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世界史探究 地理歴史 | 高等学校学習指導要領分析

2018(平成30)年3月に告示された高等学校学習指導要領の分析報告

*2018年7月に公開された「高等学校学習指導要領解説」の分析を踏まえ、分析結果を修正・追記しました。(2018年10月)

1.今回の改訂の特徴

【1】全体

・現行学習指導要領では4単位の「世界史B」が設置されていたが、新学習指導要領では2単位の「歴史総合」の学習を前提として、3単位の「世界史探究」が設置されることになった。
・新学習指導要領(解説)は、必履修科目である「歴史総合」の後に履修できる選択科目であると位置づける。「日本史探究」、「世界史探究」のいずれか、あるいは両方の履修をもって「歴史総合」の履修に代えることはできないことが強調されている。
・「世界史探究」は「地球の誕生や人類の誕生を視野に入れつつ、古代文明の形成から現代に至る世界の歴史の展開を扱い、諸地域の歴史的特質の形成、諸地域の交流・再編、諸地域の結合・変容という大きな枠組みを基に、世界の歴史を大きく捉える」と位置づける。

【2】育成する資質・能力について

●「知識及び技能」

・世界の歴史の大きな枠組みと展開に関わる諸事象といった知識を、諸資料から世界の歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能が求められている。
・技能について、新学習指導要領(解説)の「2.内容とその取扱い」ではB(1)・C(1)・D(1)の冒頭のアで、「次のような技能(Dのみ「知識及び技能」)を身につけること」と示され、続いて「資料から情報を読み取ったりまとめたりする技能を身に付けること」という共通の内容が示されているように、資料を取り扱う技能が重視されている。
・身につける知識について、新学習指導要領では、B(2)・(3)、C(2)・(3)、D(2)・(3)、E(1)~(4)のアで「次のような知識を身に付けること」とあり、続いて各範囲で扱う事柄を挙げるさいに「~の歴史的特質を理解すること」と示していることから、歴史的特質を理解することまでを「知識」として位置づけている。A(1)・(2)でもアで「次のような知識を身に付けること」とあり、その後で「~を理解すること」と記されている。

●「思考力、判断力、表現力等」

・「思考力、判断力、表現力」とは、世界の歴史の大きな枠組みと展開に関わる事象の意味や意義、特色などを、時期や年代、推移、比較、相互の関連や現代世界とのつながりなどに着目して、概念などを活用して多面的・多角的に考察したり、歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や、考察、構想したことを効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力とされる。
・とりわけ、「表現力」については、新学習指導要領(解説)で「歴史に関わる事象の意味や意義について、自分の考えを論理的に説明する力、資料等を適切に用いて、歴史に関わる事象について考察、構想したことを効果的に説明したり論述したりする力、他者の意見を踏まえたり取り入れたりして、考察、構想したことを再構成しながら議論する力」と位置づけられ、その能力を育むためには「学習内容や活動に応じた振り返りの場面を設定し、生徒の表現を促すようにすることなどが重要である。」とされた。
・「思考力・判断力・表現力等」について、新学習指導要領のB~Eイでは「次のような思考力、判断力、表現力等を身に付けること」と示し、「○○○に関わる諸事象の歴史的背景や原因、結果や影響、事象相互の関連、諸地域相互のつながりなどに着目し、諸資料を比較したり関連付けたりして読み解き、△△△などを多面的・多角的に考察し、表現すること」という形式が続くことが多い。場合によっては、「着目し」のあとに「主題を設定し」という文言がはさまれることがある。また、ここでも資料への言及があり、諸資料の比較・関連付けまでを求めている。また、それぞれの「問い」は「表現すること」と規定されている。
・最後の「E(4)地球世界の課題の探究」のみ、「~多面的・多角的に考察、構想し、表現すること」と、考察・表現だけでなく、構想させることを求めている。
・「思考力、判断力」を養うにあたって、後述するように「社会的事象の歴史的な見方・考え方」を働かせることが求められている。
・「表現力」とは、新学習指導要領(解説)によれば「歴史に関わる事象の意味や意義について、自分の考えを論理的に説明する力、資料等を適切に用いて、歴史に関わる事象について考察、構想したことを効果的に説明したり論述したりする力、他者の意見を踏まえたり取り入れたりして、考察、構想したことを再構成しながら議論する力」とされる。

●「学びに向かう力、人間性等」

・「学びに向かう力、人間性」とは、よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に探究しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚、我が国の歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深めることとされる。

●「社会的事象の歴史的な見方・考え方」

・世界史探究における社会的事象の歴史的な見方・考え方である。
・社会的事象の歴史的な見方・考え方とは、社会的事象と時期、推移などに着目して捉え、類似や差異などを明確にし、事象同士を因果関係などで関連付けて働かせる際の視点や方法(考え方)とされる。具体的には以下のような5つの視点が挙げられる。
①時期、年代など時系列に関わる視点
②展開、変化、継続など諸事象の推移に関わる視点
③類似、差異など諸事象の比較に関わる視点
④背景、原因、結果、影響、関係性、相互依存性など事象相互のつながりに関わる視点
⑤現代世界とのつながり
・社会的事象の歴史的な見方・考え方に立ち主体的な学習を行う際には、歴史に見られる諸課題について、複数の立場や意見を踏まえて構想したりすることが求められる。そして、生徒が獲得する知識の概念化を促し、課題を主体的に解決しようとする態度を育成することが目指される。

●情報活用能力

・新学習指導要領(解説)における資料の取扱いについての言及から、求められている情報活用能力をうかがえる。新学習指導要領(解説)では、<資料の取扱い>として3つのポイントを挙げている。
・【資料に「問いかける」学習】
①「いつ書いたものか、どんな人物が書いたものか、どこに発表したものか」
②「作成者が直接経験した記録なのか、見聞したものなのか、作成者の解釈か、作成者個人の感想か」
③「この資料が作成された背景とは、また、どのような意図があったと考えるか」
などを教師が問い、生徒に資料の持つ意味や重要性を考えさせようとしているほか、複数の資料を比較検討して異同を確認させたり、絵画と文書のように異なる種類の資料を活用したりすることを促している。
・【様々な資料の活用】
①新聞・雑誌等を含む文献資料
②建造物や日常の生活用品を含めた遺跡や遺物、絵画や地図、写真・映画等の映像
③伝承や習俗、地名、言語など
それぞれの資料としての有効性や限界等の基本的な特性が存在することを理解できるようにすることにも言及がある。
・【デジタル化された資料の活用】
博物館、図書館などで文化資源がデジタル化して保存されていることや、それらのデジタル化された資料に、インターネットを通じてアクセスできることについて言及している。

【3】科目構成と学習内容

◇世界史探究の構成

◇「世界史探究」学習指導要領の特徴

●中学校までの学習や「歴史総合」との関連

・詳細で専門的にならず、中学校社会科や「歴史総合」の学習を踏まえ、日本の歴史との関連にも配慮しつつ、生徒が抱いた疑問や追究してみたい事柄について表現した問いを基に、思考力、判断力、表現力等を育み、主体的に探究する力を育成する科目とされる。
・「内容の取扱い」(1)アには、「中学校までの学習や「歴史総合」の学習との連続性に留意して諸事象を取り上げる」とあるほか、同カでは、「近現代史の指導に当たっては、「歴史総合」の学習の成果を踏まえ、より発展的に学習できるよう留意すること」とある。中学校までの歴史学習を土台として世界史を学ぶという方針は、現行の学習指導要領を継承したものだが、「世界史B」を学習するにあたって「世界史A」の学習を必ずしも前提としていなかったのに対し、新学習指導要領では、必履修科目の「歴史総合」を学習したことを前提として「世界史探究」を位置づけている。

●時間軸・空間軸・資料

・「世界史B」の「時間軸からみる諸地域世界」「空間軸からみる諸地域世界」「資料からよみとく歴史の世界」といった見出しがなくなったものの、時間軸・空間軸の視点や資料の活用は引き続き重視されている。これらの視点が全体を通じて重要であるため、特定の箇所に見出しとして示さなくなったと考えられる。
・B(1)の冒頭では「生業、身分・階級、王権、宗教、文化・思想などに関する資料を活用」、C(1) の冒頭では「交易の拡大、都市の発達、国家体制の変化、宗教や科学・技術及び文化・思想の伝播などに関する資料を活用」、D(1)の冒頭では「人々の国際的な移動、自由貿易の広がり、マスメディアの発達、国際規範の変容、科学・技術の発達、文化・思想の展開などに関する資料を活用」とある。社会・経済面では「B生業、身分・階級→C交易の拡大、都市の発達→D人々の国際的な移動、自由貿易の広がり、マスメディアの発達」、政治面では「B王権→C国家体制の変化→D国際規範の変容」、宗教・文化面では「B宗教、文化・思想→C宗教や科学・技術及び文化・思想の伝播→D科学・技術の発達、文化・思想の展開」と、時間軸に従って資料を活用し学習させる構成になっているともいえるだろう。

●「問い」から始まる構成

・「世界史B」が「世界史の扉」「諸地域世界の形成」「諸地域世界の交流と再編」「諸地域世界の結合と変容」「地球世界の到来」の5項目で構成されているのに対して、新学習指導要領も同様にA~Eまでの5つで全体は構成されている。しかし、「世界史B」と異なり、B(1)では「諸地域の歴史的特質への問い」、C(1)では「諸地域の交流・再編への問い」、D(1)では「諸地域の結合・変容への問い」とあるように、冒頭に「問い」が設定されている。
・みずから「問い」を設定する姿勢を求めたことは、新学習指導要領「目標」の(3)にある「よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に探究しようとする態度を養う」という内容を反映したものであろう。ただし、新学習指導要領(解説)では、「問い」を導くような教師側の働きかけを求めている側面もみられる。
・「A世界史へのまなざし」と「E地球世界の課題」では「問い」という表現を用いていないが、Aは「世界史探究」全体のイントロダクションにあたるほか、これまでの中学校の歴史学習や歴史総合の学習を踏まえての「問い」を求めていると考えられる。Eはこれまでの学習を踏まえて「課題」を探究するという「問い」だとも考えられ、その「問い」が大学でのさらなる学びと結びつくともいえるだろう。
・新たに始まる「歴史総合」も、「B(1)近代化への問い」「C(1)国際秩序の変化や大衆化への問い」「D(1)グローバル化への問い」という構成である。「日本史探究」では「問い」という見出しにはなっていないが、内容的には「(1)問い→(2)仮説→(3)解釈や画期の表現」という順序の3段階構成となっている。

●授業の進め方について順序などを詳細に規定

・「世界史B」についての現行学習指導要領そのものの分量と比べて、「世界史探究」の分量は大幅に増加した。この要因として、指導法について以前よりも詳細な指示が加えられたことを指摘できる。新学習指導要領(解説)そのものの分量も大幅に増加している。
・「内容の取扱い」(2)アで、「内容のA、B、C、D及びEについては、この順序で取り扱うものとし、A、B、C及びD並びにEの(1)から(3)までの学習をすることにより、Eの(4)の学習が充実するように年間指導計画を作成すること。また、「歴史総合」で学習した歴史の学び方を活用すること」とある。新学習指導要領(解説)においても、授業展開の例を示すなど指導法について踏み込んだ言及がみられる。

2.高等学校への影響

●主体的・対話的で深い学び

・「世界史探究」の高等学校への影響についての具体的検討は、もう少し諸状況が進展することを待ちたい。新学習指導要領を踏まえて各出版社がどのような高校教科書を作成するかといった判断材料がそろったうえで、さらなる検討を行いたい。
・ただし、新学習指導要領の「目標」(2)に「歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や、考察、構想したことを効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を養う」とあるほか、「2 内容」で「思考力・判断力・表現力」を養成することを繰り返し示していることから、グループ内の議論・発表を行ったり、レポート提出を求めたりといった手法が、いっそう求められると考えられる。「世界史B」が4単位だったのに対して「世界史探究」が3単位になったことから、とりわけ近現代史においては「歴史総合」での学習を前提として、場合によっては部分的に反転学習を導入するといったことも想定しうるのかもしれない。
・教師側の指導のもとで、それぞれのテーマごとに生徒が「問い」を設定し、その答え(「課題解決」)を探究するという学習のサイクルになっていくとも考えられる。ただし、多くの生徒を指導するなかで、それぞれの生徒が主体的に「問い」を設定した場合、個々にどうやって対応していくのかといった点が今後の課題となるのかもしれない。
・「作業的で具体的な体験を伴う学習」として地図や年表を読んだり作成したり、現代社会の諸課題を捉えることが挙げられ、以下のような活動が求められている。こうしたことも授業運営に影響を及ぼすだろう。
①関連する各種の統計、年鑑、白書、画像、新聞、読み物、その他の資料の出典などを確認
②信頼性を踏まえつつ適切に活用
③観察や調査などの過程と結果を整理し報告書にまとめ、発表

●ICTの活用

・新学習指導要領(解説)において、「指導に際しては、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の積極的な活用が期待される。」とあり、インターネットなどはいっそう活用されることになるだろう。ただし、「生徒にコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用させる際には、情報モラルの指導にも留意することが大切である。」とも指摘しており、その導入にあたっては、指導側の配慮も求めている。

●他科目との関わり・教科横断学習

・地理学習との関連を図る必要があることから、新学習指導要領(解説)において「必履修科目「地理総合」や中学校社会科地理的分野との関連を十分に踏まえるよう留意する。」とある。
・「公民科の必履修科目「公共」が設置されたことを踏まえ、公民科との関係に留意する。」との指摘がある。
・教科横断学習として「今回の改訂におけるカリキュラム・マネジメントの視点から、例えば、国語科の古典関係の科目、数学の数学史、理科の科学史、専門教育に関する科目の中の技術史など歴史的展開に関する部分、芸術科の伝統的な芸術と社会や文化とのかかわりの部分などとの関連部分がどのようなものか、またそれらを「世界史探究」の指導計画にどう関連付け、活用するかについて、幅広い配慮や工夫をすることも大切である。」とある。

●カリキュラム編成

・「世界史探究」の高等学校への影響についての具体的検討は、もう少し諸状況が進展することを待ちたい。新学習指導要領を踏まえて各出版社がどのような高校教科書を作成するかといった判断材料がそろったうえで、さらなる検討を行いたい。
・ただし、必履修科目である「歴史総合」の学習を必須として「世界史探究」が位置づけられていることや、「地理総合」も必履修科目として設置されたことから、「世界史探究」を高校1年生の段階で履修するということは考えにくいのではないかと考えられる。

3.大学入試への影響

●入試内容・指導

・大学入試問題として「世界史探究」という科目がどういった形で出題されるかは、まだ判断を示せるだけの情報が出揃っていない。新学習指導要領で示された「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」を習得することが、今後の大学入試の評価と結びつくのか、それとも従来型の受験対策の方が効率的なのか、それを判断するためには、もう少し試行調査(プレテスト)や各大学の動向が明らかになることを待ちたい。
・ただし、現在の「世界史B」における大学入試問題において、すでに現代社会の諸問題を考えさせるような出題や、討論を念頭においたと思われる会話文を利用した出題がみられており、いっそうこの傾向が強まるのではないだろうかと推測される。このことは、2017年秋に実施された大学入学共通テスト導入に向けた試行調査(プレテスト)からも、その傾向をうかがうことができる。

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