開催された相談コーナーにも多くの生徒や保護者が訪れました。それぞれブースを設けての個別相談を行い、大学に対しては面接での評価ポイントなどの試験内容はもちろん、学費やカリキュラムのこと、現役医学部生には、受験勉強や面接での受け答えの仕方について、河合塾進学アドバイザーには、国公立大学との併願の仕方や受験する校数、出題傾向、合格者の得点率、模試の判定との関係などについての質問が多く寄せられていました。