河合塾グループ 河合塾
学年と地域を選択
設定

学年と地域を選択すると、必要な情報がすぐに見つかる

塾生ですか?

はい
いいえ

河合塾>体験授業・イベント>知の追求講座 第二弾 東大教授による講演「未来型医療を拓く工学の楽しみ」

東大教授による講演「未来型医療を拓く工学の楽しみ」2014年度 知の追求講座 第二弾

日時

2014年5月17日(土)14:00~16:00

会場

河合塾本郷校 302教室

対象者・参加者 河合塾 大学受験科 東大コース塾生(高卒生)

『知の追求』講座とは
東大入試で求められる本質的な学力を育み、知的領域を拡げる場として、“知の追求”と銘打ち開講された特別講座です。東大での学びや、その先までをも見据え、東大が求める人材の養成をめざします。

<講演者>

石原 一彦(いしはら かずひこ) 教授
石原 一彦(いしはら かずひこ) 教授
東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻、バイオエンジニアリング専攻

早稲田大学大学院博士課程修了。生体の機能を意識して、人工系で実現する材料を設計する研究を行っている。東京医科歯科大学に所属している際に人工臓器の創製や細胞・組織の利用に着目し、現在は、マテリアル工学を基礎とした未来型医療への貢献をめざしている。

東大教授による講演「未来型医療を拓く工学の楽しみ」

東大教授による講演「未来型医療を拓く工学の楽しみ」
今回の「知の追求」講座は、世界レベルのポリマーバイオマテリアル(MPC ポリマー)を開発し医療デバイスの創製から化粧品や各種ケア製品などへの応用で、広く社会に貢献する石原一彦・東京大学大学院教授をお迎えし、「未来型医療を拓く工学の楽しみ」と題してご講演をいただきました。工学が生活に密着した学問であり、いかに現代社会を豊かにしているかを、大学での教育と研究から技術の開発と応用までのプロセスを介し、実感を持って理解できるように解説していただきました。

「研究は、偉大な研究者よりも学生が上にくることもある」

まず、大学では何ができるのか。
石原先生によれば、「大学というのは教育と研究の両方を行う場所です。教育は過去の情報を正確に理解し、知識として持つことを最大の目的にしています。研究は自分が主体となって考え方や技術などをつくり出し、新しい情報として発信することです。この両方を成し遂げれば大きな社会貢献に繋がります。豊かな社会をつくるために教育と研究の2つを学ぶことができるのが大学」だと言います。
そして、「いつも頑張っている偉大な研究者よりも、初めて何かを見つけ、その情報をきちんと理解して卒業研究をした学生が上にくるということは、普通に起こり得ます。常に好奇心をもって観察をすることで、世界No.1になれることが研究の魅力」だとも言います。これには、目を輝かせた参加者も多かったことでしょう。
研究は知的冒険であることから、誰も正解を知らず、大学の先生でさえも教えられないという厳しさがありますが、その反面、未知へ挑むという楽しさがあります。「難題を解決する知識、知恵を持ってください。問題が解けたら喜ぶ習慣を持ってください。小さなことにも感激する心を持ってください。日常の中の小さな変化を見つけるようにしてください。」と、研究を楽しむ姿勢も教えてくださいました。

バイオ インスパイアードで医療マテリアルに挑む

バイオ インスパイアードで医療マテリアルに挑む
石原先生の知的冒険は、専門の化学を基盤とした新たな医療マテリアルを創製することでした。既存の医療マテリアルの問題点を解消するために、生体とマテリアルの仲立ちをする優れたバイオ インターフェイスが必要であることに気づいた石原先生は、バイオ インスパイアード手法で挑みました。この手法は「たとえば鳥を見て昔の人は空を飛ぶには羽ばたけば良いのだと思いました。しかし、鳥は飛べるけど人は飛べないのです。なぜ鳥は飛べるのだろう。羽ばたくから飛べるのではない。羽ばたくのは方法論であって、必要なのは推進力と揚力である。」という、科学的洞察力と研ぎ澄まされたインスピレーションで本質を見抜く思考法です。これにより石原先生は生体分子・組織から啓発され、機能と構造の必要部分を抽出して合成化学的手法により新たな医療マテリアルを創製に成功しました。それが細胞膜からインスパイアされた人工細胞膜表面を持つMPC ポリマーと界面の創製技術でした。講演ではこの経緯を、参加者の学びの参考になるようにお話しいただきました。

MPC ポリマーを創製し、先端医療で社会貢献

講演後半は、MPC ポリマーと界面の創製技術が、先端医療を中心に社会にどのように貢献していったかを紹介していただきました。
MPC ポリマーの研究から工業生産化のこと。バイオマテリアル研究に決定的といえる水の構造の重要性という新たな分子設計概念を与え実証したこと。世界最小口径の人工血管や長寿命の人工関節などこれまでの常識を変える治療法を提供したこと。スキンケア、ヘアケアあるいはアイケアなどの民生品に、非天然系素材で感染を防ぎ品質管理も容易な新しい素材を提供したこと。再生医療などのバイオテクノロジーの進歩に対応できる素材、表面処理技術を提供したことなど、石原先生の研究は広く活用されています。

最後に石原先生は、「最初、私は化学専門でした。化学の知識や技術を利用して、分子をつくることを一生懸命にやっていました。しかしだんだんと、それだけでは世の中に活かすことが難しいとわかってきました。そこで、工学、理学、薬学、医学など他分野の研究者たちと一緒に研究を進めてきました。皆さんは、基本的な学問領域である化学、物理学、数学、少し応用である生物学、地学などを学び、その知識を大学に持ってきてチャレンジしながら工学や農学、薬学などに使い、将来的に社会貢献に役立てていくことと思います。そのことを踏まえて、今日は基礎的なところから出口を見据えた応用研究までの話をさせていただきました。何かの折にこういうチャレンジの話があったなと思い出していただければ幸いです。」と結びました。

その後の質問コーナーでも、理系の参加者からは研究と社会貢献に関すること、文系の参加者からは特許ビジネスや医療機器の認定のことなど質問が相次ぎ、盛況の内に終わりました。