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河合塾>体験授業・イベント>知の追求講座 第1弾 東工大教授による講演

東工大教授による講演「環境、生体、エネルギーのキーマテリアルとしての氷」2015年度 東工大 知の追求講座 第1弾

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日時

2015年6月6日(土)15:00~17:00

会場

河合塾横浜校

対象者・参加者 河合塾 大学受験科・高校グリーンコース 東工大志望者

「東工大 知の追求講座」とは

東工大入試で求められる本質的な学力を育み、知的領域を拡げる場として、“知の追求”と銘打ち開講された特別講座です。東工大での学びや、その先までをも見据え、東工大が求める人材の養成をめざします。

<講演者>

岡田 哲男 (おかだ てつお) 教授

岡田 哲男 (おかだ てつお) 教授
東京工業大学 大学院理工学研究科・理学系長、理学部長、大学院理工研究科・化学専攻

京都大学大学院理学研究科博士課程修了後、静岡大学教養部で助手、助教授を務め、1995年から東京工業大学に。変わった性質を持つ水の個体としての氷に注目し、その界面における化学変化に注目した分析化学の研究を進めている。

東工大教授による講演「環境、生体、エネルギーのキーマテリアルとしての氷」

東工大教授による講演「環境、生体、エネルギーのキーマテリアルとしての氷」

今回の「東工大 知の追求講座」は、氷を使った新たな物質の計測法の開発などで知られる岡田哲男・東京工業大学教授をお迎えして、身近な存在である氷をテーマにご講演いただきました。
固体になると液体よりも体積が増加するという特異な性質を持つ水は、氷になっても不思議な性質を見せるそうです。その氷が我々の人間生活に深く関わっていることや、そうした氷の性質を応用した新しい技術開発の可能性について解説していただきました。
合わせて、東工大で進められている教育改革の内容と、それに伴って来年度から大きく変わることが予定されている教育組織と教育システムについてもご紹介いただきました。

将来役立つことを信じて、自分の興味を追究する学問—─理学

最初に話題にされたのは、化学についてのイメージでした。参加者に化学の好き嫌いをたずねたところ、好きな人はわずかでした。嫌いな理由が「覚えることが多いから」だと知ると、「覚えることは大して重要ではありません。反応の一つひとつを覚えるより、そうした反応を起こさせる法則性を知っていることの方がはるかに大切で、大学に入学したらそういう勉強をすることになります」とエールを送ってくださいました。
当日の参加者に理学部志望者が少なかったことについては、そのイメージがあまりに現実的すぎるためだと指摘され、理学は「私たちを取り巻く自然界に存在する道筋と法則性を探求する学問」だとした上で、工学との違いについて言及されました。工学部の化学と理学部の化学を例にあげ、工学部の化学は社会への還元が目的であり、「社会の要請に応える」ために研究を行うのに対して、理学部の化学は、基本的には「自分が興味を持てるかどうか」の観点から研究を行っているといいます。「ノーベル賞受賞者の数をみても分かるように、学問的には理学の方が評価は高く、今は役に立たないかもしれないが、将来大きく役立つことにつながることを信じて研究するのが理学なのです」と説明してくださいました。
加えて、理学を学んだ学生でも就職の心配も一切ないといいます。社会に役立たない学問だからといって、社会が理学を学んだ学生を必要としていないわけではないという話に、参加者は頷きながら聞き入っていました。

氷の端にできる水素結合を利用した物質の分離技術に挑戦!

氷の端にできる水素結合を利用した物質の分離技術に挑戦!

次いで氷の話題に移ります。水の分子一つひとつはよく分かっているものの、流体としての水には不可思議な点が数多くあるといいます。通常の物質は温度が高くなると、密度が小さくなりますが、氷は4℃くらいに極大点があります。岡田先生によれば、その理由はまだはっきりとは分かってないそうです。
そして、圧力と温度による水の状態の違いを表現した相状態図を示しながら、氷にもさまざまな種類の結晶があることや、それぞれに安定性や性質が違うことなどを分かりやすく説明してくださいました。密度が等しい六方最密充填と立方最密充填の構造の違いを説明する箇所では、参加者もその違いを理解しようと、真剣に見入っていました。
氷の構造の話の後に、氷の端には水素結合ができやすく、そこにさまざまな物質を結合させることで、物質を分離することができる技術の話へとつなげ、先生の研究テーマである氷を使った化学分析の研究をご紹介いただきました。
さらに、「物質と物質の境を“界面”と呼びますが、とくに氷の界面ではさまざまな興味深い化学反応が起きており、それらは私たちの生活と密接に結びついています」と、話題を広げてくださいました。雲の中のエアロゾルや氷の分子が窒素酸化物の循環に影響を及ぼしていること、アムール川の氷が鉄や銅などの金属イオンと結合して海洋中の植物プランクトンをたくさん発生させることが北海道で海産物を豊富にしていること、細胞を凍らせない不凍タンパク質の存在、水分子のかごの中にメタンを取り込んだメタンハイドレートの可能性など、氷を巡るさまざまな現象や研究の可能性についてお話くださいました。初めて聞く話も多く、熱心にメモをとる参加者の姿も目立ちました。

学部と大学院を一体化した「学院」で東工大が変わる

最後に、2016年度からの東京工業大学の改革について紹介していただきました。「東工大の大学院進学率は90%以上です。こうした現状から、現在進めている教育改革の一環として、学部と大学院を一体化した“学院”という組織に移行します。しかも従来の学年進行の考え方をやめ、学部4年間と修士2年間、博士2年間をオーバーラップさせ、教育を充実させていこうというわけです」。
科目をナンバリングし、理解が進んだ学生は学年と関係なくどんどん高いレベルの科目を履修することができるようになるため、大学入学から6年間で博士号を取得したり、長期間の海外留学を行ったりすることが容易にできるようになるといいます。 「学部・学科から、学院・系という組織に変わりますが、類別の入試制度は従来とまったく変わりません。能力を持った学生をどんどん先に進ませることで、世界を視野に入れて活躍できる学生を育てたいと思っています」と抱負を語ってくださいました。

最後に、岡田先生から参加者に次のようなメッセージをいただきました。
「一般には『チャレンジしろ』といいますが、僕はそれでは足りないと思っています。僕が言いたいのは『失敗しろ』ということです。失敗が人を成長させるのです。今は失敗しても何も失うものはないはずです。ぜひ、東工大にきて、どんどん失敗して、大きく成長していってください」。

質問タイムでは、東工大の教育システムよりも、氷や水の性質に関する疑問が集中的に寄せられました。時間内には収まらず、岡田先生は控室に戻ってからも一人ひとりの質問に丁寧にお答えくださいました。