河合塾グループ 河合塾
学年と地域を選択
設定

学年と地域を選択すると、必要な情報がすぐに見つかる

塾生ですか?

はい
いいえ

河合塾>体験授業・イベント>知の追求講座 第5弾 東大教授による講演

東大教授による講演
「考える力の鍛え方」
2015年度 東大 知の追求講座 第5弾

戻る

日時

2015年8月27日(木)15:00~17:00

会場

河合塾 本郷校<東大専門特化校舎>

対象者・参加者 河合塾 大学受験科 東大コース生(高卒生)

「東大 知の追求講座」とは

東大入試で求められる本質的な学力を育み、知的領域を拡げる場として、“知の追求”と銘打ち開講された特別講座です。東大での学びや、その先までをも見据え、東大が求める人材の養成をめざします。

<講演者>

上田 正仁 (うえだ まさひと) 教授

上田 正仁 (うえだ まさひと) 教授
東京大学 大学院理学系研究科

専門は冷却原子を用いた気体のボース=アインシュタイン凝縮・フェルミ超流動の理論的研究、および量子情報・測定・情報熱力学。1998年、東京大学大学院理学系研究科修士課程卒。博士(理学)。NTT基礎研究所、広島大学、東京工業大学を経て2008年より現職。2014年より理化学研究所チームリーダーを兼務。

東大教授による講演 「考える力の鍛え方」の概要

東大教授による講演 「考える力の鍛え方」の概要

今回の「東大 知の追求講座」は、世界でもトップクラスの理論物理学者である上田正仁・東京大学大学院教授をお迎えし、東京大学の教養課程で人気を博した『基礎方程式とその意味を考える』の初回授業を受験生向けに再現していただきました。
その内容は、大学入学後に起こる「考える力」へと“優秀さの評価基準”が激変することで、多くの学生が学びや才能について不安や戸惑いを感じている実態を挙げ、その原因の正しい理解と克服法を解説するものでした。そのことを認識し心の準備をすることで、受験勉強を「考える力」につなげることができ、やる気をなくすことなく大学生活を過ごせるというのです。
さらに、「考える力」や「創造力」が生まれつきの才能ではなく、筋肉のように意識的な努力で鍛えられることを解き明かし、大学から大学院さらに社会に至るまで、夢や目標に向かって自分の可能性を伸ばすメソッドも伝授していただきました。
まさに、上田教授のいう「人生の基礎方程式」を十分に知る授業となりました。

優秀さの3段階:「マニュアル力」「考える力」「創造力」について

優秀な学生が全国から集まる東大でも、入学直後や大学院に進んでから、あるいは社会に出るときに、自分の優秀さや才能に自信が持てず不安や戸惑いを感じる学生が多いそうです。この実態を上田教授は、「実は優秀さが変わるというのは人が変わるのではなくて、“優秀さの評価基準”が人生の各段階でガラッと変わるからだ」と、長年にわたる学生の対話の中で気づいたそうです。その “優秀さの評価基準”を、“優秀さの3段階”と上田教授は呼んでいます。「マニュアル力」「考える力」「創造力」の3段階です。
第1段階の「マニュアル力」は“大学入学までの優秀さ”で、一通り答えが決まった問題を時間内に正確に解く、あるいは考え方の基本パターン・論理である「型」を修得し、類型化された問題を正しい手順で解く学力。第2段階の「考える力」は“大学(学部、修士)で要求される優秀さ”で、与えられた課題に対して粘り強く最後まで考え抜き、本質を見抜く力。第3段階の「創造力」は“大学院(博士)や社会で問われる優秀さ”で、自ら課題を見つけ、それに対して独自の解決法を編み出す力です。これら3つの力は「マニュアル力」を基礎として「考える力」があり、それによって「創造力」が発揮されるという、密接に関係したピラミッド構造になっているそうです。
このことから、「マニュアル力」を養う受験勉強が、大学や社会で役に立たないというのは誤りで、むしろ「考える力」の基礎を広げることで非常に役に立つということを、上田教授は明快に語ってくださいました。

「考える力」の鍛え方:長距離走型の筋肉のようにつくる

「考える力」の鍛え方:長距離走型の筋肉のようにつくる

さて、“優秀さの評価基準”を理解できても、「考える力」は生まれつきの才能だから、どうにもならないという考えも湧いてきます。これに対して上田教授は、「考える力」は才能ではなく、「マニュアル力」のように訓練で鍛えられると、希望を与えてくれました。そもそも、「考える力」は脳の筋肉だとも言え、筋肉のように努力で鍛えることができるというのです。
「考える力」を鍛えることは、陸上競技で言えば長距離走型の筋肉をつくることと似ていて、これを大学入試に当てはめてわかりやすく説明してくださいました。数学の問題でいうと1問を30分で解答するとして、受験勉強では短距離走型の思考に脳を最適化するように鍛えます。これに対し、「考える力」を鍛えるには、30分の問題でも1時間かけてもいいので、じっくり考えて最後まで解き切るようにします。もし、わからないからと言って30分経ってすぐに答えを見てしまうと、ただ解き方を暗記するだけで、「考える力」は鍛えられないそうです。
最初に「考える力」を身につけるのは、体を鍛えるときと同じで抵抗はあるそうですが、走って汗をかくことと同じでどんどん楽しくなるとの説明により、「なるほど、それならやれるかも」と思った方も多かったようです。
また、「創造力」につながっていく「考える力」の鍛え方も紹介していただきました。そのための第一歩は、「わからないことを、『ここがわからない』に変える努力をする」ことだと言います。
「わからないと思ったことをそのままにせず、何がわからないのか、立ち止まり考えます。単に知らないだけだとわかれば調べ、それでもわからない問題だということがわかれば、その問題は何か創造的な仕事をする第一歩になるのかもしれません」と、上田教授は「創造力」へのつながりを示します。
さらに、問題の核心がどこにあるかを浮かび上がらせる「地図メソッド」をはじめ、「情報を知恵に変える方法」、「古典を学ぶことの大切さ」などをわかりやすく解説し、私たちの「創造力」への漠然とした思いを、可能性のある目標に変えてくれるものでした。

「創造力」について:独創的なことをなすために必要なこと

講義はいよいよ優秀さの最終段階の「創造力」です。
上田教授は学生たちに、「『創造力』を伸ばすのに最も重要なのはテーマの選択であり、自分にとってギリギリまで頑張ればできるというテーマを設定しなさい」とアドバイスをするそうです。つまり、「自分の可能性ギリギリまで頑張る」ことを繰り返すことで、「自分の力や可能性を最大限に伸ばす」というのです。そして、「自ら見つけた課題に答えが存在するかどうかもわからないときに、逃げずに独自の答えを見出したいという意思、困難な問題に挑戦する勇気が『創造力の源泉』になる」と示してくださいました。
その他にも、「キュリオシティ・ドリブン」という好奇心主導型の研究手法による回り道の効用、人生において真のブレークスルーを生み出す「あきらめない人間力」について、ノーベル賞受賞者たちのエピソードを交えながら、皆さんの興味を魅きつけていました。

最後に上田教授は、「才能は結果です。そして『才能という名の方程式』には解がありません。では方程式ではないのかというと、実は才能というのを可能性に置き換えた「可能性という名の方程式」には解が存在します。自分には可能性がどれだけあるのか。実は自分がここまでだとあきらめたところで可能性が定まるのです。ここまでだと思ったところが、皆さんの『才能という名の方程式』の解です。だから、あきらめない限り可能性は広がります。とはいえ、可能性が広がれば楽しいかというと、それは必ず壁に突き当たります。でも、苦しみはそれを乗り越えたいと思う人間にしか訪れないのです。苦しいと思ったら、実は自分はそれを乗り越えようと思っているんだということを意識してください。ほとんど例外なく、ピンチまで自分を追い込んだときに道が拓けます。そのときのために、『考える力』を鍛えてほしい」と締めくくられました。
その後の質問コーナーでは、「考える力」と「創造力」の気づきを与えられた河合塾生たちから、「考える力」を鍛えるための知的好奇心の持ち方、数学の勉強の仕方、物理学を学ぶための心得、探究心と効率的な受験勉強の両立法、果ては量子力学の未知の問題に至るまで質問や相談が相次ぎ、大学入学後の不安が早くもこの場で払拭されていくような有意義な講義となりました。

*今回の講義内容をさらに詳しく知りたい人は、上田正仁教授の著書『東大物理学者が教える「考える力」の鍛え方』『東大物理学者が教える「伝える力」の鍛え方』(2冊ともブックマン社刊)をお読みください。