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政治・経済 公民 | 高等学校学習指導要領分析

2018(平成30)年3月に告示された高等学校学習指導要領の分析報告

*2018年7月に公開された「高等学校学習指導要領解説」の分析を踏まえ、分析結果を修正・追記しました。(2018年10月)
*2021年3⽉に公表された「平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した令和7年度大学入学共通テストからの出題教科・科目について」を踏まえ、分析結果を修正・追記しました。(2021年5⽉)

1.今回の改訂の特徴

【1】育成する資質・能力について

●現行学習指導要領との違い――「資質・能力の三つの柱」に対応して「目標」が設定されている

新学習指導要領で示された「目標」では、その冒頭において、「社会の在り方生き方についての見方・考え方を働かせ」ることが示されている。これは、「社会的事象等を、倫理、政治、法、経済などに関わる多様な視点(概念や理論など)に着目して捉え、よりよい社会の構築に向けて、課題解決のための選択・判断に資する概念や理論などと関連付けること」ということであるとされている。そして、『学習指導要領解説』(以下『解説』)では、「社会の在り方についての見方・考え方を概念や理論などに着目して構成したことから……これまで以上に概念的な枠組みとしての性格が明確になった」と説明しており、これを受けて、「社会の在り方を捉える概念的枠組みを『視点や方法(考え方)』として用いて、社会的事象等を捉え、考察、構想に向かうことが大切」だとしている。
また、新学習指導要領では、「育成を目指す資質・能力」が「三つの柱」として整理されているが、「政治・経済」において育成すべきとされている「公民としての資質・能力」も、これに対応する形で、以下の3つを示している。
(1)は、「社会の在り方に関わる現実社会の諸課題の解決に向けて探究するための手掛かりとなる概念や理論」について理解し、「諸資料から、社会の在り方に関わる情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能」の習得を目指すことがうたわれている。これは、「知識及び技能」に関わるねらいを示すものである。
(2)では、「国家及び社会の形成者として必要な選択・判断の基準となる考え方や政治・経済に関する概念や理論」を活用し、現実社会に見られる複雑な課題を把握する力や説明する力、身に付けた判断基準を根拠に構想する力、構想したことの妥当性や効果、実現可能性などを指標にして議論し公正に判断して、合意形成や社会参画に向かう力を養成する旨がうたわれている。これは、「思考力、判断力、表現力等」に関わるねらいを示すものである。
(3)では、「よりよい社会の実現のために現実社会の諸課題を主体的に解決しようとする態度」を養うとともに、「多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される、国民主権を担う公民として、自国を愛し、その平和と繁栄を図ることや、我が国及び国際社会において国家及び社会の形成に、より積極的な役割を果たそうとする自覚」を深めることが目標として示されている。これは、「学びに向かう力、人間性等」に関わるねらいを示すものである。

【2】科目構成と学習内容

●標準単位数――「政治・経済」は2単位の科目として位置づけられる

2単位であり、従来と変化はない。

●科目の履修――「政治・経済」は選択履修科目として扱われる

現行学習指導要領においては「公民のうち『現代社会』または『倫理』『政治・経済』のいずれかが必修」となっていたが、新学習指導要領では「公民のうち『公共』は必修」となり、「政治・経済」は選択履修科目として扱われる。公民科目のうち、「公共」は基礎、「政治・経済」と「倫理」が探究としてそれぞれ位置づけられる。そのため、『学習指導要領解説』(以下『解説』)においても、「従来の『政治・経済』を受け継ぎつつ、必履修科目『公共』で育まれた資質・能力を活用して……発展的に学習し、社会形成に向かう科目として、新科目『政治・経済』を設定した」と説明されている。

●カリキュラム編成について:

基礎科目として必修である「公共」は第1学年もしくは第2学年で履修することが指定されている。「公共」を学んだ後で「政治・経済」を学習することになるので、必然的に第2学年ないし第3学年に設置されることになる。

●内容の変化――学習順序に変化があるものの、扱う内容は大きくは変わらない。また、「資料の活用」「説明、論述」などが指導内容に新しく明記された

現行学習指導要領の「内容」が「(1)現代の政治」「(2)現代の経済」「(3)現代社会の諸課題」という三つの大項目によって構成されていたのに対して、新学習指導要領の「内容」は、「A 現代日本における政治・経済の諸課題」「B グローバル化する国際社会の諸課題」の二つの大項目から構成されている。すなわち、現行学習指導要領の大項目を見直し、「国内」「国際」というまとまりに再編したということである。これは、『解説』によれば、「複雑化する現実社会の諸問題を探究するためには、政治、経済それぞれでは解決策を生み出すことが難しい場合も少なくない」ことから、「政治、経済などの側面を総合的・一体的に捉え、広く深く探究する」ためであるとされる。
AとBはいずれも二つの中項目から構成されており、これらを図式的に整理すると次のようになる。

大項目・中項目(1)・中項目(2)

ここから分かるように、大項目Aは国内、大項目Bは国際という括りであり、その各々において、中項目(1)で学習した見方・考え方や概念・理論をもとに、中項目(2)で探究を行うという形で、AとBは共通の構造となっている。実際、『解説』において各々の大項目を説明している部分は、A・Bともほぼ同一の文言となっており、「(現代)日本」と「国際」という扱うテーマの箇所のみが違いとなっている。以下がその部分の引用であり、違う箇所についてのみ、Aを〈 〉で、Bを〔 〕で記した。
“社会の在り方についての見方・考え方を働かせ、現実社会の諸事象を通して現代〈日本の〉〔国際〕政治・経済に関する概念や理論などを習得させるとともに、習得した概念や理論などを活用しながら、他者と協働して持続可能な社会の形成が求められる〈現代日本〉〔国際〕社会の諸課題の解決に向けて政治と経済とを関連させて多面的・多角的に考察、構想し、よりよい社会の在り方についての自分の考えを説明、論述することができるようにすることを主なねらいとしている。”
なお、大項目が3つから2つに再編されたことによって、ある学習項目をどこの項目で扱うかという点が再編されたことから、教科書の内容ではなくその記述の順序が、この再編に準拠して現行の版から変化するものと思われる。

大項目AとBとも、中項目(1)については各々、「ア 知識及び技能を身に付けること」と「イ 思考力、判断力、表現力等を身に付けること」の二つが指導内容として明記されている。この二つの指導内容は新学習指導要領の「三つの柱」を踏まえたもので、アは「知識及び技能」、イは「思考力、判断力、表現力等」に対応するものである。
また、指導内容に含まれる「知識及び技能」として、A・Bの中項目(1)のいずれにおいても、「諸資料から……必要な情報を適切かつ効果的に収集し、読み取る技能を身に付けること」を挙げている。このような資料の活用に関する指導内容は現行学習指導要領には見られないことから、情報を収集する技能、情報を適切かつ効果的に読み取る技能を学習の中で養う重要性について指導することを新たに重視したといえよう。さらに、A・Bの中項目(2)のいずれにおいても、「多面的・多角的に考察、構想し、よりよい社会の在り方についての自分の考えを説明、論述すること」と規定している。この点も「思考力、判断力、表現力等」に対応する記述と考えられ、現行学習指導要領とは大きく異なる。

●内容の取扱いの変化――配慮事項がより詳細になる一方、扱われる知識の範囲に大きな変化はない

新学習指導要領の「内容」および「内容の取扱い」に登場する“知識項目に関わるキーワード”を見ると、現行学習指導要領において扱われた知識項目と合致する部分が多いことに気づく。時代や社会の変化に合わせて扱う知識項目の内容が変わることはあるだろうが、基本的に扱う知識項目が劇的に変化するとは考えにくい。
ただし、細かく見た場合、大項目Aにある中項目(2)の「諸課題の探究」に列挙されているテーマでは、現行学習指導要領で「雇用と労働を巡る問題」となっている学習事項が、新学習指導要領では「多様な働き方・生き方を可能にする社会」に変化しているほか、新たに加わったテーマとして「歳入・歳出両面での財政健全化」「防災と安全・安心な社会の実現」がある。いずれも、近時注目されている事柄であり、この科目に特有ともいえる時事的な変化を反映したものと思われる。

また、これまでにも扱われていたものではあるが、『解説』において近時の状況変化との関係が強調されるようになった項目もある。
たとえば、「日本国憲法と現代政治の在り方との関連について多面的・多角的に考察し、表現すること」については、憲法改正の国民投票が18歳からできるようになった点を踏まえて「憲法改正の国民投票の意味や意義について多面的・多角的に考察し、表現できるようにする」ことが記されている。あるいは、消費者に関する内容については「成年年齢が18歳に引き下げられ、18歳から一人で有効な契約をすることができるようになる一方、保護者の同意を得ずに締結した契約を取り消すことができる年齢が18歳未満までとなることから……指導することが重要」だと指摘している。

以下、新学習指導要領の「内容の取扱い」において見られた特徴や変更点の一部を列挙しておく。
・配慮事項の数が大幅に増加し、それぞれの記述量も大幅に増えた。
・「関係する専門家や関係諸機関などとの連携・協働を積極的に図り、社会との関わりを意識した課題を追究したり解決に向けて構想したりする活動の充実を図るようにすること」という配慮事項が明記された。これについては、『解説』によれば、本稿冒頭に示した「三つの柱」に関連して、「生徒が社会との関わりを意識し、社会参画意識を高める、といった『学びに向かう力、人間力等』を醸成する上で効果的である」としており、同時に他の二本の柱の育成にも効果的であるとされている。
・「『公共』で身に付けた選択・判断の手掛かりとなる考え方」を基に、生徒が多面的・多角的に探究できる学習指導の展開を工夫することを規定している。「公共」の履修が前提になったことからの記述であろう。
・「私法に関する基本的な考え方についても理解を深めることができるよう指導すること」という記述は、現行学習指導要領には見られなかった。これは『解説』によれば、法には公法や私法があること、私法の基本原理に私的自治の原則があること、などについての理解を深めることとされている。
・経済に関する「分業と交換、希少性などに関する小・中学校社会科及び『公共』の学習との関連性に留意して指導すること」という記述は、現行学習指導要領には見られなかった。
・現行学習指導要領では「世論の形成などについて具体的事例を取り上げて扱い、主権者としての政治に対する関心を高めることに留意すること」と記述されていたが、新学習指導要領では「世論の形成などについて具体的事例を取り上げて扱い、主権者としての政治に対する関心を高め、主体的に社会に参画する意欲をもたせるよう指導すること」と記述されている。『解説』ではこれについて「選挙権をもつ者としての自覚を促す」という記述があり、近年の選挙権年齢引下げを意識したものと推測される。
・現行学習指導要領では「『金融の仕組みと働き』については、金融に関する環境の変化にも触れること」と記述されていたが、新学習指導要領では「『金融を通した経済活動の活性化』については、金融に関する技術変革と企業経営に関する金融の役割にも触れること」と記述されている。これについて『解説』では具体的に、「フィンテックと呼ばれるIoT、ビッグデータ、人工知能といった技術を使った革新的な金融サービスを提供する動きや、仮想通貨など多様な支払・決済手段の普及などによる国民経済、家計、企業への影響について理解できるようにする」と説明されている。この分野における近時の社会変化を反映させたものと思われる。
・「『国家主権、領土(領海、領空を含む。)などに関する国際法の意義、国際連合をはじめとする国際機構の役割』については関連させて取り扱い、我が国が、固有の領土である竹島や北方領土に関し残されている問題の平和的な手段による解決に向けて努力していることや、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は存在していないことなどを取り上げること」という記述は、現行学習指導要領には見られなかった。『解説』ではさらに詳細に、たとえば「船舶の拿捕、船員の抑留が行われたり、その中で過去には日本側に死傷者が出たりするなど不法占拠のために発生している問題についての理解を基に……我が国が平和的な手段による解決に向けて努力していることを……理解できるようにする」と記されており、さらに「北朝鮮による日本人拉致問題などについて……課題を的確に捉え、我が国がその解決に向けて国際社会の明確な理解と支持を受けて努力していることについて理解できるようにする」ことも求めている。

2.高等学校への影響

●「主体的・対話的で深い学び」の導入――発表や論述、討論などに割く時間は拡大する可能性が大きい

現行学習指導要領では「2内容」において「考察させる」や「探究させる」という表現にとどまっていたのに対し、新学習指導要領では「2内容」において明確に「表現すること」や「説明、論述すること」と記されている。こうしたことから、全体の授業時間に占める発表や論述、討論などに割く時間の割合は増加することが予想される。
新学習指導要領において「アクティブ・ラーニングの実施」といった文言が用いられているわけではない。一方、「内容」において、「思考力、判断力、表現力等を身に付けること」を指導することが記されている。これについて『解説』では、「表現力とは……発表したり文章にまとめたりする力だけを意味しているのではない。……討論など様々な方法を用いて議論することも含んでいる……。第三者に学習で得た結論とその結論を導き出した過程をより分かりやすく効果的に示すとともに、それらを根拠に……他者と議論する力を意味している」とある。このことから、ペア・ワークによる対話・討論やチーム(グループ)を形成した上での調査・発表と、それを基にした討論など、いわゆる「主体的・対話的で深い学び」の要素を積極的に採り入れていくことが重視されよう。

●コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段の活用――積極的に活用することが求められる

『解説』は、「第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」において、「学校教育の情報化の進展に対応する観点から、情報の収集、処理や発表などに当たっては、学校図書館や地域の公共施設などを活用するとともに、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用することが大切である」(「2 内容の取扱いに当たっての配慮事項」)と説明するとともに、「様々な情報を多様な方法で生徒に提示することにより、生徒自身、課題の追究や解決の見通しをもって、主体的に学習に取り組むことが可能となる」として、情報手段の活用を促している。

●教科横断学習について:

指導上の配慮として「公民科に属する他の科目、……地理歴史科、家庭科及び情報科などとの関連を図る」ことが記されている。だが、こうした配慮については現行学習指導要領でもすでに明記されている事柄であり、大きな変化をもたらすものではないと思われる。

3.大学入試への影響

●大学入学共通テストに与える影響について――大学入学共通テストの「政治・経済」、および「公共」のサンプル問題の内容に注意したい

2025(令和7)年度の大学入学共通テストから、公民が関係する出題科目は、『公共,倫理』『公共,政治・経済』『地理総合,歴史総合,公共』の3種類となる。このことにより、『政治・経済』という出題科目は廃止され、「政治・経済」の領域については『公共,政治・経済』という形での出題となる。『公共,政治・経済』のうち、「公共」の領域からの出題については、大学入試センターが2021年3月に公表した『公共』のサンプル問題に近い形式が取り入れられることになるだろう。一方、「政治・経済」の領域については、2021年から始まった共通テスト『政治・経済』における出題傾向の流れを汲み、「主体的・対話的で深い学び」を実践する場面を想定した設問が出題されることが予想される。たとえば、かつてセンター試験のようなテーマ形の本文が掲げられた形ではなく、「オープンキャンパスの模擬授業で配付された資料」「生徒のノートやメモ、発表原稿」など学習場面を想定した出題形式を通じて、教科書的な知識事項を問うたり、複数の図表や資料文を多角的に考察させたりするケースが定番化することになるだろう。

●個別入試に与える影響について――大きく変化するとは考えにくい

過去に学習指導要領が改訂された際も、それほど個別入試の内容に大きな変化は起きなかった。新学習指導要領が個別入試に与える影響は、これまでの学習指導要領の改訂とそれに対応した個別入試の変化の少なさをふり返ってみると、それほど見られないと考えられる。ただし、新学習指導要領で新設される科目「公共」は「政治・経済」との親和性が高いことから、地理歴史科の入試科目が(たとえば従来の「日本史」が「歴史総合+日本史探求」に、「地理」が「地理総合+地理探求」に再編されるように)再編された大学においては、これに併せて従来の「政治・経済」を「公共,政治・経済」という形とする可能性は考えられる。

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