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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第6回 情報文化学部「科学でどうする 科学をどうする」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

名大研究室の扉in河合塾6

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第6回 情報文化学部を、2015年10月11日河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして中学生・高校生・高卒生・保護者の方を対象に、名古屋大学情報文化学部の教授と大学院生をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約60人の生徒・保護者の方が、名古屋大学の先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。冒頭に、名古屋大学 松下裕秀理事よりご挨拶をいただきました。

講演内容

第1部:名大教授による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者と参加者による懇談会

日時

2015年10月11日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名大教授による最先端研究についての講演。

戸田山 和久(とだやま かずひさ)教授 (情報科学研究科)

●第1部:「科学でどうする 科学をどうする」
 戸田山 和久(とだやま かずひさ)教授 (情報科学研究科)

第1部では、まず戸田山教授が自己紹介として、ご自身が大学時代に生物学者の道を歩むはずが、文学部哲学科をご卒業されるに至った旨をお話ししてくださいました。現在、戸田山教授は、科学哲学と科学技術社会論を専門とされており、こういった分野がこれからは大事であると思うと語られました。

タイトルの「科学でどうする」ということについて、科学技術は人類が手に入れた最も有効な問題解決の手段であるが、我々の抱える問題には、科学による解決をはみ出すものがあると戸田山教授はおっしゃいます。1998年に公開された『DEEP IMPACT』という宇宙惑星が地球に衝突する話の映画を例に挙げ、「人類は科学技術を使って人類を守ろうとしますが、同時に科学技術は全ての人類を助けることは不可能であることがこの映画には描かれています。誰が科学の恩恵に属するべきであるかという選択は、どの価値を守るべきものとみなすかで異なります。科学技術は手段であり、それを役立てる目的・価値は何か、また、科学を使って我々はどんな社会を作りたいのかという問いを、科学者はもちろん皆で考えなければいけない。私自身もその答えを探しています」と語られました。

「科学をどうする」ということについては、問題解決の手段であるはずの科学技術そのものが新しい問題を生み出してしまうという話でした。例えば出生前診断では、科学技術を使って胎児のDNAを調べることができますが、何か障害を発見したときにどのような選択が迫られるのかという社会的な問題になってしまいます。新しい科学技術は倫理の空白地帯をもたらすのです。また、自動運転システムは便利ですが、もし事故が起こったときは誰の責任になるのかという問題が生じます。科学技術は不完全なまま社会に放たれていて、100%安全ではありません。
実験・検証の中で安全率をたくさん取っておいたうえで使用され、その結果からまた技術が進歩していきます。科学技術とはそうゆうものだと認識しておく必要があると話されました。

最後に戸田山教授は、科学技術を使って我々はどんな社会を作るべきか、また社会の中でどのように科学技術をコントロールしていけばよいのかという問いについて、「擬似科学を見分け、科学を広めるためのより良い情報倫理(知的所有権の基礎)を築き、科学技術とは何かをよく知る必要がある。そして、科学者の考える“わかりやすさ“と市民の考える”わかりやすさ“のズレを認知することで、科学コミュニケーションの充実を図ることが『科学でどうする 科学をどうする』ということである」と話されました。
また、平成29年4月に名古屋大学 情報文化学部は情報学部(仮称)として改変されることについて、「情報文化学部は名古屋大学唯一の文理融合型学部であり、文理の壁にこだわらず、未来の人類にとって重要な問題に取り組みたい人を求めています」と締めくくられ、会場からは大きな拍手が送られました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる。

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
 複雑系科学専攻 坂本 浩規 (さかもと ひろき)氏
 社会システム情報学専攻 黒川 響子 (くろかわ きょうこ)氏

第2部では、名古屋大学情報文化学部研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

複雑系科学専攻 坂本 浩規 氏

社会システム情報学専攻 黒川 響子  氏 / 複雑系科学専攻 坂本 浩規  氏

修士課程2年の坂本さんは、高校での進路選択と大学・大学院での学生生活・研究生活について、受験生の皆さんに「進路選択の参考にしてほしい」「大学生活を知ってほしい」という思いでお話してくださいました。
坂本さんは子どものときからPC・携帯電話・自動車に特に興味をもっており情報系や機械系に興味がありましたが、その他にも政治学、心理学など、さまざまな分野にも興味がありました。
高校2年生のときに「渋滞学」という本に出会い、人混みや車、アリ、インターネットなどのさまざまな「渋滞」を、“分野横断的な視点”から問題解決を試みたいと思い、文理融合の学部への進学を考え、名古屋大学の情報文化学部自然情報学科に進学されました。
大学では、勉強だけでなくサークルやアルバイトと充実した学校生活を送られました。大学での研究は1年間だったので、「もっと腰を据えて研究したい」と考え大学院に進学されました。
現在、大学院では「隊列走行」(交通渋滞の原因、車両同士で通信ができる状態で「どの車両」「どの情報」を元にして各車両を制御すればスムーズな隊列走行を実現できるか)という研究をされています。
研究内容の説明では、坂本さんが在籍している複雑系科学専攻の「複雑系」とは何かを説明していただき、また実際の研究の方法であるPCでのシミュレーションや車型ロボットを使った実験なども動画を交えて紹介していただきました。研究室の写真や学会での発表の様子も紹介いただき、充実した学生生活の様子が伺えました。
最後に、ご自身の経験から大学と大学院は「自分の中の“好き”“興味”をトコトン追い求めることができる場所」とし、「身近なモノや社会の仕組みを実感し、変えることもできる」と語られました。

社会システム情報学専攻 黒川 響子 氏

修士課程1年生の黒川さんは、冒頭に、高校時代は河合塾の塾生であったこと、そして大学生のときに河合塾千種校でチューターをしていたことをお話されました。塾生にとって黒川さんが身近な先輩と知り、参加者たちは自然と講演に集中していきました。
黒川さんは高校時代、なんとなく良い大学に進学したいけど、色々なことに興味があって、何がやりたいのかは絞れていない状態でした。そんな中で、当時の黒川さんのチューターに相談したときに、「なんとなくの気持ちで4年間大学に行くのはもったいない」と言われたこと、黒川さんは文系選択だったが数学にも興味があり文理融合で理系の勉強もしたかったこと、そしてそのアドバイスをくれたチューターが名古屋大学情報文化学部在籍であったのにも影響され、自分のやりたいことを見つけるために名古屋大学情報文化学部社会システム情報学科に進学されました。
講演では情報文化学部でのカリキュラムの説明をしていただき、実際の授業に関して、文理関係なくさまざまな授業が受けられることや、デザインの勉強もできることをお話していただきました。その中で「文系と理系両方の友人ができ、色々な考え方に触れる機会がある」ことが凄くよかった、とおっしゃっていました。
大学卒業後は、就職をするか進学をするか迷われましたが、もっと深く学びたいと思い大学院へ進学されました。現在の研究テーマは天文分野(星空を見せるイベントを企画する何の知識もない人が、ICT技術を使ってどうやって学芸員の専門知識を得ることができるか、プログラムを組みながら調査をする)をされています。研究生活では、内部の研究室ではなく外に出て調査することが多く、また、名古屋市科学館や他大学との共同研究など外部との交流があるというお話もされていました。
最後に情報文化学部や社会システム情報学について「文理関係なく幅広い知識を持ち、問題解決にあたることのできる人材が向いている。異分野間の架け橋的な存在を担っていく学問」とお話いただきました。

どの分野の講演も専門的で興味深く、貴重な経験談を実際の生活に絡めて語っていただいたため、情報文化学部の世界がより理解できる講演でした。最後には参加者から温かい拍手が送られました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会。

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部、第2部の終了後、戸田山教授と大学院生2名はそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

講演者と参加者による懇談会

戸田山教授の周りでは、参加者達が質問に対する教授の回答に興味深く聞き入っていました。

「今の知識を広げていく制度はどのようなものがありますが?」
学生には学ぶ場があるが、市民の方々にはリテラシーを高めるためにいろいろなことが行われている。例えば、サイエンスカフェやサイエンスコミュニケーターなど。サイエンスコミュニケーターはまた不安定な仕事ではあるが、そのような仕組み作りの一貫がある。

「普段どのように研究をしていますか?」
論文を読み、学会などで学び発表して知識を深めています。科学コミュニケーションの一貫で天体文理学の研究をしていた頃、『物理の50の謎』という本を知ったが、その50の謎というのは筆者が選んだ50のことであり、その50は市民の知りたいことではないかも知れないと感じた。学者が伝えたいことと市民が知りたいことのズレや、また、市民の質問に対してどう答えたら良いかわからない質問を調べて、科学コミュニケーションの力を培いたい。

「工学部の情報工学科とはどう違うのか」
工学部での情報は、情報のハードウェア的なものであり、物理的な原理やもの作りをしっかり行います。情報文化学部の情報は、世の中側から情報技術を学び、既存の技術を使ってどう組み合わせたら新しい技術ができるかというソフトウェア的なものです。

「将来科学技術が発展して、コンピュータが人類より勝るかも知れないことについて」
技術的な進歩で、人間の能力を超えたコンピュータはそう遠くないうちに誕生するところまできています。コンピュータの特技はコンピュータを作ることなので、そのコンピュータが作ったコンピュータはより賢くなります。よって、将来のために今からコンピュータに制限をつけるのか、人間を傷付けないコンピュータを作るようにするのか、あるいはコンピュータになって人間が生き延びるのか。真面目に議論しなくてはいけない問題になっています。

「人工知能など、以前何かで人間が自然に手を加えて生み出したものが人間を越すかもしれないと読んだことがあるが、それは正しいと思いますか?」
既に人間はサイボーグだと思っています。科学の進歩で現代はニュートリノをも見られるようになりました。人類はいろいろな装置開発によって、1人の頭では生み出せないものを生み出しています。それは科学であり、人類はもうホモサピエンスではないと言えます。まさにおっしゃったことが今起きていると思います。

学部に特化した質問から、将来の科学技術に関する深い質問まで丁寧に答えてくださり、参加者の知りたいという気持ちが伝わってくる印象的な時間となりました。

大学院生のお二人には、参加者から「学部間の交流はどのくらいありますか?」「情報文化学部の中でやりたいことが決まっている人はどれくらいましたか?」「大学に入学してから数学のレベルについて」「いろいろなことに興味があると専門性が薄くならないか?」「文系で入学して、途中から理系に変わった人はいますか?」「周りにどんな友人がいますか?」「TOIECの点数は何点ですか?」「情報文化学部の学生にとっての達成感はどんなときですか?」「博士課程はいつ決めますか?」「主な就職先を教えてください」など多岐にわたる質問があり、わかりやすくお答えいただきました。
参加者と一体となった親しみやすい雰囲気の中で、第一志望合格に向けてやる気が芽生え、大変有意義な時間となりました。

参加者の感想(一部抜粋)