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京大×河合塾『特別講演会』2016

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講演内容

「他大学にない京大の魅力とは何か」「なぜ京大は研究に強いのか」など、京大の魅力に迫る

日時・会場

京都校:2016年6月4日(土)理系14:00~15:30 文系15:50~17:30

大阪校:2016年6月11日(土)理系14:00~15:30 文系15:50~17:30

対象 中学生・高校生・高卒生と保護者の方

理系講演 大学院工学研究科/工学部 髙田 滋教授 のご講演

自己紹介と京都大学について

髙田 滋教授

予備校で話すのは生涯で今日が初めてです。1時間半は普段大学でやっている1コマ分ですが、私は研究者ですので、自分の気の趣くままに、うんちくっぽい話もありますが進めたいと思います。今日のお話ですが、まず簡単に自己紹介をしたいと思います。私は千葉県の市川学園を卒業しました。市川高校は今でこそ共学ですが当時は男子校で、進学実績も今ほどではありませんでした。昭和60年に高校を卒業し、関西の方にとっては記念すべき阪神タイガースが優勝した年に京都大学理学部に入学、大学院から工学に進みました。京都大学の工学部航空宇宙工学を専攻としていますが、他にも東京大学や名古屋大学や九州大学など航空と名のつくところは最近増えていますが、京大はとても基礎を大切にしていて、それが異端視されているところでもあり、しかしそれは後々未知の工学分野において役に立つ礎になると信じています。卒業生には川崎重工の社長、IHIエアロスペースの社長や新しい三菱自動車の副社長などがいます。研究者にもタイプがあって、実験をしたい人と理論をやりたい人。自分は理論屋なんです。

「流体」の力学と「圧縮性気体」について

研究の内容を紹介します。「流体」の研究対象は、自然界には川、湖、海、台風、雨など、人工的なものとしては、うちわ、扇風機、エアコンなどがあります。工場の瓶にいかに早く詰めるかという視点では、みりんも研究対象なんです。また、船や飛行機などで、モノがスムーズに動くための機械の潤滑油もそうですし、野球やスキーのジャンプ競技での風の抵抗なども分野に入っていて、「流体」は日常のあらゆるところに使われているんです。このように空気や水の流れを予測する学問を「流体力学」と呼んでいます。流体の性質についていくつか触れますが、その中でも流体の運動を予測する法則では「(微分)方程式」を用いていて、大学に入ったら絶対にお友達にならないといけない。また、必ず登場するのがオイラー方程式のオイラーであり、またナビエ・ストークス方程式は志のある人はぜひ挑戦してみてください。クレイ数学研究所のミレニアム懸賞として、数学的に証明できたら100万ドルが貰えます(笑)。

「衝撃波」についてもお話をしましょう。音速を超えると超音速、遅いと亜音速といいますが、超音速でモノが移動しているとき、その物質はものすごい衝撃を受けていて、そこに衝撃波が生じます。写真を使って各マッハでの衝撃波の出かたを見てみましょう。飛行機は、乗り心地が重要なので、音速の8割程度の速度で速くなりすぎないように飛んでいるんですね。衝撃波の下流で流れは圧縮、過熱、昇圧、そして減速しますが、オイラー方程式でこの現象はすべて説明できます。風洞という実験施設がNASAなどにありますが、これは風を起こすがらんどうのことなのだけど、僕も子どもの頃は掃除機にアクリルの筒をつけて線香を燃やすなど、そんなことばかりやっていました。大掛かりな施設はいらないんですね。創意工夫が大切で、欲しいときにないからってあきらめるのではなく、工夫するスピリット。これが京大らしさだと思っています。また、私は大学の先生ですが、知らないことはたくさんある。むしろ新しいことを知れるのはいいチャンスだと思っています。ポジティブ思考なんですね。

伝えたい、大切なこと

初めからきれいな装置なんてなくて、手作りの装置を使っているところほど新しい、面白い研究をやっているケースが多いです。モノを作るというのはそういうことで、自分で試作してみてここは危ないなとかを体感する。ホームセンターでアクリル板や木の板を買ってきて自前で作るんです。それと、身近なところに先端技術へのヒントは隠れているんですね。普段の生活の中での観察や体験が生きる。80%の完成度でよければ早くできますが、信頼されるものは限りなく100%に近い完成度のものだけで、理屈どおりいっているかをいつもしつこく確認する習慣が大切です。これは、唯(ただ)の思いつきと独創性との違いです。

新しい世界への扉

当たり前と思われていることに疑問をもって欲しい。馬鹿と思われることを恐れるな。分かったと得心できるまで自分でじっくり考えること。その意味で、時間制限のあるテストなんて本当は役に立たないんです。京大って、権威が出てきたら逆らうところで、山極総長が右向けと言ったら、全員左を向くのが京大です(笑)。京大の広報に登場する木内重基(きない・しげき)さん、ぜひ一度閲覧してみてください。京大の卒業生だから、とても得心すること書いています。京大で学んだ基礎から考える力は社会で大きな力となっている、複雑な現象を単純化できる基礎が大切なのだ、と。言い訳をすることを考えずに馬鹿になるんです。時流に乗ることは大切だが、流されるな。自分の信を持ちなさいと書いています。

参加者の感想(一部抜粋)

  • とても良かったです。将来の展望が開けるような感じでした。今まで“流体”というものにあまり興味がなかったのですが、おもしろさに気付けました。
  • 早く京大で工学がしたいと強く思いました。あらゆることに工学が隠れているんだなと思いました。
  • 実験に関する話については、実際の生活に結びつけることが大事などという内容にとても共感でき、早く大学生になり自分で装置をつくってみたいと思いました。

文系講演 大学院経済学研究科/経済学部 依田 高典教授 のご講演

自己紹介と京都大学について

依田 高典教授

今日のお話ですが、高1の方もいらっしゃいますが、大学受験を意識して、専門に関する知識を入れて入学してもらうっていうのは悪いことではないと思うので、自己紹介と京都大学に関するお話もありますが、研究に関する内容をメインに話そうと思います。

自己紹介に移る前に余談を少しだけさせてもらいます。君らは高校生のときは、入学試験の問題、つまり答えのある問題を制限時間の中で解く勉強をしている。だけど、大学に入ってから、また社会に出ると、答えのない問題に直面することになる。人生には答えはない。これにはタフさが必要なんですね。これは「不確実性に耐える勇気」といいますが、これを今日の授業の中の一つのテーマとしてお話しようと思います。

僕は30年以上も前ですが、新潟県の長岡高校を卒業し、高校時代はのほほんと過ごしていましたが、1年の浪人を経て相当に勉強をした結果京都大学経済学部に余裕をもって入学することができました。恵まれた環境に育った人ほど、「何故大学に進むのか」といったことに悩むことはないんですね。ただし、これは逆に恵まれていない。高校や大学の頃というのは、人生で一番大切な時間で、何をやろうと後悔しないという強いモチベーションと、その都度自分で判断し、決断し、行動する勇気を持つことが大切です。私の高校、大学は自由な学風でしたが、自由は両刃の剣で、好きなことができる自由はありますが、好きなことがみつからないのも自由で、自由はすなわち不自由で、自分で選ばなければならない、自分で責任を取らないといけないんですね。そしてそれに耐えることが重要なのです。

さて、「おもろい」を尊ぶ京大について、卒業生を紹介しましょう。日本人初のノーベル賞学者の湯川秀樹さんは、これもまた後にノーベル賞を受賞する朝永振一郎さんと第三高等学校、京都帝国大学でともに学んだ同級生だったんですね。そして哲学の道の西田幾多郎氏。ドイツのハイデルベルクという街のハイデルベルク大学に先日出張で行きましたが、街は素晴らしいが、向こうにある元祖の「哲学者の道」より京都の「哲学の道」の方がいいと思いますね。皆さんも良く知る山中伸弥先生、いわずと知れた芸人の宇治原さんも京都大学出身です。

総合人間学部の構内では学生たちが折田先生像を好き勝手いたずらした挙句、いろんなハリボテを毎年作っていて面白い。京大生は愛すべき無駄なエネルギーを持っていて、それが大事なんです。入学後に無駄に歩いてもいいんです。東大のように進振り(進学振り分け制度のこと)はないので、学年を進むのは難しくない。ただ、単位が揃わない不自由は困りますけれど、単位に拘りすぎる不自由は考えものです。私が経済学者になったのは、最初から学者志望だったわけではないんですね。僕らのころは、文学部や理学部のように「役に立たない」ことが尊重されていたので、僕もそのような道を進みたいと思っていました。それが、恩師の伊東光春先生に出会って、いつかこの人に勝とうと決意し、いつしか自由を求めて学問の道へ進んだんです。そして、行動経済学に出会い、望んだわけではありませんが、政策的にも「役に立つ」経済学者になりつつあります。ただし、人間は望むようにはいきません。その都度その都度不確実な現実にどう対処するかを試されているんですね。

行動経済学または心理経済学-こころの経済学を求めて-

経済学について、紹介したいと思います。経済学の語源はギリシャ語の「オイエコノミクス」で、これは家政学という意味です。どうやって給料と支出を賢くバランスとるか、ということです。今でいうと、ミクロ経済学です。もう一つは、漢字にすると、「経世済民の学」、経済を修めて民衆を救う学問となります。つまり、マクロ経済学です。経済学の分野には様々ありますが、私が研究しているのはそのミクロ・マクロ経済学と隣接するんだけれど、「行動経済学」「実験経済学」という分野になります。実験というと理系的なイメージがありますが、文系でも心理学と並んでしっかり実験をします。世の中の人達に分け入って観察をするんですね。

さて、難しい話をします。分からなさに耐えて何かを得ようとしてください。前提として、経済学が仮定する人間像(ホモ=エコノミカス)に、スタートレックのスポック、彼は宇宙人と地球人の混血です、がよく引き合いに出されます。彼はいつも合理的で感情に左右されません。行動主義とは、人間の行動を見れば、こころが分かる、というものです。こころの好みが合理的であるならば、行動からこころを推し量るというアプローチができる。経済学の源流としてはアダム・スミスがあり、こころを推し量るという観点では200年の間に間違えてきたんです。それを正すのが行動経済学です。こころの経済学に向かってケインズが登場します。ケインズはイギリスの中のイギリスで生まれ育った人ですが、1929年に始まった大恐慌で、伝統的経済学では手に負えなくなったんですね。不確実な未来におののく人間、つまり合理的ではない人間を認めた一方で、そもそもリスクが分からない真の不確実性に打ち勝って未知なる航海に出るアニマル・スピリットの重要性を説きました。

人間の非合理性には一定のルールがあり、だからこそ、それは学問の考察の対象になります。人間の認知能力・情報処理能力には限界があるという前提を立てたのがサイモンという人です。ここで、いよいよやっと、僕の専門である行動経済学に入ります。人間には二つのバイアスがあって、一つは現在性バイアス、もう一つは確実性バイアスです。現在性バイアスとは、「今すぐを将来よりも極端に重視すること」で、確実性バイアスとは、「100%を99%よりも極端に重視すること」です。これらは人間の本能に組み込まれていて、消えない。行動経済学では理論と現在の乖離、つまりバイアス、簡単にはこころのクセです、に焦点があたります。理性と感情の個人内葛藤が生まれるので、このこころの弱さ、クセを知り、その弱さを克服し、無理なく長期的な生活習慣を確立することを目指しています。

電力のフィールド実験-こころの経済学を活かす-

人には、自分の利益4:他人の利益1、という利己性が備わっています。福島の原発事故のあとの調査で、7割が将来の原発廃止に賛成している一方で、6割が電気料金引き上げに反対しているんですね。これは矛盾している。これが人間なんです。つまりある意味非合理的で感情的な存在です。経済学用語では認知的不協和、といいます。お金を払う痛みは、もらう喜びの2.5倍大きい。これを損失回避といいます。そして、人間は、態度表明により、一層その態度にこころが引きずられてしまいます。

ここで、我々はある電気のフィールド実験をしました。テーマは、どうすれば人は節電をしてくれるか。スマートレスポンスといいます。700世帯が参加し、希望の有無に関わらず2つのグループに分けて、ひとつのグループには節電を要請し、もうひとつのグループにはピーク時の電気料金を引き上げるという実験を行いました。それぞれ前者は人間の内的動機に訴える、そして後者は人間の外的動機に訴える方法で比較したんですね。その結果、節電効果、持続効果ともに後者の変動料金トリートメントに軍配が上がった。もちろん、節電要請グループでも一定の効果はありました。しかし、モラルに訴えても効果は一過性なんですね。ちょっとさびしいけれど、人間とはそんなものかもしれません。ここからのレッスンは、人それぞれだと思います。ただし、外的動機に頼りきってもいけません。伝家の宝刀は一回しか抜かない、もしくは抜かないほうがいいのかもしれません。

参加者の感想(一部抜粋)

  • 経済学には人間が関わるというイメージがなかったので驚きでした。90分では理解できなかったかもしれませんが、新たな観点は得られたと思います。有意義でした。
  • 最近、大学に行きたい理由がわからなくなっていたので、今回の話を聞いて大学に行きたい理由が見つかって良かった。
  • 大学での実践的な研究の一端が覗えたのが有意義でした。「答えのない問い」に向かっていかねばならない、という言葉が胸にチクチクと刺さるような気がします。

理系講演 大学院理学研究科/理学部 長田 哲也教授 のご講演

京都大学理学部の構造と入試について

長田 哲也教授

本日は当講演会にお招きいただきありがとうございます。私は大学院理学研究科と理学部の教授をしています。さて、まずは京都大学理学部のお話をしましょう。平成29年度版は近々できますが、平成28年度の『一般入試選抜要項』によると、理学部では大学院に進学する人が5分の4以上います。工学部や農学部もそうで、医学部はちょっと分かりませんが、約80%が2年間の大学院に行きます。なかには東京大学や大阪大学に行く人もいますが、おそらくほとんど京大の大学院に行き、就職するのは1割程度です。大学院の後は、理学部の場合半分くらいが3年の大学院博士後期課程に進んでいます。博士課程に行くと、就職がなくてお先真っ暗といわれていますが、今はそうでもありません。心ある企業に入って、例えば車の燃費をいかにあげるかという研究をしたりします。専門ばかりやるという人がいたっていいわけですね。まぁ、就職もできるというわけです(笑)。

京都大学の理学部は「理学科」だけで、数学科や物理学科などに分かれて募集しているわけではなく、3年次、4年次に研究室に分かれていきます。大阪大学や神戸大学は分けて募集をしていて、どちらがいいのかは分かりませんが、「ゆるやかな専門化」を標榜しているわけです。入試では、ここ数年ようやくセンター試験の得点も加味するようになりました。この前初めてやった特色入試では、とんでもなく難しい問題を出したんですが、我こそは、という人が挑んだのに全く歯がたたず、一般入試は受けなかった人もいるそうです。あれは、私らも解けませんから(笑)。

理学部は数理科学、物理科学、地球惑星科学、化学、生物科学の5系統に分かれていて、これらは高校の教科とほぼ対応しています。私の研究は地学に近い。高校時代は、私らのころですから地学もやりましたが、嫌いで、物化で受けました。だから地学をやっていない人でも大丈夫です。みなさん、高校を選んだときまたは河合塾を選んだときに進学実績を重視したと思いますが、理学部のホームページを見てみてください。京大理学部はノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹先生を未だに看板にしていますが(笑)、私も昔湯川先生の講演を聞いたことが誇りです。高校の時の物理はあんまり好きではありませんでしたが、大学の物理はいいなぁと思っています。

銀河系とはどんなものか?

5月末に、スーパーマーズが観測されましたが、火星がここ10年位の間で最も地球に近づいたんですね。火星は-1等星よりも明るい。200年以上前に、ハーシェルという天文学者がいまして、天文学で「距離を測る」というのは今でもとても難しいんですが、彼は星の数を数えるという素朴な方法で宇宙を測ろうとしました。1785年にハーシェルが出した銀河系モデルというのがあって、シリウスという最も明るい星までの距離の何倍、という形でこれを作りました。このハーシェルの銀河系モデルは、横が8600光年、縦が2150光年という大きさのもので、太陽はそのほぼ中心に位置するというものでした。それはCDのような円盤の形をしていると考えれていましたが、この20年の間に棒渦巻き銀河と呼ばれる形状であることが分かってきました。ポイントとしては、銀河がどう生まれたかは未だによく分かっていないが、大きなガスの固まりから、重力によって引かれて集まってきたものだろうとは考えられているわけです。

さて、天文学のスーパースターのハーシェルですが、実は彼の銀河系モデルは実物のごく一部しか観測していなかったことが分かっています。でもハーシェルのすごいところは、銀河系の観測だけではないんですね。赤外線を発見したのも彼です。ハーシェルは太陽光の中にどのくらいエネルギーが含まれているかに興味を持ちました。その実験の結果、紫や青よりも黄色、黄色よりも赤のエネルギーが強く、さらに赤の外側にエネルギーが集まっていることを発見しました。つまり、赤外線です。ハーシェルは赤外線天文学の父でもあるんです。そして、これは19世紀の科学の発展に大きく寄与します。赤外線で見た星座は、可視光線で見た星座とは全然見え方が異なるんですね。チリ・アンデスの巨大電波望遠鏡アレイALMAには日本も参加していますが、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波といろんな波長で観測して研究に役立てています。これが、大事なものは目に見えない、といわれる理由です。

銀河系中心部を赤外線で観測する

赤外線による観測だと、銀河系の空間(星間空間)にある固体微粒子(星間塵)に散乱吸収されにくい特徴があり、ずっと横切って遠くまで観測することができます。南アフリカ天文台に設置した赤外線望遠鏡IRSFで観測すると、可視光線では暗黒で見えない銀河系の中心部にも、星の大集団が見えます。ただし、大気によるゆらぎによって本当は点像のはずの天体もぼやけて見えてしまいます。解決する方法として、宇宙に望遠鏡を打ち上げればいいのですが、ハッブル宇宙望遠鏡はたった2.4mの鏡なので正確に観測できません。

どうすればゆらぎをとめられるのか?解決として、大気がゆらぐのと同じように鏡もゆらゆら動かしました(これを補償光学といいます)。そうすると、銀河系の中心をくっきりと観測することができたんですね。

ブラックホールについて

銀河系の中心にある質量は、太陽の400万倍。ちなみに太陽は地球の30万倍の質量があります。なのに、光っていない。これは、光も出ていない天体ではないのか?というのが、つまりブラックホールです。ブラックホールといのは天体の種類で、太陽の10万倍くらいの質量のものはたくさん見つかっています。これはとても重くて、その表面からは光さえも脱出できないもののことです。私達の銀河系の中心にあるのは、太陽の400万倍の巨大ブラックホールと考えられ、これは他の銀河の銀河系に比べて「普通」で、特に重いわけでも、活動が活発なわけでもないんです。

今日の話の最後に、今「晴れの国岡山」で建設している、京都大学3.8m新技術望遠鏡の話をさせてください。これは、東アジアの天域が独壇場で観測でき、軽量架台で高速に動き、天体をすばやくとらえることができます。これで、真の「木星」の発見を目指して、またくっきりした像で、邪魔な光を1億分の1にも低下させることができる望遠鏡です。予定通りいけば来年3月にドームが完成しているので、みなさん京都大学に入ったら、これを体感することができます。

参加者の感想(一部抜粋)

  • とてもワクワクする内容でした。京大で学んでみたいと一層思うようになりました。
  • こんなにも大学は魅力的なのか?!と驚きました。非常に良い経験になり、やる気が出ました、ありがとうございました。
  • ブラックホールの話が高校で習う万有引力の公式でできることに感動しました。

文系講演 大学院法学研究科/法学部/京都大学理事補 酒巻 匡教授 のご講演

刑事訴訟法とは

酒巻 匡教授

みなさん、本物の大学教授は見たことないかもしれません。私は紹介にあるとおり、東京大学で法学の基礎を叩き込んでいただいた後、神戸大学、上智大学などを経て今の職にあります。私は河合塾でもあちこちでお話をしていますが、これから進路を決める青少年にお話ができることを、大変嬉しく思っています。

専門の刑事訴訟法について少しお話しますと、刑事訴訟法は法律の中ではマスコミに取り上げられることも多いので、比較的良く知られています。裁判員制度というのは、裁判員を20歳以上の日本国民の中から選ぶのですが、被告人が有罪か無罪かを裁判官と決めるわけですね。私はこれが専門で、内閣府の審議会に呼ばれて制度設計から準備に3年、今、制度施行から7年目を迎えています。数日前に、九州で「顔覚えとるからな」と裁判員に言ったというニュースをご存知でしょうか?いわゆる裁判員に対する脅しで、これも元々の制度設計の想定内の出来事です。また、日本では犯人への密室での取調べで自白を獲得する伝統がありますが、外国、とくにアメリカでは捕まった数時間後に弁護士がやってきて、それまでは何もしゃべらない、何も答えるな、と言われています。密室での取調べにならないんです。そこで、日本の制度を抜本的に変えることを審議会で検討し、先の国会で見直すことが決定しました。制度設計から運用、不備を包括的に見る、というのは法律学の教授としてはとてもめずらしいことです。でも、国会と授業では授業が大切ですよ。本業は授業です。

世界史の中で出てくる、最も古い学問の神学とともに発達してきたのが法律学です。共通するのは「言語テキスト」。法律学というのは、人間社会に生じるありとあらゆる「不幸」に帰着する、理系の先生の話つまり「真理」とはかけ離れたきわめて俗的なものなのです。

2016年5月に福岡地裁で審理をした裁判員2人に対し、被告の暴力団幹部の友人と見られる人物が近くのバス停で「あんたら裁判員やろ。顔は覚えとるけんね。よろしくね」などと声を掛けて、被告に有利な審判をするように脅した事件。裁判員法違反容疑での逮捕者は全国で初めて。

真の意味の「大学」としての京都大学

京都大学にただよう「あやしい」雰囲気、京都大学で勉強することがいかに楽しいか、 についてお伝えします。京都大学はuniversity、真の意味での「大学」が維持されている、まれなところです。私は東大卒なのですが、京大では京大卒の教授が多い。そのため一層京大の特徴がよく分かるんですね。京大生の特徴は、要領がよくない。どんくさい。一方東大生は要領がよくって、山があると完璧に登ります。京大生は、山があるとまず「そこに山があったんか!?」となって谷に下りる(笑)。東大生は政治家や事務次官など何になってもやっていけるが、京大生は「先生、京大の先生になって本当に良かったな」という人が山ほどいる。私は理事補として山極総長の補佐をしていますが、この人はゴリラのことを聞いたらなんでも知っているすごい人です。ゴリラの横に座って、ゴリラにゴリラと思ってもらうようにゴリラをやる。これは、ヨーロッパの学者は誰も思いつかないとてつもないことですよ。でも、「総長、人はもうちょっと複雑です」と言っています(笑)。

university≠schoolで、京都大学は本当の意味での大学だと思っています。自由の学風と表現されるところで、これは何事にもとらわれない、精神活動の自由のことです。何の蓄積もない所には、何の創造も生まれない。絶対。そして、京大はその蓄積は独自で行うことを強く求めています。それに加えて、「あーせー、こーせー」、と言われない学風があります。皆さんの生涯において、他では絶対に得られない「時間の自由」があるんですね。

文科系の学問とは、言語テキストを熟考すること

最近の経済学は理科系に近くて、数学が不得意だとついていけない部分がありますが、それ以外の文科系に共通するのは、言語テキストを読み込んでそれを理解する、ということです。意識的、徹底的にテキストを理解する、ということが求められます。この意味で、高校までの国語、英語は間違いなくその力を間接的、直接的に養います。これは大学院に進む人にも、社会に出る人にも、いかなる分野でも(理科系においても)役に立つ。

法律学と法科大学院の紹介

ボローニャの最古の大学で、神学や法律学が興りました。19世紀に国家ができ、紛争が起こったときには個人間で解決するのではなく、国家が法典に書かれたルールに則って裁くようになりました。明治時代にフランス、ドイツで出来つつあった、これらの司法制度を日本は丸々輸入したわけです(その土壌があったわけですが)。

大学の授業では条文を熟読して、個別の判例について解説する、知的作業なわけであって、法学といえば六法全書を丸暗記する、というつまらないものでは全くありません。また法学部のテストは学習した知識を使って小論文を書く、というのが基本的な形で、明確な答えがあるわけではなく、そこに結びつく論理的説明、解釈が必要です。丸暗記は通用しません。

また、法学部の学生はつぶしがきくと企業の方からも聞きます。会社に入っても論理的にこっちの話とあっちの話を聞けるからでしょう。

法律家になるには、法科大学院を卒業する必要があります。ここでは、法学的なテキストを山のように読んできて、先生と議論する。こっちはずっとそれをやってきているので、学生をボコボコにやっつける(笑)。そんな訓練を繰り返して鍛えているので、司法試験の合格率は高いし、やっぱり京大卒はいいですね、変わってますねと言われる。本に書いていないことにめっぽう強いんですね。

英語についてのアドバイス

だいたいの人の英語力は、京大受験直前に人生最高レベルに達し、そこから緩やかに下がります。めでたく京大に合格したら、その英語力が減衰しないことを強くお勧めします。アメリカやイギリスのニュースをネットで毎日聞けば(映画はスラングが多いからダメです)、相手のいうことはキャッチできる。流暢に話す必要はなく、ゆっくり、ちゃんとした文法・単語でしゃべれば必ず相手に通じます。そして大切なのは「言うべきこと」があるか。それを今鍛えているんですね。つまり、大学では、好きな本を読んで、友達を作って、言うべきことを持てるか、が大切だと思っています。

参加者の感想(一部抜粋)

  • 本当に参加して良かったと思いました。去年まで漠然と京大へ通って勉強したいと思っていた気持ちが固まりました。
  • とても楽しくお話を聞くことができました。法学の面白さや深さの表面しか理解できてないかも知れませんが、今回で興味が湧いてきました!本当に来てよかったです。
  • 京大に入った後のことを意識しすぎて危険でした。