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河合塾>体験授業・イベント>知の追求講座 第3弾 東工大教授による講演

東工大教授による講演「光を電気に変える太陽電池」2015年度 東工大 知の追求講座 第3弾

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日時

2015年7月4日(土)15:00~17:00

会場

河合塾 池袋校

対象者・参加者 河合塾 大学受験科・高校グリーンコース 東工大志望者

「東工大 知の追求講座」とは

東工大入試で求められる本質的な学力を育み、知的領域を拡げる場として、“知の追求”と銘打ち開講された特別講座です。東工大での学びや、その先までをも見据え、東工大が求める人材の養成をめざします。

<講演者>

山田 明(やまだ あきら)教授

山田 明 (やまだ あきら) 教授
東京工業大学 大学院理工学研究科 電子物理工学専攻

1984年東京工業大学工学部電子物理工学科卒業。1989年同大学大学院理工学研究科電子物理工学専攻修了(工学博士)。その後、同大学工学部の助手、講師、助教授を歴任し、2008年より現職。著書に「太陽電池の基礎と応用」(培風館)、「太陽電池技術ハンドブック」(オーム社)などがある。

東工大教授による講演「光を電気に変える太陽電池」

東工大教授による講演「光を電気に変える太陽電池」の様子

「東工大 知の追求講座」第3弾は、一般的なシリコン系太陽電池よりも高い効率で太陽光を電気に変換できる化合物薄膜太陽電池の研究で知られる山田明教授をお迎えし、太陽電池の歴史と現状、将来展望などについてご講演いただきました。
冒頭に東工大、とりわけ電気電子系の研究について触れられ、また、次年度から東工大の教育システムが変更になることや、入学直後から物理・科学・数学・生命の4科目が必修科目になることなどをご紹介いただいた後、50枚以上ものスライドを使って、太陽電池について幅広くお話いただきました。「太陽電池の仕組みと新しい技術開発について」、さらに「エネルギー源としての大きな可能性と将来展望」などを熱く語っていただきながら、ところどころで参加者に質問を投げかけては考える時間をつくってくださる大学の授業のような講演に、皆、興味深く聞き入っていました。

量子力学の発展を待って開発された太陽電池

最初に取り上げられた話題は、電池の歴史でした。ボルタの電池が発明された1799年から電気電子工学の歴史が始まったといいます。その50年後にはバッテリーが発明され、さらにその10年後には乾電池が開発されました。私たちは200年以上も前に発明されたものを今でも使っているわけです。
太陽電池の原理は、固体に光を当てると電気が流れる「光電効果」です。ボルタ電池の発明から40年後にはその現象が発見されていましたが、その後の研究は低迷し、太陽電池が開発されるまでに100年以上の時間が流れました。「なぜでしょうか」と山田先生は参加者に質問を投げかけたあと、次のように話されました。
「現象が発見されても、その原理が分かっていないと、モノとして使うことはできません。光が当たって電気が流れる現象を説明するには、量子力学の存在が不可欠だったのです。ですから量子力学が完成し、光電効果を説明できるようになると、25年くらいで実用的な太陽電池が登場してきました。大学で物理現象や化学現象を学ぶのは、そういう理由もあるのです」
理論が確立できないと、新しいものを生み出すことはできないとの説明に、参加者一同、深く頷いていました。

エネルギー源としての太陽電池の可能性は意外と高い!?

東工大教授による講演「光を電気に変える太陽電池」の様子

次に山田先生は、エネルギーの話題に触れられました。日本がエネルギーを得るために海外から購入した「一次エネルギー供給量」と、実際に使ったエネルギーを示す「最終エネルギー量」のグラフを使いながら、その差がエネルギーロスである「排熱」に由来することや、政治・経済の動きがエネルギー量に敏感に反映することなど、理系・文系を問わない総合的な視点で解説してくださいました。
そのうえで、エネルギーを作り出す方法の簡便さや、輸送、蓄積の容易さなどから、電気エネルギーが最も優れたエネルギーであり、快適な生活には電気エネルギーの存在が欠かせないといいます。電気エネルギーは主に火力、水力、原子力による発電で作られますが、それぞれ化学エネルギー、位置エネルギー、原子核反応を利用して、熱エネルギーや運動エネルギーに変換し、最終的には発電機のタービンを回して電気エネルギーをつくり出しています。
「これに対して、太陽電池は光エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる装置と捉えることができます。太陽光は快晴時には1m2当たり1キロワットのエネルギー量がありますが、これを100%変換できれば、3~4m2くらいの太陽電池パネルで家庭用のエネルギーをすべて賄うことができるのです」
そして、変換効率15%の市販品を使い、日本の日照時間を基準にした試算結果を次々に紹介されました。日本の全エネルギーを賄うには、関東平野の1.5倍くらいの面積の太陽電池パネルがあればいいこと、電力エネルギーだけなら茨城県くらいの面積で済むこと、さらに、日本の面積の3分の1、つまり東京・大阪間を一辺とする正方形くらいの面積に市販の太陽電池パネルを敷き詰めれば、全世界で消費する電力エネルギーを全て賄うことができることなどの説明に、参加者は一様に驚いた顔になりました。
「太陽エネルギーにはそれだけの可能性があるのです」

物理、科学の知識を駆使しながら薦める大学の研究

さて、いよいよ先生の研究の話題です。最初にシリコン太陽電池の原理について、シリコン原子がダイヤモンド構造を取り、共有結合で結ばれていること、そこに光が当たることで電子が励起されて自由電子を生み出すこと、それを制御するために半導体のpn接合を利用していることなどを解説され、次いで、ご自身の研究室で研究している「カルコパイライト薄膜」を使った太陽電池の話に入っていきます。カルコパイライト薄膜は、ガラスに銅とセレン、ガリウム、インジウムを蒸着させたもので、現在の最大変換効率は世界トップレベルで21%程度、先生の研究室でも18.5%は可能だといいます。
カルコパイライト薄膜の太陽電池の作り方を、動画なども使ってわかりやすく紹介していただいた後に、蒸着させる温度による質の違いや、より高品質にするための工夫などについて参加者への質問も交えながら、丁寧に解説してくださいました。
「このように大学では少しずつ条件を変え、実験を繰り返しています。その結果を、物理や化学の知識を使って考察しながら、少しずつ変換効率を高めていくのです。私は電気電子系ですが、研究に必要なのは物理と化学です。だからこそ、東工大では物理と化学の配点が高いのです」

最後に山田先生は太古の大気が二酸化炭素だけだったことに触れられ、植物の光合成で酸素ができ炭素が地下に固定されたとして、現在の酸素量から地中に埋まっている炭素量を導く計算を参加者に求めました。何人かの答えを聞いた後、みんなに次のように問いかけました。
「では、このまま、石油や石炭、天然ガスなどの地中の天然資源をすべて燃やすとどうなるでしょうか」
「酸素がなくなる」という答えを聞くと、山田先生は「正解です。だから私は太陽電池を研究しているのです。地球が閉鎖系なら、空気中の酸素を使って地中の炭素を燃やすと二酸化炭素が増え、酸素のない太古の大気に戻ります。それを戻すには人工光合成しかありません。ですから人工光合成の研究も盛んに行われています。一方、私は開放系で考えていて、太陽光からエネルギーを得ながら、持続可能な社会を作ることに貢献したいと考えています」と締めくくられました。

質疑応答の時間には、日本の太陽電池のシェアや、有機系の太陽電池の可能性、エネルギー問題、環境問題など、参加者から次々と質問が出され、改めて参加者のエネルギー問題への高い関心を感じることができました。講演終了後も先生への質問の列ができ、先生は一つ一つ丁寧に回答されていました。