河合塾グループ 河合塾
学年と地域を選択
設定

学年と地域を選択すると、必要な情報がすぐに見つかる

塾生ですか?

はい
いいえ

河合塾>体験授業・イベント>知の追求講座 第四弾 東大教授による講演「ゲーム理論って何ですか?」

東大教授による講演「ゲーム理論って何ですか?」2014年度 知の追求講座 第四弾

日時

2014年6月28日(土)14:00~16:00

会場

河合塾本郷校 202教室

対象者・参加者 河合塾 大学受験科 東大コース塾生(高卒生)

『知の追求』講座とは
東大入試で求められる本質的な学力を育み、知的領域を拡げる場として、“知の追求”と銘打ち開講された特別講座です。東大での学びや、その先までをも見据え、東大が求める人材の養成をめざします。

<講演者>

神取 道宏(かんどり みちひろ) 教授
神取 道宏(かんどり みちひろ) 教授
東京大学大学院経済学研究科

スタンフォード大学で博士号を取得したのち、ペンシルバニア大学助教授、プリンストン大学助教授を経て現職。専門は、理論経済学、特にゲーム理論。最新の理論研究を進めるとともに、それをわかりやすく・おもしろく教えることにも力を入れている。

東大教授による講演「ゲーム理論って何ですか?」

今回の「知の追求」講座は、21世紀の大きな課題の一つに挙げられる人間行動を明快に分析しようという「ゲーム理論」をテーマに、その気鋭の研究者である神取道宏・東京大学大学院教授をお迎えし、ゲーム理論がどのような学問なのかをわかりやすくご講演いただきました。
ゲーム理論は、人間行動や社会問題など一見ぐちゃぐちゃしたものが、数学的なモデルを使ってすっきりと理解できることから、政治・経済・社会から生物・コンピュータサイエンスに至るまで幅広く応用され、特に経済学の分野では多くのノーベル賞受賞者が出ています。こうした文科系と理科系の垣根を越えた最先端の学問であるゲーム理論のおもしろさを、高校とは違う、大学で学ぶ社会科学の魅力として解説していただきました。

「ゲーム理論」を知るためにゲームを体験してみよう

「ゲーム理論」を知るためにゲームを体験してみよう
まず、ゲーム理論のおもしろさを知るには体験が一番、ということで、参加者全員が2人1組、赤と黒に分かれてトランプゲームをしてみることに。人間の行動を、「ゲーム」という数学的なモデルを使って予測し説明するゲーム理論を体感する実験です。
ゲーム終了後、先生から「赤と黒はどちらが有利か」と聞かれ、微妙に有利不利がある非対称なルールであったため、参加者の意見は分かれました。確率で予測しようとする人、心理的駆け引きを考えて予測しようとする人など、意見はさまざまでした。参加者はそれぞれが相手の出方を読みながら勝つために行動したようですが、それを含めて考えるとますますどちらが有利かはっきりとした答えが出てきません。そこで登場するのがゲーム理論です。神取先生によると、「事象をゲームという数学のモデルで表現して、それを数学の力を使って解くことで人間の行動を予測する、あるいは説明しようという学問」だから、すっきりと答えが出せるというのです。果たしてそれは可能なのでしょうか。

天才数学者ジョン・ナッシュが一般化の基礎をつくった

これを可能にするために、稀代の天才たちの挑戦を必要としました。その一人、天才数理科学者のフォン・ノイマンは、先ほど実験で行ったトランプゲームのような人間と人間がプレイするゲームは、「勝つために深読みがずっと続くので、単なる数学の応用問題とは違う。自分にとって得な戦略を練るためには相手の出方をどう読むかを確定する理論が必要」ということに気がつき、まったく新しい数学の理論として「ゲーム理論」をつくりました。
「ところが残念なことに、ノイマンのゲーム理論では特殊なゲームしか解けなかったのです。非常に特殊なゲームはどう解いていいのかを発見したのですが、人間の行動すべてに当てはまるような統一的な理論を見つけることはできなかった。」その問題を鮮やかに解いたのが、天才数学者ジョン・ナッシュでした。「物理学では、どんな物体の運動もニュートンの法則に当てはまります。社会問題におけるニュートンの法則のような、万能の理論はないか。それをナッシュは考え出した。」というのです。

「ゲーム理論」は本当に現実に当てはまり、社会科学として有用か?

「ゲーム理論」は本当に現実に当てはまり、社会科学として有用か?
神取先生によるとナッシュがゲーム理論を見出したのは「コ—ヒーをかき混ぜる水面を見たとき」だといいます。数学者の特異な抽象化による発想で、まったく常人には想像できない世界ですが、「コーヒーを混ぜると必ず渦の中心ができるということと、どんな社会問題でもそれぞれの人が最善を尽くしているような状態が必ずあるということが、両方とも同じ数学的理由から生じているとわかったのです。これを、トポロジー(位相数学)の理論である不動点定理を使って証明した」というわけです。この、「最善を尽くして調整の余地がない渦の中心のような状態」のことを『ナッシュ均衡』と呼び、これを用いることで人間の行動が予測できるのです。実験で行ったトランプゲームの勝率や札の使用率の予測と、実際の集計結果との比較を神取先生が示すと、その驚くべき数値の一致に会場からどよめきが起きました。ゲーム理論の凄さとおもしろさを参加者が実感した瞬間でした。
その後、ゲーム理論の社会科学における有用性の実例として、スポーツ(サッカーのPK)、政治(マニフェスト戦略)、道路交通(交通量の予測)それぞれのケースの予測と結果が解説され、また、現実の生活に役立っている研修医のマッチング制度なども紹介されると、参加者もゲーム理論をいっそう身近に捉えることができるようになりました。


質問コーナーでは、ゲーム理論の今後の課題や展望に及ぶほど白熱し、ゲーム理論に関連した人間行動の脳科学と経済学との境界分野である神経経済学にまで話が広がりました。

終わりに、「21世紀の大きな課題は人間行動の分析です。今日皆さんに少し見せたように、ゲーム理論というのは、人間行動分析への手引きとなる最先端の分野です。ぜひ、皆さんも大学に入ったらゲーム理論を勉強していただきたい。」という神取先生の熱いメッセージで講演は締めくくられました。